2008年11月24日月曜日

電子マネーについての法規制とリンデンドル

1 電子マネーに対する法規制の動向

かなり前に,電子マネーについて,利用者保護のために金融庁が「電子マネー法」(仮称)の制定を目指して作業中であると報道されたことがありました。このときの報道によれば,2008年中の制定を目指すということでした。もう12月になろうとしていますが,とても法案化までは無理そうですね。まあ,重要法案の審議もままならない昨今の政治状況では,仕方ないでしょう。

これについては,現在も金融庁の金融審議会の第二部会-決済に関するワーキング・グループで議論中のようです。最近の議論の様子は,金融庁のウェブサイトで確認することができますが,法案化までは,すこし時間がかかりそうな感じがします。

2 現在行われている議論

現在,金融審議会で行われいる議論は,おそらく金融庁のサイトに論点の整理(再)という資料がありますが,これのとおりだろうと思います。

わかりやすく言うと,次のとおりです。

発行者があらかじめ利用者から資金を受け取り,前払式支払手段が発行される場合で,紙・ICチップ等の有体物にその価値が記録されるもの(EdyやSuicaなどが代表的ですね。)には,「前払式証票の規制等に関する法律」(前払式証票規制法)による規制があります。

同法によって,未使用発行残高の2分の1以上の金額について,供託又は金融機関等の保証が必要(供託等の義務)とされ,これによって利用者の保護が図られています。

しかし,電子マネーの中には,利用者が保有する物には価値が記録されておらず,サーバに記録され,通信回線を介してサーバにアクセスし,利用するもの(サーバ型前払式支払手段)については同法の適用がないと解釈されています。

そこで,このままでは,利用者の保護に欠けるので,そうしたサーバ型の電子マネーについても,同様の規制を及ぼすべきかどうかというのがここでの議論の中心です。

同審議会では,それだけでなく,①いわゆるポイント・サービスについての利用者の保護をどう考えるか,②現在,銀行のみが行うことができるとされている為替取引について,銀行以外の事業者による資金移動サービスを認めるかどうかどうか,などの問題も議論されているようです。これらの議論も大いに注目されます。

方向性としては,こうした電子マネーについても,未使用発行残高の一定割合について供託等の義務を課すなどして,利用者の保護を図るということになるものと思われます。電子マネーの大手事業者が破綻した例はまだあまりないようですが,電子マネーの利用が拡大しつつありますので,やはり立法が必要だと思います。


3 リンデンドルに対する法規制

さて,セカンドライフ内で使用されているリンデンドルも,現実の通貨でリンデンドルを購入し,これと交換することによって,LL社からサービスを受けることができるので,電子マネーであることに変わりないと思います。また,利用者相互でも流通しており,資金移動手段としても利用可能です。

しかし,さきほどの電子マネー法がどうなるにせよ,これは国内法なので,外国の事業者であるLL社を規制対象にするかどうかは微妙です。法案ができてみないと何ともいえないのですが,国内に営業所がなければ,外国の事業者には規制は及ぼさない感じがします。

そこで,これについては,LL社が本店を置く,カリフォルニア州での規制がどうなっているかが問題です。

電子マネーについての欧米の法規制の動向については,流通科学大学の片木進教授の論文がくわしいようです。

これによれば,アメリカでは,グリーンスパンFRB議長が電子マネーの規制に消極的な見解を示したことから,連邦レベルでは目立った規制の動きはないようですが(オバマ政権では変わるかもしれません。),各州政府が,消費者保護,マネーロンダリング防止等の観点から規制に向けて動いているようです。

わたしは,カリフォルニア州の法律制度のことは,ほとんど知りませんが,リンデンドルがこうした規制を受けることになるのかどうか,今後とも注目していきたいと思います。

なお,以前にも書きましたが,現状では,消費者としては自己防衛しかないと思います。世界的な金融恐慌がLL社に影響を及ぼしているという情報はありませんが,為替リスクもありますので,使う当てのないリンデンドルは現実通貨に換金しておくことをお勧めします。

2008年10月25日土曜日

生存確認

気が付いたら,前回のブログから5ヶ月以上も経過してました。とてもリアルライフが忙しすぎて,セカンドライフどころではありませんでした。それにしても,実世界も仮想世界も不景気な話が多くてウツになりますねぇ。

検索しても,セカンドライフ関連の記事があまりヒットしなくなったような気がします。あ,このブログのリンクも整理しなくちゃ。

具体的にデータを見てみましょう。

2008年10月24日の統計によれば,セカンドライフの総ユニークユーザー数は,1,558万9,645となっているようです。これは2007年末のユーザー数1,170万4,934に比べると,約33%増加してはいますが,2007年5月のみずほコーポレート銀行のレポートでは,2008年末までに2億5000万人に達するという試算もされていたこと(w)を考えると,頭打ち感の漂う数字となっています。有料のプレミアム会員数に限定すると2007年末の約9万3000人をピークとして,横ばい又はじりじりと数を減らし,2008年8月末のプレミアム会員数は約8万5000人となっています。

ユーザーの総利用時間数でみてみると,ユーザー全体で約3463万時間で,日本人ユーザーでは約210万時間となっています(以上,2008年8月の統計)。それまでの数字と比較すると微増傾向となっていますので,決してアクティブユーザーが減っているわけではないようです。おそらく,去年のような爆発的な増大はなく,増加の伸びは止まりつつありますが,安定的な状態といってよいかもしれません。

ただ,マスコミの取り上げ方は,確実に変わりました。リアル企業の参入などという記事はあまり見かけなくなった気がします。また,「セカンドライフで金儲け」みたいな記事もあまり見かけなくなりました。セカンドライフについては,3Dアバターを利用したコミュニケーションツールとしての側面のみが残ったという感じがします。まあ,虚飾がはがれ落ち,本質的な物のみが残ったという感じでしょうか。

わたしは,この世界であまり経済活動をしていない,「まったり」系のユーザーだと思いますが,リアルが忙しくてアクセス時間は減ったものの,相変わらずの「セカンドライフ」を楽しんでいます。自由度がありすぎるのが,セカンドライフの問題点だといった人もいますが,わたしにとって,自由なのがセカンドライフのいいところだと思います。リアルがとても慌ただしいので,仮想世界にいるとき位,何かに縛られずに,のんびりしたいと思います。

以前,普通のMMORPGをしていましたが,単調なレベル上げがあったり,パーティを組むのに時間がかかったり,モンスター狩りやクエストに長時間拘束されたりとか,疲れました。

ただ,そうはいっても,セカンドライフにやや飽きが来ているのも事実で,それはどこにあるか自分なりに分析すると,やはり「バトル」をやりたい自分がいるのです(オイオイw)。セカンドライフでも,銃器を使って遊んでいるグループもありますし,ロールプレイをやっているシムもあります。そういうところへ行って遊んだこともあるのですが,少人数のグループでやっているだけなので,規模が限定されているのが不満です。リンデンラボ社は,メインランドを活性化するために,土地を造成しているようですが,それよりも一大バトルシムを造ってほしいように思います。

セカンドライフをやるようになってから,仮想世界ものというジャンルの小説やコミックを読むようになったのですが,ニール・スティーヴンスンの小説「スノウ・クラッシュ」 (ハヤカワ文庫SF) (多分もう古本屋でしか売ってないと思います。)でも,篠房六郎の漫画「空談師」(アフタヌーンKC),「ナツノクモ」(IKKI COMICS)でも,アバター間のバトルがなかったら,面白い話にできなかったはずです。

え?ほかのゲームやりなさいって?はい,おとなしくそうします。

個人的に注目しているのは,Diablo3(公式サイト)ですね。時々情報をチェックしてますが,発売されるのはかなり先になりそうです。やはり敵をバキバキ倒すとかテンポのいいものが好きですね。そういえば,韓国NCsoftの「ブレード&ソウル(Blade&Soul)」(公式サイト)のムービーを見ましたが,屋根の上らしきところをビョンビョンと飛び移っているシーンを見て驚きました。ムービーだけじゃなくて,実際のプレイでもこれだけのスピード感があれば,面白いでしょうね。これも注目しています。

最後に今日の一言
「ゲームは発売される前が一番面白そうに見える。」

2008年5月18日日曜日

トレードマークの使用に関する新しいTOS(3)

前回の記事から時間がたってしまいましたが,トレードマークのことについて,引き続いて取り上げていきたいと思います。


9 TOSによる契約上の拘束力

前回まで,商標についての法律上の効力について説明しましたが,これとは別に,TOSに同意したことから,これに従うべき契約上の義務が発生しています。こうした利用契約は,附合契約(契約において、一方的当事者の作成した契約条件に対して、契約するか、契約しないかの自由しかない契約)というもので,その効力については,古くから議論されてきたものです。大雑把にいって,今日では,契約自由の原則に照らして,基本的には拘束力を認めつつ,消費者保護等の観点から,効力に制限を設けていくという観点で処理されているようです。昔のTOSにあった仲裁条項について,非良心的として無効とした連邦地裁の判決がありましたが,これも,そういう観点からの判断といえます。

このTOSが日本法の枠内で議論されることは少ないかもしれませんが,日本法が適用される場合には,消費者契約法のほか,民法の一般条項(権利濫用,信義誠実の原則など)に照らして,その拘束力の範囲が制限される可能性もあります。

そうした制約があるとしても,一応,TOSに同意したことによって,基本的な契約上の義務が生じているという前提で,以下,説明していきたいと思います。

まず,トレードマークに関するTOSの効力が及ぶ範囲ですが,セカンドライフ内での活動全般,例えば,オブジェクトの名称,バーチャル広告,グループ名,アバター名などにこれが適用されることは明らかで,TOSに違反して,トレードマークを使用すると,その違反の程度によっては,該当オブジェクトの除去,グループの消去などの処分がされる可能性があり,重大な違反については,他のTOS違反と同様にアカウントの停止や剥奪などの処分がされる可能性があります。

