2009年1月4日日曜日

年頭の挨拶

新年おめでとうございます。

去年は,リアル多忙のため,ほとんど更新することができませんでした。
今年は,少し余裕が出るといいなあと思っています。
このブログでは,時間ができたら,電子マネーの問題とか,仮想世界内のデジタル資産の問題とかを取り上げていくつもりです。

リアルの不景気が仮想世界にも影響しているようですが,実体経済の低落よりも,
人々の意欲の低落のほうが問題ではないかなと思っています。

今年もよろしくお願い申し上げます。

2008年11月24日月曜日

電子マネーについての法規制とリンデンドル

1 電子マネーに対する法規制の動向

かなり前に,電子マネーについて,利用者保護のために金融庁が「電子マネー法」(仮称)の制定を目指して作業中であると報道されたことがありました。このときの報道によれば,2008年中の制定を目指すということでした。もう12月になろうとしていますが,とても法案化までは無理そうですね。まあ,重要法案の審議もままならない昨今の政治状況では,仕方ないでしょう。

これについては,現在も金融庁の金融審議会の第二部会-決済に関するワーキング・グループで議論中のようです。最近の議論の様子は,金融庁のウェブサイトで確認することができますが,法案化までは,すこし時間がかかりそうな感じがします。

2 現在行われている議論

現在,金融審議会で行われいる議論は,おそらく金融庁のサイトに論点の整理(再)という資料がありますが,これのとおりだろうと思います。

わかりやすく言うと,次のとおりです。

発行者があらかじめ利用者から資金を受け取り,前払式支払手段が発行される場合で,紙・ICチップ等の有体物にその価値が記録されるもの(EdyやSuicaなどが代表的ですね。)には,「前払式証票の規制等に関する法律」(前払式証票規制法)による規制があります。

同法によって,未使用発行残高の2分の1以上の金額について,供託又は金融機関等の保証が必要(供託等の義務)とされ,これによって利用者の保護が図られています。

しかし,電子マネーの中には,利用者が保有する物には価値が記録されておらず,サーバに記録され,通信回線を介してサーバにアクセスし,利用するもの(サーバ型前払式支払手段)については同法の適用がないと解釈されています。

そこで,このままでは,利用者の保護に欠けるので,そうしたサーバ型の電子マネーについても,同様の規制を及ぼすべきかどうかというのがここでの議論の中心です。

同審議会では,それだけでなく,①いわゆるポイント・サービスについての利用者の保護をどう考えるか,②現在,銀行のみが行うことができるとされている為替取引について,銀行以外の事業者による資金移動サービスを認めるかどうかどうか,などの問題も議論されているようです。これらの議論も大いに注目されます。

方向性としては,こうした電子マネーについても,未使用発行残高の一定割合について供託等の義務を課すなどして,利用者の保護を図るということになるものと思われます。電子マネーの大手事業者が破綻した例はまだあまりないようですが,電子マネーの利用が拡大しつつありますので,やはり立法が必要だと思います。


3 リンデンドルに対する法規制

さて,セカンドライフ内で使用されているリンデンドルも,現実の通貨でリンデンドルを購入し,これと交換することによって,LL社からサービスを受けることができるので,電子マネーであることに変わりないと思います。また,利用者相互でも流通しており,資金移動手段としても利用可能です。

しかし,さきほどの電子マネー法がどうなるにせよ,これは国内法なので,外国の事業者であるLL社を規制対象にするかどうかは微妙です。法案ができてみないと何ともいえないのですが,国内に営業所がなければ,外国の事業者には規制は及ぼさない感じがします。

そこで,これについては,LL社が本店を置く,カリフォルニア州での規制がどうなっているかが問題です。

電子マネーについての欧米の法規制の動向については,流通科学大学の片木進教授の論文がくわしいようです。

これによれば,アメリカでは,グリーンスパンFRB議長が電子マネーの規制に消極的な見解を示したことから,連邦レベルでは目立った規制の動きはないようですが(オバマ政権では変わるかもしれません。),各州政府が,消費者保護,マネーロンダリング防止等の観点から規制に向けて動いているようです。

わたしは,カリフォルニア州の法律制度のことは,ほとんど知りませんが,リンデンドルがこうした規制を受けることになるのかどうか,今後とも注目していきたいと思います。

なお,以前にも書きましたが,現状では,消費者としては自己防衛しかないと思います。世界的な金融恐慌がLL社に影響を及ぼしているという情報はありませんが,為替リスクもありますので,使う当てのないリンデンドルは現実通貨に換金しておくことをお勧めします。

