2007年11月3日土曜日

仮想世界のカンブリア紀

約5億5千年前,後にカンブリア紀と呼ばれた時代,それまで数十数種しかなかった生物が突如1万種もに爆発的に増加しました。このころ,いろいろな形をした生物が多数現れました。これがカンブリア紀の生命進化の大爆発といわれるものです。
 
今年になって,あちこちで独自の仮想世界を創造する動きが強まってきました。ちょっと大げさかもしれませんが,仮想世界のカンブリア紀が到来するのかもしれません。 
 
セカンドライフ自体の正式サービスが開始されたのは2003年から(ベータ版は2002年から)ですが,飛躍的に会員数が伸び出したのは,去年から今年にかけてで,現在の登録会員数は1000万人(二重に登録したり,登録しただけでほとんど活動していない人も相当含まれます。)を超えたようです。このほか日本ではそれほど有名ではありませんが,There ,IMVUEntropia Universeなどもかなりの会員数があり,徐々に日本人の会員も増えているようです。アジアでも,中国では,HiPiHi(ハイピーハイ)という仮想世界を運営する会社が現れ,日本企業ngi groupが出資して,日本展開における権利を獲得したということでも知られています。また,最近,中国政府が国営の仮想世界を計画しているというニュースが流れ,本当に驚きました。

日本においても,splumeという仮想世界の運営が開始されおり,meet-meという現実の東京をリアルに再現した仮想世界も2007年内の開始に向けて準備中らしいです。

こうした仮想世界に,少し広げて,従来からあるWoW(World of Warcraft),リネージュ,リネージュⅡ,ファイナルファンタジー11,ラグラロクオンラインなどのMMORPGも加えると,仮想世界の数や,そこに参加する人々の数は,どんどん増大しているといえます。

おそらく,今後も新たな仮想世界の参入は続くものと思われますし,グーグルなども仮想世界への参入の噂があります。これらの仮想世界には,プラットホームを提供するにとどまり,コンテンツ提供はユーザー側に任されているもの(セカンドライフなど),独自のテーマを持ち,ゲームとして提供されるもの(一般的なMMORPGなど),その中間形態(Entropia Universeなど)があり,そのほかにも,独自の通貨を持つのか,持たないのか,現実通貨への換金を認めるのか,認めないのか,キャラクター(アバター)の容姿のリアル度,その自由度など,いくつかのバリエーションが考えられます。

最近では,こうした一般的な仮想世界のほかに,企業が社内会議などのために従来のビデオ会議などに替えて仮想世界を構築する動きがあります。これらはクローズドなものなので,ミニ仮想世界というか,むしろ「世界」というよりは,「仮想会議室」(アバターを利用した電子会議室)といった方が適切かもしれません。例えば,シスコは,3D仮想世界「Cisco Industry Solutions Partner Network」を開設して,同社の約4万社のチャネル・パートナーとソフトウェア・ベンダーとの交流の場として利用するそうです。IBMも社内の連絡や会議などに仮想世界を利用しようと考えているようです。最近では,サンマイクロシステムズが社内協働システムとして,独自の3D仮想空間「Project Wonderland」を開設し,オープンソースとして公開しています。仮想世界を社内会議などに利用することは有用だと考えられていたものの,セカンドライフなど一般的な仮想世界を利用しての社内会議では,秘密情報の扱いが困難であるため,こうした独自の仮想世界を構築して利用することが考えられたのだと思います。おそらく,こうした動きは今後も続くと思われます。

このように,たくさんの仮想世界が増えてきそうですが,これら仮想世界相互の行き来も検討されるようになってきました。最近,IBMは,LL社と共同で,異なる仮想世界間の相互運用を推進するという発表をしました。

今後も,いくつもの仮想世界が産まれ,そして消えていくものと思われます。今は,セカンドライフだけが目立っているような感じがしますが,顧客サービス,使いやすさや安定性(それらはセカンドライフに不足しているものと感じます。)などを煮詰めていけば,ほかの仮想世界サービスもまだまだ頑張れると思います。また,企業内仮想世界構築の動きも注目されます。

進化と淘汰の先に生き残って繁栄するのはどのような仮想世界になるのでしょうか?