問題は,この拘束力がセカンドライフ外の活動にも及ぶかどうかですが,トレードマークの保護の必要性に関しては,セカンドライフの中か外かは関係がないと思われますし,TOS上もセカンドライフ内の活動に限定しておらず,ドメインネームなどについても規制の対象としていることからみて,セカンドライフ外の活動にも及んでいることは明らかだと思います。もっとも,セカンドライフ外の行動に関しては,リンデン側において,実効性のある規制が困難だとは思いますが。

10 ガイドラインの内容

トレードマークのガイドラインについては,このリンクを参照してください。


まず,Unauthorized Uses of Linden Lab's Trademarksとして,基本的にリンデン側からみて許容できないトレードマークの使用例が載っています。

前々回,商標権の侵害について,米国法上は,商品又はサービスの出所,提携関係又は後援関係について混同を生じさせる蓋然性があるかどうかで侵害になるかどうかを決めているということを書きましたが,上記のガイドラインはそうした違反行為をすべてカバーするとともに,商標の識別力を弱まらせる行為(希釈化)をも防止しようとしていることが分かります。

これを読んでいただければ分かると思いますが,禁止例の日本語表記として,「第二の人生 (no Japanese equivalent)」とあるのが笑えます。それでは,「セカンドライフ」はどうかということですが,Japanese equivalent(同意語)として,禁じられてはいると思います。そうであれば,例としては,「セカンドライフ(no Japanese equivalent)」とした方がよかったと思います。なお,「セカンドライフ」は,このリンデンの仮想世界が広まる前から,定年後の第二の人生という意味で使用されることが一般的と思いますが,この意味での使用については,当然のことながら許容されているものと思われます。

リンデンラボは,上記のようにSecond Life®などのトレードマークの使用については,厳格な態度を示す一方,セカンドライフ関連の事業活動を表記するのには,基本的に「SL」または「inSL」という表記を使ってグループ名や事業名などを表示することを認めています。その使用のガイドラインは,このリンクを参照してください。


その解釈ですが,要するにリンデンラボ本体の事業と誤認混同しないようにということ,また,リンデンラボと提携関係や後援関係にあるとの誤認混同も生じないようにとの観点で,ガイドラインが決められているものと思われます。

例1 SL+当該個人又は団体を表示する固有の名称による名称はOK
   Dell SL
   Dell inSL
   はOK
   
例2 SL+2つ以上の一般名詞を組み合わせた名称はOK
   SL Budget Shopping Guide
   Chic Clothing Boutique inSL
   はOK
   
例3 SL+1つの一般名詞を組み合わせた名称はNG
   SL Shopping
   Clothing inSL
   はNG
   
例4 上記によってOKであっても,リンデンラボのサービスなどと誤認混同するおそれがあるような場合はNGとされます。
   SL Land Auctions
   SL Avatar Skin
   SL Avatar Clothing
   SL Source Code
   SL Viewer Software
   はNG

例2がよくて,例3がだめな理由がわかりにくく,例3でも,具体的にリンデンラボの事業と誤認混同するおそれがないなら,いいじゃないかという意見もあるかもしれませんが,例3では,一般的に誤認混同のおそれがあると思ったのかもしれません。

では,SL総合研究所はどうなの?というご意見があるとおもいますが,SL「総合」「研究所」で,SL+2つ以上の一般名詞を組み合わせた名称であり,かつ,リンデンの事業との誤認混同のおそれもないので,たぶん大丈夫だと思います。えっダメ?まあ,マジで「仮想世界研究所」とかにしようかとも思いましたが,めんどうだからいいや。どうせ,こんなブログ,リンデンの人は見てないでしょうしw

今回のTOS変更でブログ名やセカンドライフ内でのグループ名を変更した人も知っていますが,心配ならリンデンに問い合わせてみるのがよいと思います。

11 文章中での使用

自己のサービスや商品などの名称として使用するのではなく,ブログなどの文章中で他人の商標を記述的に使用しても,それ自体は,商標権の侵害になるわけではありません。ただ,この場合も,ブランド名などが正しく使用されないと,ブランドイメージの阻害の問題がありますし,希釈化の問題もあります。

リンデンラボもそのような観点からと思われますが,文章中での使用についてもガイドラインをもうけています。 大文字小文字の別やハイフォンのあるなしなど,できるだけ正確にトレードマークを使用するようにとしています。でも,これ厳格に守るのめんどうですね。まあ,適当でいいか(いいのかw) あんまりうるさいこというなら,もう,セカンドライフのブログなんて,やめようっと

まだまだ,書き足りないことが多いし,勉強不十分なところもありますが,トレードマークのことについては,これでひとまず記事を終えたいと思います。

2008年4月27日日曜日

トレードマークの使用に関する新しいTOS(2)

7 インターネット上での商標の使用と使用の場所

前回,商標権の保護に関する属地主義のことを説明しました。これは,当該商標の使用行為がされた場所の法律を適用するという原則のことをいいます。ところで,インターネット上で商標が使用された場合,どの国で使用されたことになるのかは,従来の枠組みで捉えきれない問題です。当該商標使用者の住所地,サーバーの所在地,顧客たる需要者の所在地などが基準として考えられるところですが,商標権保護の趣旨からみて,顧客たる需要者の所在地が重要な要素になると考えられます。

この問題に関して,商標法の属地性とインターネットの世界性との関係から生じる各国における商標権の抵触問題等を解決するための国際的ガイドラインとして,2001年に開催された,工業所有権保護のためのパリ同盟総会及び世界知的所有権機関(WIPO)一般総会において,「インターネット上の商標及びその他の標識に係る工業所有権の保護に関する共同勧告」(pdf)が採択されました。

これによれば,インターネット上における標識の使用が,ある国における使用と認められるかどうかは,当該国において「商業的効果(commercial effect)」があるかどうかによって判断されるとされています。わかりやくいえば,当該国に所在する顧客に対して商売をしていると認められるかどうかで使用の有無を決めるということで,その判断要素としては,同勧告の3条にいくつか例示されています。

これは勧告ということであり,条約のような強制力はなく,各国の直接の裁判規範にはならないものですが,一般的な考え方として,参考にはなると思われます。

具体的な裁判例としては,有名なものにプレイボーイ対チャックベリー事件の連邦地方裁判所判決があります。これは,被告がイタリアで「Playmen」という名のインターネット・サイトを開いて,米国のユーザーに画像を有料会員制で利用させていることは,米国における頒布となり,米国における商標「Playboy」を侵害したことになるとして,米国内の顧客からのサイトの加入申し込みを受諾してはならないという,ニューヨーク南部連邦地方裁判所の判決です。

日本語でのホームページでの使用は,日本語を使用する顧客は,主として日本国に居住しているという日本語の独自の特色があるので,基本的に日本での使用と認められるように思います。しかし,英語を使用して,世界的に物品販売やサービス提供などをしている場合は,明示的に排除する等の措置をしない限り(例えば,米国居住者には販売しないと明示し,実際にも販売防止措置を施すような場合など),実際に顧客となった人が所在する複数の国で商標を使用したと認められる可能性があります。

8 商用を目的としない個人のブログにおける使用

このサイトのように個人のブログにおける商標の使用はどうなるでしょうか。

仮に,日本国に居住する人を対象とするブログであるとすると(日本語のみで記述されたブログは,サーバーの所在地にかかわらず,基本的にそうだと思います。),日本の商標法に照らして,「使用」の有無が判断されるということになります。
商標法によれば,使用については,同法3条3項に定義があります。これとともに,商標として使用したというためには,同法2条1項で「業として」商品又は役務について使用したといえる必要があるとされています。

これについて,「個人の趣味のホームページで,商標を使用している場合には,原則として,『業として』の使用に該当しないので,商標権を侵害しない。」という見解があります(青木博通著「知的財産としてのブランドとデザイン」189頁,有斐閣)。ただ,青木氏の見解によっても,アフィリエイト広告などによって収益活動を行っている場合は,業としての使用に該当する可能性があるということになるようです。これには異論があるかもしれません。紛らわしい場合は,ブログのタイトルなど,ブログ本体に関連した表示としての使用は回避したほうが安全だと思います。

また,本文中でなにかの記事を書くときに,商標に関する記述が含まれているという程度では,上記の「使用」の概念に含まれていないと思われます。

なお,以上は日本の商標法の話であり,海外の居住者を対象に外国語サイトを開設しているような場合は,相手国の商標法では違う解釈があり得ることを認識すべきです。

★以上は,法律上の話であり,われわれが利用規約(TOS)に合意したことによって,契約上の拘束力が生じる可能性があります。それと,ガイドラインの解釈とか,「SL総合研究所」はどうなの?wとかは,次の機会に記事にしたいと思います。

トレードマークの使用に関する新しいTOS(1)

1 はじめに

3月24日ころ,リンデンラボ社から,トレードマークの使用に関する新しいTOSの告知がされ,これに同意しないとセカンドライフにインできないようになっていました。かなり,遅くなってしまったのですが,少し時間ができたので,その背景について調べてみました。多分,長くなると思うので,いくつかの記事に分けます。

公式ブログの記事

翻訳サイトの記事

2 概要

変更された部分は,TOSの4.4 "Without a written license agreement, Linden Lab does not authorize you to make any use of its trademarks."で,これによれば,リンデンラボの商標について,リンデンラボ社が新しく定めたガイドラインを遵守するように求めています。

ガイドラインについては,上記のリンクから見ていただきたいのですが,要約すると,Second Lifeなどの文字を,自己の営業名,組織名,製品名,サービス名などの一部に使用することを禁じ,セカンドライフ関連の活動を表示するものとしては,SLという文字を所定のガイドラインに基づいて使用することを求めるものとなっています。このガイドラインを理解するために,その背景となる商標のことについて調べてみました。

3 商標とは?