2008年10月25日土曜日

生存確認

気が付いたら,前回のブログから5ヶ月以上も経過してました。とてもリアルライフが忙しすぎて,セカンドライフどころではありませんでした。それにしても,実世界も仮想世界も不景気な話が多くてウツになりますねぇ。

検索しても,セカンドライフ関連の記事があまりヒットしなくなったような気がします。あ,このブログのリンクも整理しなくちゃ。

具体的にデータを見てみましょう。

2008年10月24日の統計によれば,セカンドライフの総ユニークユーザー数は,1,558万9,645となっているようです。これは2007年末のユーザー数1,170万4,934に比べると,約33%増加してはいますが,2007年5月のみずほコーポレート銀行のレポートでは,2008年末までに2億5000万人に達するという試算もされていたこと(w)を考えると,頭打ち感の漂う数字となっています。有料のプレミアム会員数に限定すると2007年末の約9万3000人をピークとして,横ばい又はじりじりと数を減らし,2008年8月末のプレミアム会員数は約8万5000人となっています。

ユーザーの総利用時間数でみてみると,ユーザー全体で約3463万時間で,日本人ユーザーでは約210万時間となっています(以上,2008年8月の統計)。それまでの数字と比較すると微増傾向となっていますので,決してアクティブユーザーが減っているわけではないようです。おそらく,去年のような爆発的な増大はなく,増加の伸びは止まりつつありますが,安定的な状態といってよいかもしれません。

ただ,マスコミの取り上げ方は,確実に変わりました。リアル企業の参入などという記事はあまり見かけなくなった気がします。また,「セカンドライフで金儲け」みたいな記事もあまり見かけなくなりました。セカンドライフについては,3Dアバターを利用したコミュニケーションツールとしての側面のみが残ったという感じがします。まあ,虚飾がはがれ落ち,本質的な物のみが残ったという感じでしょうか。

わたしは,この世界であまり経済活動をしていない,「まったり」系のユーザーだと思いますが,リアルが忙しくてアクセス時間は減ったものの,相変わらずの「セカンドライフ」を楽しんでいます。自由度がありすぎるのが,セカンドライフの問題点だといった人もいますが,わたしにとって,自由なのがセカンドライフのいいところだと思います。リアルがとても慌ただしいので,仮想世界にいるとき位,何かに縛られずに,のんびりしたいと思います。

以前,普通のMMORPGをしていましたが,単調なレベル上げがあったり,パーティを組むのに時間がかかったり,モンスター狩りやクエストに長時間拘束されたりとか,疲れました。

ただ,そうはいっても,セカンドライフにやや飽きが来ているのも事実で,それはどこにあるか自分なりに分析すると,やはり「バトル」をやりたい自分がいるのです(オイオイw)。セカンドライフでも,銃器を使って遊んでいるグループもありますし,ロールプレイをやっているシムもあります。そういうところへ行って遊んだこともあるのですが,少人数のグループでやっているだけなので,規模が限定されているのが不満です。リンデンラボ社は,メインランドを活性化するために,土地を造成しているようですが,それよりも一大バトルシムを造ってほしいように思います。

セカンドライフをやるようになってから,仮想世界ものというジャンルの小説やコミックを読むようになったのですが,ニール・スティーヴンスンの小説「スノウ・クラッシュ」 (ハヤカワ文庫SF) (多分もう古本屋でしか売ってないと思います。)でも,篠房六郎の漫画「空談師」(アフタヌーンKC),「ナツノクモ」(IKKI COMICS)でも,アバター間のバトルがなかったら,面白い話にできなかったはずです。

え?ほかのゲームやりなさいって?はい,おとなしくそうします。

個人的に注目しているのは,Diablo3(公式サイト)ですね。時々情報をチェックしてますが,発売されるのはかなり先になりそうです。やはり敵をバキバキ倒すとかテンポのいいものが好きですね。そういえば,韓国NCsoftの「ブレード&ソウル(Blade&Soul)」(公式サイト)のムービーを見ましたが,屋根の上らしきところをビョンビョンと飛び移っているシーンを見て驚きました。ムービーだけじゃなくて,実際のプレイでもこれだけのスピード感があれば,面白いでしょうね。これも注目しています。