商標とは,そもそも事業者が自己の取り扱う商品について,他人の商品と識別するために,文字,図形,記号等によって標識のようなものをつけたものをいいます。その後,商品だけでなく,役務について使用する標識(サービスマーク)もこれと同様に保護されるようになったものです。他人が,自己の商標を真似た商標を商品に付けることによって,顧客に間違って購入させて,売上げが減少したり,粗悪な模倣品によって信用が害されたりすることを防止するため,商標を登録し,これと同一又は類似の商標を使用することを禁止して,これを保護したのが,現在の登録商標の制度らしいです。

なお,わたしは商標法の専門ではないので,細部は違っているかもしれません。

4 リンデンラボ社の商標

リンデンラボ社のトレードマーク又はサービスマーク(以下,区別しないで,トレードマークといいます。)のうち,ユーザーが使用する可能性の高いものは,Second Life®,SL™といったものだろうと思いますが,ほかにも様々なものがあり,次のリンクからみることができます。

ここで,文字又は記号の後の®,™の意味ですが,このリンクを参照してください。

要するに,®は,連邦商標法(ランハム法 Lanham Act)によって登録されたもので,連邦商標法による保護を受けるものです。™はそれ以外のもので,連邦登録申請中のものもありますが,それだけではなく,州法で登録されたもの,登録予定のないものなど様々です。要は,連邦登録はされていないが,商標としての権利主張をしているよという意味で表示されるもののようです。

5 米国内の効力

まず,連邦登録された商標は,当然のことながら,連邦商標法による保護を受け,これを侵害する行為について差止めや損害賠償の請求ができることになります。米国では,日本の商標権よりも,侵害行為の範囲についてやや広い解釈が取られているようです。米国の判例では,相当多数の顧客又は消費者に商品又はサービスの出所,提携関係又は後援関係について混同を生じさせる蓋然性があるかどうかで侵害になるかどうかを決めているようです。商品やサービスが競合関係になくとも,何らかの提携関係や後援関係を示唆する場合も侵害行為になるとされているようです(「米国商標法・その理論と実務」39頁,創英知的財産研究所著・経済産業調査会刊)。上記のような誤認混同行為のほか,商標の識別力を弱まらせる行為(希釈化)も禁止されているようです。これは,有名な商標(著名商標)について、同種の商品でなくても,他人がいろいろな商品やサービスに使用することにより、その著名商標の機能が弱められてしまうことをいいます。例えば,製菓会社がセカンドライフ・チョコを売るようなものでしょうか。

ところで,こうした法制度を理解する前提として,米国は,連邦国家であり,判例法(コモンロー)を基礎に法律を発達させた国であるので,日本の制度と比べるとそこが違うことに注意しなければなりません。連邦法で登録されていないものであっても(すなわち,トレードマーク表記のもの),州の商標登録制度によって州法によって保護を受けることもあり,また,全く未登録のものでも,コモンローによって保護されることがあります。そもそも,連邦法は,コモンローによる商標の保護を取り込んで制定されたものだそうです。

6 日本での効力

上記の話は,米国内のことで,米国で登録された商標が直ちに日本国内で効力を生じるわけではありません。商標に関しては,属地主義が採用されており,日本国内での商標使用行為が商標権侵害に当たるかどうかは,日本の商標法によって判断され,米国内の使用行為については米国の商標法で判断されることになります。ところで,リンデンラボ社は,日本でも商標登録申請を行っていますが,現時点ではまだ登録されていないようです。

リンデンラボが日本国内で申請している商標は,「SECONDLIFE」だけのようで,下記のほか国際出願もされています。
【出願番号】 商願2007-74489
【出願日】 平成19年(2007)7月2日
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
9 オンライン3Dバーチャル環境へのマルチユーザーアクセスの提供に使用されるソフトウェア,コンピュータ3Dバーチャル環境ソフトウェア
38 オンラインバーチャル環境において使用されるテキストメッセージング及び電子メールサービス等の通信サービス
41 オンライン3Dバーチャル環境の提供,通信ネットワークによってアクセス可能なオンライン3Dバーチャル環境の提供,マルチメディア及び3Dバーチャル環境ソフトウェアの製造サービス

もっとも,未登録の商標でも,全く何の法律上の効果がないわけではなく,広く認識された商標や著名な商標については,不正競争防止法によって,同一又は類似の商標を使用することによって商品又は営業を混同させる行為は禁止されています。

★長くなってしまいましたので,以下は改めて記事にするつもりです。インターネットでの使用がどの国で使用したことになるのか,利用規約に合意したことによる契約法上の効力などについて記事にしたいと思います(時間があれば・・・)

2008年4月23日水曜日

新CEOはMark Kingdon氏に決定














先日,リンデンラボ社の新しいCEOが決まりそうだというロイターのインタビュー記事のことを取り上げたばかりですが,公式ブログで早くも新しいCEOの発表がありました。

公式ブログの記事

新しいCEOはMark Kingdon氏だそうです。同氏は,Organic Inc.で2001年からCEOを務めている人物で,既にご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが,同社のHPに同氏の略歴が載っていますので,興味のある方は見てください。

同氏のセカンドライフ名は,M Lindenだそうで,プロフを検索してみたら,プロフのアバターは暫定的で,これから変わっていくというようなことが書いてありました。

同氏は,5月15日に就任するそうで,その後は,Philipと協力しながら,リンデンラボ社の経営を行っていくことになるようです。Philipがリタイアするわけではなく,CEOといっても,完全に1人に任されているというわけではなさそうなので,やりにくそうなポジションのように見えますが,セカンドライフに新風を吹き込んでもらいたいものです。

新CEOに対する注文としては,日本向けスタッフを充実させていってもらいたいと思います。日本語サイトも今のままでは半端です。しっかり整備してほしいですね。

2008年4月22日火曜日

リンデンラボ社の新しいCEOとか

リアルライフが超多忙なこともあって,ブログ放置してました。
書かずに放っておいたら,そのまま休眠ブログになりそう。習慣ってコワイ。

さて,この間,重要なことがいくつかありました。

まず,わたしが関心をもったのは,リンデンラボ社から発表された,トレードマーク使用に関するガイドラインです。
これは従来,リンデンラボ社があまりうるさいことを言わなかったSecond Life®という商標や,手の中に目があるというお馴染みのlogo使用などについて,ユーザーの使用についてのガイドラインを作ったものです。
これについて理解する前提として,米国での商標についての法規整について調べようと思いつつ,図書館にいく暇がないので,結局放置することになってしまいました。うちのブログの名前は問題ないかな?まあいいや。そういうことにしてw
そのうち,調べる時間があったら,なんか書きます。でも,忘れるかも・・・

あとは,セカンドライフやってて,目立った変化として,ウインドライト対応ビューアが正式ビューアとなったことと,SIM全域の物理エンジンがHavok4に切り替わったことが大きいと思います。
多少ビューアが重くなっても,自宅は海辺にあるので,やっぱり海キラキラは気持ちいいです。だからどうっていうわけじゃないけど,居心地がいい方がいいですよね,やっぱり。
仕事が忙しいのもあって,PC仕事に疲れたら,仮想世界の自宅からぼうっと海を眺めてます。リアルの自宅からは隣の家しかみえないし(>_<)

そうはいっても,相変わらず不具合が出まくりなのは,仕様みたいです。

そういえば,前のブログでPhilip Rosedale氏がリンデンラボ社のCEOを辞める意向であると書きましたが,ロイターの記者がPhilip Rosedale氏にしたインタビューによれば,数週間内にリンデンラボ社の新しいCEOが決まるかもしれないということです。

どんな人がCEOになるのか知らないけれど,最近は(特に日本人の間で)頭打ち感が漂っているセカンドライフですので,なにかちょっと新鮮なものがほしいですね。新しいCEOには,Philipに遠慮しないでガンガンやってほしいです。

2008年3月15日土曜日

Philip Rosedale氏がCEO辞任の意向

リンデンラボ社の創設者であり,長らくCEOを務めたPhilip Rosedale氏が,公式ブログで,同職を辞任し,新しいCEOを選任する意向であることを明らかにしました。

公式ブログによれば,その理由として,Second Lifeの成長に伴い,CEOの役割が増大してきたことを掲げ,経営者の役割に適した人材をCEOに迎え,自分は,製品戦略やビジョンの策定などに集中していきたいということです。

Rosedale氏は,CEO辞任後,Chairman of the board(取締役会議長)となるが,今後もフルタイムでリンデンラボ社の仕事をするとし,「Second Lifeは私のライフワークであり,どこにも行くつもりはない」と述べています。

2007年は,セカンドライフが飛躍的な発展を遂げた年であったといえます。リンデンラボ社が何もしなくても,勝手にマスコミが取り上げて,もてはやされ,ユーザー数は拡大の一途でした。しかし,2007年後半には失速し,最近は,ユーザー数も伸び悩んでいるようです。

アメリカ経済全体についても,サブプライム問題に端を発した信用不安から景気後退が懸念され,株,ドルの同時安などが起こっており,今後,厳しい状況となる予想がされています。

今回の発表は,こうした状況を踏まえ,リンデンラボ社を経営的に強化しなければならないとの考えの下にされたものと思います。ただ,きちっと後任を決めてから発表したほうがよかったのではとも考えますが,この段階で発表したのは,広く人材を公募したいと考えているのかもしれません。