最後に今日の一言
「ゲームは発売される前が一番面白そうに見える。」

2008年5月18日日曜日

トレードマークの使用に関する新しいTOS(3)

前回の記事から時間がたってしまいましたが,トレードマークのことについて,引き続いて取り上げていきたいと思います。


9 TOSによる契約上の拘束力

前回まで,商標についての法律上の効力について説明しましたが,これとは別に,TOSに同意したことから,これに従うべき契約上の義務が発生しています。こうした利用契約は,附合契約(契約において、一方的当事者の作成した契約条件に対して、契約するか、契約しないかの自由しかない契約)というもので,その効力については,古くから議論されてきたものです。大雑把にいって,今日では,契約自由の原則に照らして,基本的には拘束力を認めつつ,消費者保護等の観点から,効力に制限を設けていくという観点で処理されているようです。昔のTOSにあった仲裁条項について,非良心的として無効とした連邦地裁の判決がありましたが,これも,そういう観点からの判断といえます。

このTOSが日本法の枠内で議論されることは少ないかもしれませんが,日本法が適用される場合には,消費者契約法のほか,民法の一般条項(権利濫用,信義誠実の原則など)に照らして,その拘束力の範囲が制限される可能性もあります。

そうした制約があるとしても,一応,TOSに同意したことによって,基本的な契約上の義務が生じているという前提で,以下,説明していきたいと思います。

まず,トレードマークに関するTOSの効力が及ぶ範囲ですが,セカンドライフ内での活動全般,例えば,オブジェクトの名称,バーチャル広告,グループ名,アバター名などにこれが適用されることは明らかで,TOSに違反して,トレードマークを使用すると,その違反の程度によっては,該当オブジェクトの除去,グループの消去などの処分がされる可能性があり,重大な違反については,他のTOS違反と同様にアカウントの停止や剥奪などの処分がされる可能性があります。

問題は,この拘束力がセカンドライフ外の活動にも及ぶかどうかですが,トレードマークの保護の必要性に関しては,セカンドライフの中か外かは関係がないと思われますし,TOS上もセカンドライフ内の活動に限定しておらず,ドメインネームなどについても規制の対象としていることからみて,セカンドライフ外の活動にも及んでいることは明らかだと思います。もっとも,セカンドライフ外の行動に関しては,リンデン側において,実効性のある規制が困難だとは思いますが。

10 ガイドラインの内容

トレードマークのガイドラインについては,このリンクを参照してください。


まず,Unauthorized Uses of Linden Lab's Trademarksとして,基本的にリンデン側からみて許容できないトレードマークの使用例が載っています。

前々回,商標権の侵害について,米国法上は,商品又はサービスの出所,提携関係又は後援関係について混同を生じさせる蓋然性があるかどうかで侵害になるかどうかを決めているということを書きましたが,上記のガイドラインはそうした違反行為をすべてカバーするとともに,商標の識別力を弱まらせる行為(希釈化)をも防止しようとしていることが分かります。

これを読んでいただければ分かると思いますが,禁止例の日本語表記として,「第二の人生 (no Japanese equivalent)」とあるのが笑えます。それでは,「セカンドライフ」はどうかということですが,Japanese equivalent(同意語)として,禁じられてはいると思います。そうであれば,例としては,「セカンドライフ(no Japanese equivalent)」とした方がよかったと思います。なお,「セカンドライフ」は,このリンデンの仮想世界が広まる前から,定年後の第二の人生という意味で使用されることが一般的と思いますが,この意味での使用については,当然のことながら許容されているものと思われます。

リンデンラボは,上記のようにSecond Life®などのトレードマークの使用については,厳格な態度を示す一方,セカンドライフ関連の事業活動を表記するのには,基本的に「SL」または「inSL」という表記を使ってグループ名や事業名などを表示することを認めています。その使用のガイドラインは,このリンクを参照してください。


その解釈ですが,要するにリンデンラボ本体の事業と誤認混同しないようにということ,また,リンデンラボと提携関係や後援関係にあるとの誤認混同も生じないようにとの観点で,ガイドラインが決められているものと思われます。

例1 SL+当該個人又は団体を表示する固有の名称による名称はOK
   Dell SL
   Dell inSL
   はOK
   
例2 SL+2つ以上の一般名詞を組み合わせた名称はOK
   SL Budget Shopping Guide
   Chic Clothing Boutique inSL
   はOK
   