セカンドライフは,コンテンツとしての魅力は十分にあると考えますので,運営や宣伝などが改善されれば,まだまだ発展の可能性はあると思います。

今後,どのような人物がCEOに選任されるのか注目されるところです。

2008年3月7日金曜日

プライベートSIMの売買手続の変更

前に,プライベートSIMの売買において,代金の支払とSIMの譲渡手続が同時に行われるシステムとなっていないことから,SIMの二重譲渡などの不安があることを記事にしました
 
わたしのブログをリンデンラボ社のエライ人が見ていたわけではないと思うのですが,SIMの売買に関して,代金決済にリンデンラボ社が関与し,取引の安全を高めるシステムが導入されるそうです。

公式ブログの記事

翻訳サイトの記事

これによれば,SIMの売買の手続は次のようになるようです。

買い手と売り手の両方がSL公式サイトで,売買対象のSIMを特定し,合意した代金額を明記したサポートチケットを提出します。双方のチケットの情報が合致すると(すなわち売買合意が確認できると),リンデンラボ社は,買い手のSLアカウントを通じて,合意した代金額相当のUSD又はL$を請求します。その入金が確認できたら,売り手にSIMの価格から譲渡手数料を差し引いた額を支払い,SIMの譲渡手続が行われます。

これによって,代金の支払とSIMの譲渡がリンデンラボ社のシステムを通じて行われることになり,代金は支払ったけどSIMを譲渡してもらえなかったとか,逆にSIMを譲渡したけど代金を払ってもらえなかったなどのトラブルが回避され,取引の安全が図られるようです。

リンデンラボ社が,取引の安全を重視して,システムを変更したことは素直に評価したいと思います。これによって,中古SIMの売買が多少活発化するかもしれません。

2008年2月27日水曜日

Lessig氏の米議会選挙出馬取りやめ

Lawrence Lessig(ローレンス,レッシグ)氏は,スタンフォード大学の法学部教授で,デジタル著作権の権威であって,セカンドライフ内のコンテンツの著作権の在り方について影響を与えたとされる人物です。

同氏は,最近,「Change Congress Movement」(議会変革運動)と名付けた活動を開始するとともに,米下院議員選挙への出馬を検討していると発表していました。

WIRED NEWSの記事(翻訳)

しかし,同氏は,自身のブログで,出馬の取りやめを発表したようです。

同氏は,自ら政治の舞台に立つことによって,政治腐敗に直に取り組むという意図だったようでしたが,その目的のためには,むしろ政治の場の外で活動するほうが有効と判断したようです。

アメリカでも,日本と同様に,政治と金の問題の根は深いようです。

2008年2月23日土曜日

Ad Farmの規制

「Ad Farm」とは,典型的には,ほとんど使い道のないような小さな区画に通常の価格よりも著しく高い価格で販売設定した上,そこに視界を遮るような背の高い看板を立て,これに困った周囲の土地所有者に高値で土地を買い取らせることをいいます。これを業として行う人のことをAd Farmerとも呼ぶようです。

これはメインランドの困った問題で,これに反対し,対抗するグループもいくつか存在しています。勝手に紹介させていただきますと,日本でも,Landscape Protection Network of Japan(日本景観保護ネットワーク)というグループが,景観保護という観点から活動されています。

これまで,リンデンラボは,Ad Farmについて,特段の規制をしていませんでした。
従前のリンデンの態度は,上記Landscape Protection Networkのブログ記事にあるChiyo Lindenさんの対応からも窺えます。


しかし,こうした景観保護の働きかけがリンデンラボを動かしたのだと思いますが,
リンデンラボは,Ad Farmについて,コミュニティスタンダード違反(ハラスメント行為)として処罰する方針を発表しました。

公式ブログの記事

翻訳サイトの記事(いつもお世話になります)

最近,リンデンラボがAd Farmを問題視しているらしいことが分かったのは,2008年2月8日の公式ブログにJack Lindenのコメントがあったからですが,それから1週間も経たない同月13日に公式ブログでハラスメント行為として規制することを発表したのは,(それまで何もしていなかったことに目をつぶれば)驚くべき早さであったというべきでしょう。

さっそく,この方針を受けて,次々と処分がされているようです。リンデンラボの方針によれば,最初は軽い処分から,順次重い処分へと段階的にされるようです。最近の処分の結果の発表のなかには,ちらほら「Visual spam from ad farms」という理由で警告や,アカウント停止などの処分がされています。

プライベートSIMでは,建築物については高さ制限を設けているところが多いようです。しかし,メインランドではそのような規制がないため,景観を害する建築物も少なくなく,メインランドの人気が上がらない一つの理由になっているようです。リンデンラボは,最近人材を募集して公共事業部を立ち上げ,メインランドのコンテンツを充実させる方針を打ち出しました。メインランドの魅力を高め,利用を活性化する目的と思われます。Ad Farmの規制も,これとリンクするものだと思います。

リンデンラボのAd Farmの規制方針は,景観保護を直接の目的としたものではなく,見通しの悪い看板を立てることによって,隣地所有者に高値で買い取らせようとする行為がハラスメントであるとするものです。これはこれで対応するべきですが,今後は,景観自体の保護についても,それなりの対応をしてもらいたいと思います。

規制といっても,それに反したら処分するといった固いものだけでなく,例えば,メインランドの建築物のガイドラインのようなもの(建築する以上,これを守ることが望ましいという程度の規範)を発表するのも,有効かもしれません。

言い訳

またリアルの仕事に追われて,更新が滞ってしまいました。今の仕事の状況からして,次年度もこのような状況が続きそうです。ごめんなさい。もう同じ言い訳するのはやめます。ということで気が向いたら更新します(いいのかw)。

そういえば,最近,セカンドライフを除けば,全くゲームをやっていません。もう友だちに合わせて,長時間のレベル上げとか絶対に無理だし。そういえば,セカンドライフが一般受けしない理由に,ゲームの目的が定められていないことを挙げている人がいましたが,どうもピンときません。忙しい自分には,何をやってもいいし,何もやらなくてもよいという,このユルさ加減が合ってるのかもしれないと思います。いろいろやりたいことだらけだけど,時間がないうちに何をやりたかったかを忘れるという体たらく・・・

2008年2月10日日曜日

著作権侵害と運営会社の立場

1 最近の著作権侵害騒動

 しばらく,更新をしていなかった間に,相変わらず,セカンドライフでは,著作権侵害問題が起きているようです。わたしが参加しているファッション関係のグループでも,違法にコピーしたアイテムを売っている店に対して抗議する通知や,これに対してみんなで抗議活動しようなどという呼びかけもされているようです。

 しかし,違法コピー商品を売る犯罪者側もなかなかしぶといようで,被害にあった制作者らの抗議から逃れて,一旦はセカンドライフ内からいなくなっても,すぐに新たなアカウントを作って,セカンドライフ内に現れ,同種行為を繰り返すようです。
 
こうした騒動については,最近のロイターの記事にも取り上げられています。(いつもロイターばかり引用していますが,やはり情報源としては一番信頼できるような気がします。)

ロイターの記事でも言及していますし,わたしの過去の記事でも,同様に言及していますが,こうした著作権侵害に対して,リアルの法制度下で救済を図ることは,とても困難です。これまで2つの著作権侵害訴訟のことを取り上げてきましたが,これらはいずれも被害者も加害者とされる者も,いずれも米国の住民であって,LL社やプロバイダーなども米国の会社であったことから,同一国内の裁判所で,同一国の法律で解決できた事例です。もちろん,米国は州が集まった連邦国家ですので,日本のような単一法国ではありませんが,それでも連邦法のもとで解決できたということは,異なる国民同士が訴訟をするよりははるかに容易です。しかし,これらの2つの訴訟ですら,アピールにはなったとしても,はっきりいって被害が回復できたというには,ほど遠い現実があります。ロイターの記事の事例もそうですが,異なる国民同士でこうした問題が起こったら,リアルの訴訟というのは,可能ではあっても,訴訟コストを考えた場合,非現実的な手段というしかないでしょう。

リアルでの法的解決が困難だとしたら,やはりセカンドライフ内で解決を図るほかありません。

もちろん,目には目をとばかり,グリファー行為によって違法コピー商品を販売する商店のSIMをクラッシュさせたりしたら,TOS違反になってしまいますから,そうした行為は許されません。例えば,穏健な集団的示威活動などによって,犯罪者の活動を妨げるということが考えられますし,現に今回の騒動ではそうした活動がされたと聞いています。また,安いからといって,違法コピー商品の疑いのあるものには手を出さないという,われわれの自覚が大事だと思います。

2 運営会社としてどうすべきか?

 やはり,こうした問題には,リンデンラボ社に存在感を示してもらいたいと思います。

 そもそも,セカンドライフがユーザーの支持を集めている大きな理由に,セカンドライフがユーザーの自由な創作を認めて,コンテンツの著作権を保障し,その自由な売買を認めたことがあると思います。著作権が保障され,オブジェクトの売買ができることによって,コンテンツの創作を活発化させ,これによって多様な世界を生み出しているのです。したがって,著作権の保障の度合いを高めることが,この世界の価値を高めることにつながるということがいえます。この路線に従えば,運営会社の立場からみて,著作権の保障をより徹底させることは,セカンドライフという「商品」の価値を高めることになると考えることができます。リンデンラボ社には,自分たちの商品の価値の根本につながる仕事だという自覚を持って,やってもらいたいと思います。
 
もっとも,不正ツールを使用しない,単なるアイデアの盗用といったものは,全くの私的紛争なので運営会社が関与することは,困難だと思います。もちろん,そういった場合でもADRなどの紛争解決機関へのあっせんをするといったことは運営会社でも可能です。

一番頑張ってもらいたいのは,不正ツールを使用したり,意図的にSIMクラッシュを引き起こしたりするなどのTOS違反行為によって複製をすることについて,厳しい態度を示してもらいたいということです。これらの行為は,当然のことながら,処分の対象となる行為ですので,もしそうした情報があれば,本人の弁解を聞いた上,不正が認定できたら,BANすべきでしょう。Nockさんのブログでも,AR(嫌がらせの報告)の活用が取り上げられています。

お前に言われなくても,寝る間を惜しんで昼寝して毎日一生懸命取締りをしているよ,ってリンデンラボ社の方は言うかもしれません。おそらく努力はされているのでしょうが,われわれ一般ユーザーにはあまりそれが伝わってきません。どこかのMMORPGでは,運営会社が特別な取締チームを作って,その活動に基づいて定期的に処分したアカウントの数などを公表しています。リンデンラボ社も,こうした「目に見える」取締活動をする必要があると思います。どうせ全部を取り締まることはできないのでしょうが,そうであっても,厳しい姿勢で臨んでいるということをアピールすることが重要だと思います。

違法コピー自体をシステム的に防止できたら,それに勝るものはないのですが,なかなか難しいのでしょう。でしたら,制作者が意図しない場所で販売されたら,制作者に通報されるシステムって開発できないでしょうか?制作者が予め登録した店以外,又は,所定の方式以外で販売されたら,通報されるスクリプトとか・・・その場合,オブジェクト自体を消去できたら理想的なんだけどなあ。まあ,どうせそういうの作っても抜け道は考え出されるだろうけど。

後は,月並みだけど,市民運動が大事かもしれません。銀行規制のときも思いましたが,仮想世界が安定したコミュニティとして発展するためには,リアルと同じように,政治活動や市民運動をする必要が出てきたと思います。

2008年1月28日月曜日

みずほコーポレート銀行によるセカンドライフ調査報告

みずほコーポレート銀行による調査報告<「セカンドライフ」にみる仮想世界の可能性(その2)>が発表されました。

同じ担当者による2007年5月24日付けの報告<「セカンドライフ」にみる仮想世界・仮想経済の可能性>と読み比べると,面白いと思います。

以前の報告が「2008年末には世界総加入者数が2億5000万人に迫る」という過大な予想をしていたのに比べて,地に足がついた現状分析となっていると思います。

新しい報告は,登録者増加率が逓減傾向にあること,セカンドライフ進出がマスメディアに取り上げられることによる副次的な宣伝効果が徐々に減退傾向にあることなどをふまえ,従来の企業利用の問題点や限界を分析しつつ,3D仮想世界の特性と,それに応じた活用の可能性について模索している内容となっています。

書いてある内容に特に目新しいものはないようですが,最近のセカンドライフについて,企業サイドからの見方をまとめたものとしては,よく整理されていると思います。

2008年1月24日木曜日

セカンドライフ日本語公式ページの(英)

LL社からは,「銀行」規制について,前回の公式ブログの発表以上の公式発表はないようですが,セカンドライフ日本語公式ページに,「銀行」規制についての公式ブログの日本語訳(pdf)が載っています。

今回の規制のように,重要なポリシーの変更については,公式に日本語訳を発表してほしいなと思っていましたが,こうした姿勢は評価できます。

利用規約(TOS)を含む,インワールドヘルプについても,最新版の翻訳を載せていただけるとありがたいですね。

最近,日本人利用者数が伸び悩んでいるようです。
LL社は,もう少し緊張感を持った方がよいと思います。
これだけ日本人利用者が増えたのですから,もっと日本語担当者を増やすべきでしょう。

今回の翻訳文の発表は,わずかな前進ですが,評価できます。
日本語公式サイトも,この調子で,タイムリーに更新していってもらいたいと思います。

日本語公式サイトなんだから,リンク先が「(英)」ばっかりってどうよ。

2008年1月19日土曜日

Water Under the Bridge

セカンドライフ内で金利付きの預金受入業務(正確にいうとこうなりますが,面倒なので,単純に「銀行」業務ということにします。)が禁止される1月22日まで数日を残すだけとなりました。

良心的な「銀行」経営者は,預金払戻しを告知し,資産を処分して,払戻しの準備をしているようですが,高金利をうたっていた「銀行」の中には,夜逃げを決め込む者もあるでしょうから,預金の一部は返還されないままとなることが予想されます。預金払戻し騒動が一段落したら,次はリアルの訴訟問題に発展することも予想されますが,リアルで預金の回収を図ることは大変なことだと思います。まず,被告のリアルの人格を特定する作業が大変なことは,これまでの著作権侵害訴訟の記事で取り上げたとおりです。仮に,被告の特定ができても,訴えを起こす場合は,おそらく「銀行」経営者の所属国で訴えを提起することになると思われますので(くわしい説明は省きます。),「銀行」経営者が外国にいる場合はかなりの困難が予想されます。

前回のギャンブル禁止のときも唐突だったように思いますが,ギャンブル禁止の場合は,一般ユーザーへの影響は軽微です。しかし,「銀行」禁止の場合は,預金が返還されないおそれがあるという問題があり,SL経済全体への影響も合わせると,一般ユーザーへの影響は決して小さくないと思います。

このため,禁止の告知から,その発効まで2週間しかなかったのは,周知期間,猶予期間として十分であったかどうか議論の残るところだと思います。

GINKOが破綻して,SL内「銀行」に関して注意を呼びかける記事が公式ブログに載ったのは,2007年8月14日です。それから,今回の規制まで約4か月ちょっとありましたが,この間に「銀行」についての苦情がたくさん寄せられていたということなら,もっと,一般ユーザーに警告を与えるような発表ができなかったのかなあっていう感じがします。この間に,少なくとも公式にはあまり動きがなかったことから,今回の規制が唐突な印象を与えます。この間に,LL社が否定的なメッセージを出し続けていれば,新規に(まっとうな)「銀行」業務を行うようになった人や,それらの「銀行」に預金をするようになった人が,考えを変えた可能性もあります。


また,LL社は,今回の措置を実施する前に,もっとユーザーの意見を聞くべきであったように思います。わたし自身は,リアル法で,消費者保護の観点から,銀行が一般的に免許制であることからして,セカンドライフ内でも一律に禁止して一定の要件を備えた者だけに免許を与えるという方式それ自体は,十分合理性のあるものだと思います。また,LL社は,TOSを一方的に変えたり,リンデンドルの交換等に関して一般的な規制をしたりする権限がありますし(もちろん,リアル法に反しない限りで),セカンドライフ内で「銀行」の名を騙った詐欺的な行為を防止する社会的責任があることも事実ですから,「銀行」規制自体は,十分正当性のあるものだと思います。しかし,どこまで規制するのか,免許の方法など,「銀行」規制の方法などについては議論のあるところですし,4か月も時間があったのですから,もう少し意見を聞いてもらってもよかったのだろうと思います。LL社は顧客満足度を重視していくという方針のようですが,個々のクレーム処理だけでなく,こうした全体に関わる規則の変更などについても,もっとユーザーの意見を聞くようにしてもらいたいと思います。まあ,ほかのネットゲームの運営会社に比べたら,LL社はかなりましな方だと思いますが。

今回の件で一番気になるのは,リアルの銀行免許のある者にだけ,セカンドライフ内で預金を集めることができるとした点です。
リアル法に委ねるといっても,国によって規制は千差万別です。リアルでも簡単に銀行を設立できる国もあるように聞きます。一般的には,消費者保護の観点から銀行設立には厳しい要件を課している国が多いようですが,だとしても,各国で規制が分かれている以上,LL社がきちっと要件を絞って,LL社が判断すべきだと思います。

わたしは,セカンドライフが,ここまで多くの人の支持を集めたのは,ただ企業の宣伝だけじゃなく,ユーザーに自由にコンテンツを作らせ,その自由な販売を認めたところにあると思います。それによって,一つの企業だけでは到底作れないような,たくさんの創造性にあふれる魅力的な世界ができるようになったと思います。そして,今日では,ユーザーの創作能力はとても高くなり,本当に素晴らしい物が作り出され,これが今のセカンドライフの世界を豊かにしていると思います。

セカンドライフのルール作りについても同じことがいえると思います。SIM単位の自治はユーザーに任されているとしても,今回の銀行規制のような全体のルール作り等には,ユーザーの意見は,まだまだ,あまり反映されているようには思えません。しかし,ユーザーの中には,ルール作りとかが得意な人もたくさんいます。政治,行政,経済,法律などの専門家もいます。LL社の職員だけでルール作りを考えるよりも,こうしたユーザーの知恵を生かすべきだと思います。もちろん企業の利益のために譲れない部分もありましょう。でも,ユーザーから意見を募れば,結構,よいアイデアが出てくるかもしれません。ビューアーの機能向上とかについてはJIRAとかで意見を聞いて,開発に反映させているのですから,ルール作りについても,同様のことができないことはないはずです。

2008年1月14日月曜日

増えすぎたランドマークの整理

銀行の話の続編を書こうとおもったのですが,今日は,本当にどうでもいい話です。
毎回,毎回,固いことばかり書けませんって。

セカンドライフをやっていて困るのが,ランドマークの整理です。そりゃあ,あちこち行くたびに,自分で作ったり,人からもらったりして,増える一方ですからね。

みなさんは,ランドマークをどうやって整理していますか?

おそらく,不要なランドマークを消すのは当然として,後は,服屋,スキン屋などのショップ毎,クラブ,ダンスホールとかの遊びスポット毎など,一定のグループ分けしてフォルダを作ってまとめて管理している人が多いのではないでしょうか?