例3 SL+1つの一般名詞を組み合わせた名称はNG
   SL Shopping
   Clothing inSL
   はNG
   
例4 上記によってOKであっても,リンデンラボのサービスなどと誤認混同するおそれがあるような場合はNGとされます。
   SL Land Auctions
   SL Avatar Skin
   SL Avatar Clothing
   SL Source Code
   SL Viewer Software
   はNG

例2がよくて,例3がだめな理由がわかりにくく,例3でも,具体的にリンデンラボの事業と誤認混同するおそれがないなら,いいじゃないかという意見もあるかもしれませんが,例3では,一般的に誤認混同のおそれがあると思ったのかもしれません。

では,SL総合研究所はどうなの?というご意見があるとおもいますが,SL「総合」「研究所」で,SL+2つ以上の一般名詞を組み合わせた名称であり,かつ,リンデンの事業との誤認混同のおそれもないので,たぶん大丈夫だと思います。えっダメ?まあ,マジで「仮想世界研究所」とかにしようかとも思いましたが,めんどうだからいいや。どうせ,こんなブログ,リンデンの人は見てないでしょうしw

今回のTOS変更でブログ名やセカンドライフ内でのグループ名を変更した人も知っていますが,心配ならリンデンに問い合わせてみるのがよいと思います。

11 文章中での使用

自己のサービスや商品などの名称として使用するのではなく,ブログなどの文章中で他人の商標を記述的に使用しても,それ自体は,商標権の侵害になるわけではありません。ただ,この場合も,ブランド名などが正しく使用されないと,ブランドイメージの阻害の問題がありますし,希釈化の問題もあります。

リンデンラボもそのような観点からと思われますが,文章中での使用についてもガイドラインをもうけています。 大文字小文字の別やハイフォンのあるなしなど,できるだけ正確にトレードマークを使用するようにとしています。でも,これ厳格に守るのめんどうですね。まあ,適当でいいか(いいのかw) あんまりうるさいこというなら,もう,セカンドライフのブログなんて,やめようっと

まだまだ,書き足りないことが多いし,勉強不十分なところもありますが,トレードマークのことについては,これでひとまず記事を終えたいと思います。

2008年4月27日日曜日

トレードマークの使用に関する新しいTOS(2)

7 インターネット上での商標の使用と使用の場所

前回,商標権の保護に関する属地主義のことを説明しました。これは,当該商標の使用行為がされた場所の法律を適用するという原則のことをいいます。ところで,インターネット上で商標が使用された場合,どの国で使用されたことになるのかは,従来の枠組みで捉えきれない問題です。当該商標使用者の住所地,サーバーの所在地,顧客たる需要者の所在地などが基準として考えられるところですが,商標権保護の趣旨からみて,顧客たる需要者の所在地が重要な要素になると考えられます。

この問題に関して,商標法の属地性とインターネットの世界性との関係から生じる各国における商標権の抵触問題等を解決するための国際的ガイドラインとして,2001年に開催された,工業所有権保護のためのパリ同盟総会及び世界知的所有権機関(WIPO)一般総会において,「インターネット上の商標及びその他の標識に係る工業所有権の保護に関する共同勧告」(pdf)が採択されました。

これによれば,インターネット上における標識の使用が,ある国における使用と認められるかどうかは,当該国において「商業的効果(commercial effect)」があるかどうかによって判断されるとされています。わかりやくいえば,当該国に所在する顧客に対して商売をしていると認められるかどうかで使用の有無を決めるということで,その判断要素としては,同勧告の3条にいくつか例示されています。

これは勧告ということであり,条約のような強制力はなく,各国の直接の裁判規範にはならないものですが,一般的な考え方として,参考にはなると思われます。

具体的な裁判例としては,有名なものにプレイボーイ対チャックベリー事件の連邦地方裁判所判決があります。これは,被告がイタリアで「Playmen」という名のインターネット・サイトを開いて,米国のユーザーに画像を有料会員制で利用させていることは,米国における頒布となり,米国における商標「Playboy」を侵害したことになるとして,米国内の顧客からのサイトの加入申し込みを受諾してはならないという,ニューヨーク南部連邦地方裁判所の判決です。

日本語でのホームページでの使用は,日本語を使用する顧客は,主として日本国に居住しているという日本語の独自の特色があるので,基本的に日本での使用と認められるように思います。しかし,英語を使用して,世界的に物品販売やサービス提供などをしている場合は,明示的に排除する等の措置をしない限り(例えば,米国居住者には販売しないと明示し,実際にも販売防止措置を施すような場合など),実際に顧客となった人が所在する複数の国で商標を使用したと認められる可能性があります。