わたしが最近考えついたのは,自分でグループ毎に,ノートカードを作って,そこにランドマークをドロップする方法です。

例えば,campsっていう表題つけたノートカードに,各キャンプのランドマークを優先順位に従って上からドロップして,ノートを作るのです。同じ要領で,skinsって表題で,スキン屋のランドマークをドロップします。この要領で,いろいろできます。

これの利点ですが,ランドマークに添えて,そのランドマークの説明のテキストを書いておけることです。例えば,キャンプのランドマークとともに,「このキャンプは上限30L$」とかいうふうにメモを書いておけます。「この店のブーツはサイコー」とか。「お金たまったら,ここの○○購入!」などでもOK
これで,なんのランドマークだか飛んでみるまでわからないってことはないはずです。
また,お友だちにお勧めの店一覧という形で,説明付きでノートを渡すこともできます。こういうノートをいくつか作って配布するのもいいかも。東京おいしい店ガイドみたいな感じでw

まあ,こういうのをマメにやるのは大変で,わたしも全部整理できたわけではありませんが,今後はこれで整理していきたいと思います。

こんなこと,もうとっくに知ってたよっていわれるかもしれませんが,わたしは今まで気がつきませんでした。ほかにオブジェクトの整理のアイデアなんかあったら,教えてください。

2008年1月12日土曜日

橋の下の水

このブログでは,年末と年始に紛争予防,リスク回避のことを取り上げました。なにか漠然とした予感があったのかもしれません。今回の銀行規制の問題は,それが当たってしまったような気がします。銀行に預けていた人は不安でしょうし,また,まっとうな銀行業をやっていた人は本当にお気の毒です。

前から(今でも),わたしは,セカンドライフ内のお金のやり取りについて不安を感じています。今回の規制では,金利を付けない単なる預り金は禁止されていないようですが,金利が付かないなら,人に金を預ける意味はありません。自分で持っているか,アルトに送るか,使う予定がないなら,手数料がかかってもリアルマネーにしたほうがよいです。

SL株は,今回の規制の対象となるかどうかは,グレーなようですが,セカンドライフの株式会社は,ただの個人のところが多いでしょう。会計もしっかり監査されているか怪しいし,上場されている証券取引所の規則にもよりますが,情報開示も問題があります。出資金を集めたところで計画倒産っていうことだって起こらないとはいえません。くれぐれも自己責任で。

さて,今回の銀行規制について気になったことを少し書いてみたいと思います。一部は,前のブログの繰り返しです。

今回の規制の目的ですが,公式ブログにあるように,実現不可能な高利率をうたい文句にして,元より倒産目的で預金者を欺いてお金を集める行為,こうした「銀行」を称する詐欺行為を放置することは,バーチャル経済の不安定化につながるから,これを防止したいということです。この目的を実現しようとすること自体は,文句を言う人はいないと思います。

そのためにどうするかということですが,規制の内容は次のとおりです。

"As of January 22, 2008, it will be prohibited to offer interest or any direct return on an investment (whether in L$ or other currency) from any object, such as an ATM, located in Second Life, without proof of an applicable government registration statement or financial institution charter." (公式ブログ原文まま)

この文章,あまり良いものとはいえないと思います。

まず,これでは利息を提供することを禁止しているように読めてしまいますが,利息を与える行為自体は,何ら害はないのですから,利息を与えることを約束して投資を受ける行為を禁止するとすべきです(前回のブログでそう解釈すべきだといいましたが,LL社がどう考えているかわかりません。)。日本の「出資の受け入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資等取締法)でも,金利を与える行為ではなく,預金を受ける行為を禁止しています。

次に,これでは,個人間の取引を対象とするようにも読めてしまいますが,個人間の取引は,上記の規制目的からいって対象としていないと見るべきでしょう。だとしたら,出資等取締法のように「業として」,「不特定かつ多数の者からの金銭の受け入れ」(同2条)を禁止するとすべきでしょう。

最後に,この文章を形式的に当てはめると,配当権のある株式や出資持分などの募集行為も含んでしまうようにも読めます。これを規制する趣旨なら上記のままでもいいのですが,これを規制しないのなら,明確な定義規定を置くべきでしょう。出資等取締法では,禁止対象を投資一般ではなく,「預金,社債」等に限定しています。

それに余計な修飾語は省くべきです。アバター間の直接のやり取りも禁止しないと意味がないので,多分"from any object"は不要でしょう。

"without proof of an applicable government registration statement or financial institution charter"とありますが,何についての政府の認可又は免許なのでしょうか?ここも曖昧です。リンデンドルによる預金というなら,そういう仮想通貨を銀行業の対象としている国は,そんなにあるとは考えられませんから(あるんでしょうか?),ここは,リアルの預金を受ける行為についての認可又は免許を受けていることをいうのでしょうね。しかし,現実通貨の預金を受けることが政府に許されている=リンデンドルによる預金を受けることが政府に許されている,ということではないのですから,ここはおかしい感じがします。LL社が,エントロピア・ユニバースみたいに,財務内容等一定の要件のもとに,セカンドライフ内銀行の免許を与えてもよかったんじゃないかと思います。ただ,見方によれば,すべてのリアルの銀行に対し,セカンドライフ内でリンデンドルで預金を集めてもよいという許可を包括的にLL社が与えたという見方も可能かもしれません。

そのほか,いきなり全面禁止ってどうよ?という手続の問題も書きたかったのですが,文章が長くなってしまったので,次の機会に。

2008年1月9日水曜日

リンデンラボ社はセカンドライフ内銀行を原則禁止

1 はじめに

リンデンラボ社(LL社)は,公式ブログで,セカンドライフ内において銀行業務を実質的に禁止する方針を発表しました。

公式ブログの記事

翻訳サイトの翻訳

2 銀行規制の内容

今回の規制の内容は,要約すると,

① セカンドライフ内において,利息又は直接的な利益を申し出て,投資(リンデンドルであるか,リアル通貨であるかを問わず)を受け取る行為は原則として禁止される。

② 上記規制は,2007年1月22日から施行される。

③ 政府の権限ある機関から適法に認可された銀行が行う場合は許される。

ということになるかと思います。

①は,利息を与える行為自体は,何ら害はないのですから,利息を与えることを約束して,投資を受ける行為が禁止されていると解釈すべきです。

問題は,友人から金を借りるなどの個人間で行う取引でも禁止されるかどうかです。今回の規制が銀行を直接の対象としていることからすると,業として行う場合だけが規制の対象となっているように思えるのですが,文章上は明確ではありません(英語力自信なしw)。「不特定多数から」預金を集めるとか,「業として」とかいう文章にしたらいいのにね。

③の例外として,ほかに,インワールドで金銭の授受をしないで,マーケティングや教育活動を行うだけの場合は除外と書いてありますが,それが規制の対象とならないのは当たり前と思いますので,要約からは省きました。

3 銀行規制の趣旨

LL社は,昨年8月の「Ginko Financial」破綻以降,「銀行」による不履行に関する苦情を数件受理してきたことを踏まえ,高利率をうたい文句にして,預金者を食い物にする詐欺的な銀行を放置したら,バーチャル経済の不安定化につながることから,今回の規制に踏み切ったと説明しています。

全面禁止でなくて,何らかの監督権限を及ぼしたらどうかということについてはKnowledge BaseにFAQがあるのですが,それをみると次のようにあります。

Why not “virtually regulate” these “banks,” instead of banning them?

Linden Lab can’t and won’t become a virtual “banking regulator.” Banking regulation ? whether in the “real” or “virtual” world ? is complex and intensive, and is a government activity. Linden Lab is not empowered to regulate the businesses of banking or securities. We can and will take steps, however, to ensure the stability of the Second Life economy, and that is what we are doing.

平たく言うと,「銀行を監督するなんて,そんな政府がやるような複雑で専門的なことやってられませんって」ということでしょうか。TOS上は,LL社が,そういう権限を持つことも可能な気がしますが,もちろんインワールドに限ってですけど・・・

GINKO破綻のときに,わたしのブログ記事で,セカンドライフ内銀行への監督の必要性を強調しましたが,こんなに遅く,しかも,こういう形で(全面禁止)規制がされるとは,ちょっと驚きです。

それにしても,昔のフィリップの発言

Philip Linden: I would note that there is a lot of transparency around projects like Ginko.「GINKOのようなプロジェクトの周りには,多くの透明性がある」

この言葉が耳について離れません。まあ,わたしもよく物を忘れますが。

4 規制実施の影響とLL社の対策

LL社は,セカンドライフ内「銀行」のバーチャルATMなどのオブジェクトを2008年1月22日以降全て削除することになるとして,その施行日までの間に,「銀行」の運営者に預金の払戻しに応じるよう勧告しています。もし,施行日以降も銀行業務が行われている場合は,アカウントの停止,剥奪,土地の没収などの制裁措置が取られると警告しています。

しかし,ロイターの記事にあるとおり,リアルの銀行が預金者全員に一度に預金を返済するような資金を準備しているわけではないように,ましてやセカンドライフ内銀行は,おそらく十分な返済資金を持っていない銀行が多いと思われます。

また,本当に詐欺的な業者は,この規制を受けて,資金をいち早くセカンドライフ外に持ち出そうという動きをみせるものと思われます。

ですから,かなりの預金者が預金の払戻しを受けられないまま放置されるという事態が起こる可能性が高いと思います。

これについてのLL社の措置ですが,Knowledge Baseをみると,それら被害を受けた預金者が,「銀行」の経営者を相手として民事上の訴えを起こしたり,刑事処罰を求めたりする場合に,司法当局などに記録を提出するなどして協力するとしています(そんなの当たり前だって・・・思わずツッコミ)。しかし,それら業者の資産を凍結したり,LL社としてそれ以上の補償をすることは考えていないようです。

5 もっと根本的な問題

今度の措置による経済的な影響は,ギャンブル禁止以上のものがあると予想します。

わたしとしては,この規制がどういう法的根拠で実施されるかということが気になります(TOSの改正をするのだろうと思いますが,LL社のやることは不明朗です。)。また,個人間の取引や株式などほかの経済取引を対象にしないことなど,規制の内容をもっと明確にしてもらいたいと希望します。

ただ,前にもいいましたが,もっともっと奥にある根本的な問題を意識します。

LL社が,わたしたちの経済活動や生活に重大な影響のある決断を,ある日突然,何の相談もなくして行ったとして,わたしたちは,唯々諾々と従わなければならないのでしょうか?

それが結果として適切ならば,いいのでしょうか?

これがいやなら,セカンドライフをやめればいいのでしょうか?

たくさんの友だちができたり,たくさんのリアルマネーを投下して商売をしたりしているのに?

ここにたしかに一つの社会が形成されつつありますが,わたしたちは,その社会システムの形成に影響力を及ぼすことはできないのでしょうか?

ひとりひとりの心の中に生じた疑念が,いつか大きな力となるような予感がします。

2008年1月8日火曜日

仮想世界の法とかもろもろ(補足)

前回,前々回の記事を書いて,少しその前提を説明しておいたほうがよかったり,少し言葉足らずだったりしたところがありますので,補足させていただきます。

1 仮想世界の法について

仮想世界内の出来事であっても,実体は,生身の人間同士の社会関係でありますから,必ずどこかの国の法律が適用されることは間違いありません。じゃあ,どこの法律なんだという質問をされるかもしれませんが,これは多国籍な人が交流する仮想世界においては,そう単純な話ではありません。

いまの世界には,統一世界政府も統一世界法もありませんから,世界の各国が,各自の主権に基づいて,それぞれに立法し,それぞれに法を適用している状態であることはご承知のとおりです。国際的な私人同士の紛争をどう扱うかについても,この状況は変わりません。

まず,どこの裁判所で裁判するかという問題(国際裁判管轄の問題)があります。これについても,条約とかはないので,各国が各国の法律や考えに従って,取り扱う事件を決めています。だから,ある紛争が,A国の裁判所でも,B国の裁判所でも係属し,その判断が矛盾することもあります(国際二重起訴)。

次に,管轄裁判所が決まったとして,その裁判所が,どの国の法律を適用するか(準拠法の問題)についても,各国が各国の法律に基づいて,適用法律を決めており(必ずしも当該法廷地の法律が適用されるわけではありません。),これについても世界的に統一された条約のようなものはありません(ハーグ国際私法会議で部分的にいくつかの条約はできていますが)。

したがって,A国の人とB国の人の間で生じた紛争は,A国の裁判所で,A国又はB国又は別の国の法律により判断されるか,B国の裁判所でA国又はB国又は別の国の法律により判断されるか,いろいろあり得ます。これを各国がバラバラに(ある程度の共通項はありますが)決めているのです。

こんなことでは,安心して企業活動ができませんよね。そのため,LL社でもそうですが,グーグルなど世界的なサービス活動をしている企業が顧客と締結する約款(規約)には,必ずといっていいほど,管轄裁判所,適用法についての合意条項が入っています。これは重要な意味があるのです。

だから,セカンドライフで外国人相手に,SIMのレンタルや仮想土地の売買など大きな商売をするのであれば,covenant(規約)などに,少なくとも管轄裁判所の合意(自分の近くの裁判所が合理的です。),準拠法(日本人なら日本法にすることが多いはずです。カリフォルニア法?自信があるならどうぞ。)の定めを置くことをお勧めします。そのほか,どんな当たり前のことでも,争いが生じそうなことはなるべく契約条項に入れておいた方がよいです。

日本人限定の商売なら,そこまで気を遣わなくてよいかもしれませんが,日本語を使用していたからって,その人が日本国籍とは言い切れませんので,安心はできません。


2 セカンドライフ内の仮想土地の所有権について

セカンドライフ内の仮想土地の所有権という言葉を注釈なしに使いましたが,仮想土地の所有権といっても,これはLL社に対して,仮想空間の一定の部分をある程度の自由度で利用できる権利であって,要するにサーバーの利用権にすぎません。LL社から直接に利用権を設定された人を所有権者といってよいかもしれません。

これに対し,仮想土地の賃借権等の使用権ですが,これは,そのようにLL社から利用権を受けた人からの,利用権の又貸しに過ぎません。もともとの利用権(仮想所有権)が親亀なら,その上に乗っている子亀のような関係にあり,もとの仮想所有権者が権利を失ったら,使用権も消滅する関係にあります(親亀がこけたら子亀もこける)。

そうすると,プライベートSIMの土地の売買は,SIM全体の譲渡を受けない限り,SIMオーナーの仮想所有権の上に乗っかっただけのものにすぎませんので,これを所有権と表現するのはおかしいと思います。せいぜい無期限使用権というほうが間違いないと思います。

3 プライベートSIMの二重売買の危険について

メインランドの土地は,代金支払と同時に所有権が移転されるシステムをとっており,これが紛争予防に役立つことは前に述べました。しかし,プライベートSIMの売買(SIM自体の売買を指します。)には,このシステムは取られておらず,LL社は,前所有者と新所有者の共同申請によってSIM移転の手続を行うが,当事者間の代金の授受には一切関与しないシステムになっています。

そのため,代金を支払ったのに,SIMが譲渡されないとか,逆に,SIMを譲渡したのに,代金を支払ってくれないとかが生じ得ますし,それをシステム上回避できないのです。もちろん二重譲渡の危険もあり,そういう事件も起こったようです。

これを回避しようと思ったら,エスクローサービスなどを利用するしかありません。

これについても,こうした危険を避けるシステムを作ることは,多少手間ですが,可能だと思います。それをしていないのは,LL社がプライベートSIMの譲渡流通がそう多いとは考えていなかったからかもしれません。これも文句があれば,ガンガン言えばいいと思います。

2008年1月6日日曜日

仮想世界のシステムと規制

前に,仮想世界は,一旦紛争が生じると,リアルの法に従った処理が困難であるため(決して法適用がないわけではないですよ。),紛争予防が重要であるという記事を書きました。

しかし,仮想世界には,リアルと異なった良い点もあります(良いといえないかもしれませんが・・・)。それは,システムによる規制が容易であることです。ローレンス・レッシグは,「CODE」の中で,ネット社会におけるアーキテクチャ(コード)の規制に着目することの重要性を指摘しましたが,ネットの中に生まれた仮想世界は,まさにシステム(アーキテクチャ)による規制が大きな力を持っています。

リアルだと,どんなに警察が頑張っても,窃盗を無くすることはできませんが,セカンドライフにおいては,人の物を奪うことはできません(コピーは別ですよ。)。これは,そういう風にシステムが設計されているからです。ですから,リアルと異なり,窃盗を処罰する必要がありません。これは当たり前のように思うかもしれませんが,人の物を奪うことが可能なように設計されているゲームもあります(ウルティマオンラインなど,これはこれで面白いですがw)。

リアルだと,いきなり変な人にからまれて,暴力を受けるという危険がありますが,セカンドライフでは,ダメージ許可エリアでしか,アバターにダメージを与えることができません。したがって,そういうエリアに入らなければ(ほとんどの地域がダメージ不許可ですよね?),不当に攻撃されるおそれはありません。ですから,アバターを攻撃するという行為は,もっぱら嫌がらせ的な意味しかありません。これは,もっと徹底するなら,およそアバターにダメージを与えることができないという設計にしてしまうことも考えられ,実際にそういう仮想世界も存在します。しかし,そういうことをすると,戦争ごっこや斬り合いなどができなくてつまらないですよね。だから,ダメージ許可もできるようにしたのだと思います。この当たり,セカンドライフは基本的にゲームなんだなあと思うところです(もちろん,そこが好きなんですよ。)。

リアルだと,土地を人に賃貸して,賃借人が賃料を滞納して,任意に退去してもらえない場合には,どうしても裁判手続が必要ですが,セカンドライフのプライベートSIMのレンタルだとどうですか?滞納した賃借人がいたら,ポチッとクリックすれば,一気に土地から追い出すことが可能です。単に賃借人が気にくわないという理由だって,追い出すこと自体は,システム的には容易です(それが正しいかどうかは別として)。これは,SIMオーナーに,絶対的な権利を付与するように設計してあるからです。いわば王国の王というわけですね。実際に,ロールプレイでそのように振る舞うこともできます(国民が逃げ出さなければw)。

リアルだと,例えば日本では,賃借人の権利は,借地借家法などで守られています。建物の賃貸借,建物所有を目的とする土地の賃貸借など,一定の要件を備えれば,仮に,賃貸人が不動産の所有権を譲渡しても,新所有者に賃借権を主張できます。これと同じことを,システム的に採用することも可能です。例えば,プライベートSIMのオーナーが交代した場合において,前の所有者が承認した賃借期間については,新オーナーは,賃借人を退去させることができないという風にシステム設計することも可能です。しかし,現状は,システム的には,そうはなっていません。そもそも観念上,賃貸借という合意ができても,システム的には土地の賃貸借という設定ができません。そのため,実際は賃貸借なのに,仮想土地の所有権を譲渡し,退去時に仮想土地の所有権を返却するということが行われています。

プライベートSIMの土地の一部の譲渡というのは,システム的にはレンタルと全く変わりません。所有とかいっても,いざとなったら,SIMオーナーによってどうとでもなるのです(ちょっと言い過ぎかも)。

これらのシステムを決めているのは,何でしょうか?一つには技術的な問題があります。あまり複雑なシステムは,コスト的にも大変ですし,ユーザーも使いこなせないでしょう。もう一つは,価値判断があります。賃借人の保護はその程度でよい(少なくともシステム的には),といった価値判断です。