8 商用を目的としない個人のブログにおける使用

このサイトのように個人のブログにおける商標の使用はどうなるでしょうか。

仮に,日本国に居住する人を対象とするブログであるとすると(日本語のみで記述されたブログは,サーバーの所在地にかかわらず,基本的にそうだと思います。),日本の商標法に照らして,「使用」の有無が判断されるということになります。
商標法によれば,使用については,同法3条3項に定義があります。これとともに,商標として使用したというためには,同法2条1項で「業として」商品又は役務について使用したといえる必要があるとされています。

これについて,「個人の趣味のホームページで,商標を使用している場合には,原則として,『業として』の使用に該当しないので,商標権を侵害しない。」という見解があります(青木博通著「知的財産としてのブランドとデザイン」189頁,有斐閣)。ただ,青木氏の見解によっても,アフィリエイト広告などによって収益活動を行っている場合は,業としての使用に該当する可能性があるということになるようです。これには異論があるかもしれません。紛らわしい場合は,ブログのタイトルなど,ブログ本体に関連した表示としての使用は回避したほうが安全だと思います。

また,本文中でなにかの記事を書くときに,商標に関する記述が含まれているという程度では,上記の「使用」の概念に含まれていないと思われます。

なお,以上は日本の商標法の話であり,海外の居住者を対象に外国語サイトを開設しているような場合は,相手国の商標法では違う解釈があり得ることを認識すべきです。

★以上は,法律上の話であり,われわれが利用規約(TOS)に合意したことによって,契約上の拘束力が生じる可能性があります。それと,ガイドラインの解釈とか,「SL総合研究所」はどうなの?wとかは,次の機会に記事にしたいと思います。

トレードマークの使用に関する新しいTOS(1)

1 はじめに

3月24日ころ,リンデンラボ社から,トレードマークの使用に関する新しいTOSの告知がされ,これに同意しないとセカンドライフにインできないようになっていました。かなり,遅くなってしまったのですが,少し時間ができたので,その背景について調べてみました。多分,長くなると思うので,いくつかの記事に分けます。

公式ブログの記事

翻訳サイトの記事

2 概要

変更された部分は,TOSの4.4 "Without a written license agreement, Linden Lab does not authorize you to make any use of its trademarks."で,これによれば,リンデンラボの商標について,リンデンラボ社が新しく定めたガイドラインを遵守するように求めています。

ガイドラインについては,上記のリンクから見ていただきたいのですが,要約すると,Second Lifeなどの文字を,自己の営業名,組織名,製品名,サービス名などの一部に使用することを禁じ,セカンドライフ関連の活動を表示するものとしては,SLという文字を所定のガイドラインに基づいて使用することを求めるものとなっています。このガイドラインを理解するために,その背景となる商標のことについて調べてみました。

3 商標とは?

商標とは,そもそも事業者が自己の取り扱う商品について,他人の商品と識別するために,文字,図形,記号等によって標識のようなものをつけたものをいいます。その後,商品だけでなく,役務について使用する標識(サービスマーク)もこれと同様に保護されるようになったものです。他人が,自己の商標を真似た商標を商品に付けることによって,顧客に間違って購入させて,売上げが減少したり,粗悪な模倣品によって信用が害されたりすることを防止するため,商標を登録し,これと同一又は類似の商標を使用することを禁止して,これを保護したのが,現在の登録商標の制度らしいです。

なお,わたしは商標法の専門ではないので,細部は違っているかもしれません。

4 リンデンラボ社の商標

リンデンラボ社のトレードマーク又はサービスマーク(以下,区別しないで,トレードマークといいます。)のうち,ユーザーが使用する可能性の高いものは,Second Life®,SL™といったものだろうと思いますが,ほかにも様々なものがあり,次のリンクからみることができます。

ここで,文字又は記号の後の®,™の意味ですが,このリンクを参照してください。

要するに,®は,連邦商標法(ランハム法 Lanham Act)によって登録されたもので,連邦商標法による保護を受けるものです。™はそれ以外のもので,連邦登録申請中のものもありますが,それだけではなく,州法で登録されたもの,登録予定のないものなど様々です。要は,連邦登録はされていないが,商標としての権利主張をしているよという意味で表示されるもののようです。