では,誰がそういった価値判断をしているのでしょう。リアルでは,多くの民主国家では,わたしたち自身が,その代表を通じて法や社会制度を決めています(代表民主制の機能に疑問があるとしても,少なくとも建前的にはそうです。)。仮想世界では,誰が決めているのでしょう?もちろん,仮想世界を運営する会社です。ユーザーはシステムが嫌なら利用しなければよいというのです。その意味で運営会社も市場によるコントロールを受けるということがいえます。だって,お客が不満持って,よそにいったら,大変でしょう。ある程度は,運営会社もユーザーの意見を聞く(少なくとも聞くふりをする)必要が出てくるわけです。民主制は無理でも(だってそんなこと運営会社がするわけないでしょう。),啓蒙君主にはならないといけないわけです。そういう意味からすると,ユーザーが文句をいうことは大事だと思います。例えば,セカンドライフの歴史で,プリム税が廃止されたのには,ユーザーの反対運動が大きかったようです(セカンドライフ公式ガイドでは,このことを「革命」のように書いていますが,社会システムがプリム税以前と変わっていないことはご承知のとおり。LL社がプリム税を廃止したのは,そのほうがユーザーを獲得できるというビジネス判断だと思います。)。

紛争予防ということでシステムを捉えましたが,運営会社側が,紛争解決システムを提供することも可能です。例えば,個人オークションサイトのイーベイでは,紛争処理にスクエア・トレードによるADRのサービスを利用できるようにしています。セカンドライフだって,LL社自身がADR組織と提携して,そういうサービスを提供することは可能です。そのようにしていないのは,LL社が,その必要がないと判断しているからにほかならないわけで,その判断にユーザーが影響を与えることも可能です。

2008年1月5日土曜日

詐欺業者との取引で得たリンデンドルの没収の問題点

前回,LL社がリンデンドル換金業者との取引への警告をしたことを取り上げました。LL社は,詐欺業者との取引で得たリンデンドルを返納してもらうと警告していましたが,その根拠について疑問になったので,調べてみました。

1 規約上の根拠

まずは,利用規約(TOS)上の根拠について調べてみました。

TOS,1-5の最後の方に次のような文章があります。
"Linden Lab may halt, suspend, discontinue, or reverse any Currency Exchange transaction (whether proposed, pending or past) in cases of actual or suspected fraud, violations of other laws or regulations, or deliberate disruptions to or interference with the Service."
「Linden Labは、詐欺の事実または嫌疑、他の関係法令の違反、故意によるサービスの妨害または干渉がある場合に、あらゆる通貨両替取引を (申し入れ後、成立前、成立後に関わらず) 停止または中断、中止、破棄することができます。」

(翻訳は,インワールドヘルプから引用しました。翻訳されているのは,古い規約ですが,該当箇所は変更されていないようなので,そのまま使用させていだたいております。早く現行規約を翻訳してよ!ヒトリゴト)

しかし,上記の規約からは,詐欺などの違法取引を無効として(要するに無かったことにして)として,リンデンドルを(元の売り主に)返納させることができるというだけで,詐欺業者から得たリンデンドルをLL社に没収することまで読み込むことは無理なように思います。

2 没収の根拠

没収の根拠は,意外なところに書かれてありました。LL社は2007年の9月にSecondLifeGrid.netというのを立ち上げましたが,そのサイトのProgramsというページのAPIというところに,「Exchange Risk API」の説明が載っています。そこに没収のことが書いてありました。

ここに書いてあることを要約すると,次のようになると思います。もし,間違っていたら,ご指摘下さい。


① リンデンドルの売り手が詐欺又はTOS違反の行為によってリンデンドルを得ていたと,LL社が判断した場合

② その売り手から,LindeX以外の方法によって,リンデンドルを購入した買い手を

③ 詐欺又は規約違反行為の共犯者とみなす。

④ その買い手の持っているアカウント(altを含む。)から,取得したリンデンドルの150%を減じることができる。(平たくいえば,元金を没収される上に,50%の罰金を取られる理屈です。)

⑤ 継続的に購入していた場合は,その買い手のアカウントの停止又は剥奪があり得る。

⑥ LL社は,安全に換金したい業者には,LL社の提供するExchange Risk APIの利用を勧めており,このAPIが安全だと認めた取引については,上記のpolicyが適用されない。

3 問題点

これについて,いくつか気になることがありました。ていうか,突っ込みどころ満載?

① ユーザーがLL社の措置に従うべき法律上の根拠

このpolicyは,先に述べたTOS以上のことが書かれているように思います。
(だって,150%没収なんてTOSのどこに書いてるの?)

TOSは,この記載を引用していないようです。私たちは,規約と,規約が引用しているコミュニティスタンダードに同意することを条件として,セカンドライフが利用できるようになっていますが,上記のpolicyには同意した覚えがありません。(そうですよね?まさか,どっかに書いてあった?それにこんなわかりにくいところに書いてあるなんて,知らない人のほうが多いんじゃない?)

規約は,それが利用契約の一部となっているから,拘束されるわけです。「契約は守らなければならない」というローマ法以来の原則によって。

じゃあ,このpolicyにどうして従わなければならないんでしょう?契約法的正当性を認めるのは困難と思われます。

② それ自体に合理性があるかどうか

詐欺業者から購入した場合,故意過失を問わず,共犯者とみなすことは乱暴ではないでしょうか。しかも,事前の告知も,事後の弁解も保障されているようには思えません。

おそらく,これを合理的に解釈すると,一旦は,外形的事実から,共犯者とみなして処置するが,後にユーザー側が故意過失がなかったと立証した場合は,返金されるということかもしれません。そうではないと,適法性を認めるのは困難と思われます。しかし,そんなこと立証するのは難しいでしょうね。しかも,どういう手続で?

LindeXを通じて購入した場合は,仮に,売り手のリンデンドルが犯罪的な手段で取得されていても,免責されるのはどういうわけでしょう。まあ,共犯者の推定を及ぼすことができないからだと思います。Exchange Risk APIが安全だと認めた取引についても,同様に推定が及ばないからでしょう。

それに,詐欺業者だって,全てのリンデンドルを違法に取得したものとは限りません。全部没収したうえに50%罰金を科するのは適当でしょうか。おそらく違法なリンデンドルと合法的なリンデンドルを区別するのが面倒だからでしょうが,それってLL社の都合じゃない?

4 根本的な問題,そして最も重要な問題

わたしは,詐欺業者を擁護しているわけではないですよ。でも,取引相手が詐欺業者だなんて,本当に分かる?知らないで,取引する危険は誰でもあるのです。だからといって,150%も没収されるってどうよ。そんなこと入会するときに聞いてないって。反論しようとしても,どうやって?ADR使えって,マジですか?

そこで,根本的な問題に行き当たります。これが最も重要かもしれませんし,ひょっとしたら,セカンドライフだけの問題じゃないかも?

LL社が仮に不合理又は違法な振る舞いをしたとしても,わたしたちは,これに対抗することが困難であるということ(法律的に保障されていても,実行が困難ということ),上記はその1例にすぎないということです。

これについては,これだけの問題に留まらないので,いつか項を改めて論じたいと思います。


追記

ロイターの記事によれば,Lewis PR(LL社の公式PR会社?)のPeter Grayの発言として,150%ペナルティのpolicyは,主として換金業者を対象にしたもので,すべての買い手に包括的に適用されるものではなく,ケースバイケースで判断されるとしています。

公式ブログの記事を素直に読むと,一般のユーザーから当然に没収されるような書きぶりになっていたのにどういうことでしょう。まあ,ロイターの記事は,LL社の発言ではありませんし,もし,限定適用するなら,権限のある人が公式ブログで説明して,TOSもきちんと整理すべきでしょう。

LL社には,法律顧問(当然しっかりとした人がいますよねえ?)と相談して,早急にTOSを整備することをお勧めしたいと思います。

2008年1月3日木曜日

リンデンドル換金業者との取引への警告

LL社は,新年早々,公式ブログにおいて,リンデンドル換金業者との取引について,注意を呼びかける記事を投稿しました。

公式ブログの記事

これについては,翻訳が掲載されているので(翻訳プロジェクトの方々,本当にご苦労様です。),参考にしてください。

(なお,上記の記事に,LL社は,ユーザーから詐欺業者との取引で得たリンデンドルを当然に没収できるような記載がありますが,没収できる場合を限定して理解する必要があるように思います。)

前々回のブログで,紛争予防のことを強調しておきましたが,紛争予防は,仮想世界内だけで完結することではありません。仮想世界内の通貨を,仮想世界外で取引するときもリスク管理は必要です。

正直,わたしもセカンドライフやゲーム関連のことではありませんが,怪しげなサイトに引っかかってしまった経験があります。その自戒をこめて,その経験から,強調しておきたいことは次のようなことです。

1 多少高くても,信頼できる業者と取引をすること,逆に言えば,安すぎるのは何かあると考えること

2 友人や知人が利用したことがあるからといって,信用してはいけない。

上記のうち,2は特に強調したいと思います。詐欺業者は,最初は安値の取引をうたって,いわばエサをまくのではないかと思います。ある程度口コミの評判が広がってから,本性を現すと思われます。だから,友人が取り引きしたことがあるからといって,必ずしも信用してはいけないわけです。どうも,私たちは,「友人がやっている」,「友人から紹介を受けた」などといったものに,警戒が甘くなるように思います。

最後に付け加えたいのは,前にも言いましたが,リアルの通貨を仮想通貨にすること自体リスクがあることです。仮想世界内で自分が使う以上の金は,リアルで保管しておくのが安全です。