5 米国内の効力

まず,連邦登録された商標は,当然のことながら,連邦商標法による保護を受け,これを侵害する行為について差止めや損害賠償の請求ができることになります。米国では,日本の商標権よりも,侵害行為の範囲についてやや広い解釈が取られているようです。米国の判例では,相当多数の顧客又は消費者に商品又はサービスの出所,提携関係又は後援関係について混同を生じさせる蓋然性があるかどうかで侵害になるかどうかを決めているようです。商品やサービスが競合関係になくとも,何らかの提携関係や後援関係を示唆する場合も侵害行為になるとされているようです(「米国商標法・その理論と実務」39頁,創英知的財産研究所著・経済産業調査会刊)。上記のような誤認混同行為のほか,商標の識別力を弱まらせる行為(希釈化)も禁止されているようです。これは,有名な商標(著名商標)について、同種の商品でなくても,他人がいろいろな商品やサービスに使用することにより、その著名商標の機能が弱められてしまうことをいいます。例えば,製菓会社がセカンドライフ・チョコを売るようなものでしょうか。

ところで,こうした法制度を理解する前提として,米国は,連邦国家であり,判例法(コモンロー)を基礎に法律を発達させた国であるので,日本の制度と比べるとそこが違うことに注意しなければなりません。連邦法で登録されていないものであっても(すなわち,トレードマーク表記のもの),州の商標登録制度によって州法によって保護を受けることもあり,また,全く未登録のものでも,コモンローによって保護されることがあります。そもそも,連邦法は,コモンローによる商標の保護を取り込んで制定されたものだそうです。

6 日本での効力

上記の話は,米国内のことで,米国で登録された商標が直ちに日本国内で効力を生じるわけではありません。商標に関しては,属地主義が採用されており,日本国内での商標使用行為が商標権侵害に当たるかどうかは,日本の商標法によって判断され,米国内の使用行為については米国の商標法で判断されることになります。ところで,リンデンラボ社は,日本でも商標登録申請を行っていますが,現時点ではまだ登録されていないようです。

リンデンラボが日本国内で申請している商標は,「SECONDLIFE」だけのようで,下記のほか国際出願もされています。
【出願番号】 商願2007-74489
【出願日】 平成19年(2007)7月2日
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
9 オンライン3Dバーチャル環境へのマルチユーザーアクセスの提供に使用されるソフトウェア,コンピュータ3Dバーチャル環境ソフトウェア
38 オンラインバーチャル環境において使用されるテキストメッセージング及び電子メールサービス等の通信サービス
41 オンライン3Dバーチャル環境の提供,通信ネットワークによってアクセス可能なオンライン3Dバーチャル環境の提供,マルチメディア及び3Dバーチャル環境ソフトウェアの製造サービス

もっとも,未登録の商標でも,全く何の法律上の効果がないわけではなく,広く認識された商標や著名な商標については,不正競争防止法によって,同一又は類似の商標を使用することによって商品又は営業を混同させる行為は禁止されています。

★長くなってしまいましたので,以下は改めて記事にするつもりです。インターネットでの使用がどの国で使用したことになるのか,利用規約に合意したことによる契約法上の効力などについて記事にしたいと思います(時間があれば・・・)

2008年4月23日水曜日

新CEOはMark Kingdon氏に決定














先日,リンデンラボ社の新しいCEOが決まりそうだというロイターのインタビュー記事のことを取り上げたばかりですが,公式ブログで早くも新しいCEOの発表がありました。

公式ブログの記事

新しいCEOはMark Kingdon氏だそうです。同氏は,Organic Inc.で2001年からCEOを務めている人物で,既にご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが,同社のHPに同氏の略歴が載っていますので,興味のある方は見てください。

同氏のセカンドライフ名は,M Lindenだそうで,プロフを検索してみたら,プロフのアバターは暫定的で,これから変わっていくというようなことが書いてありました。

同氏は,5月15日に就任するそうで,その後は,Philipと協力しながら,リンデンラボ社の経営を行っていくことになるようです。Philipがリタイアするわけではなく,CEOといっても,完全に1人に任されているというわけではなさそうなので,やりにくそうなポジションのように見えますが,セカンドライフに新風を吹き込んでもらいたいものです。

新CEOに対する注文としては,日本向けスタッフを充実させていってもらいたいと思います。日本語サイトも今のままでは半端です。しっかり整備してほしいですね。