2007年8月30日木曜日

セカンドライフにID認証システムが導入

重要なニュースが入ってきました。
リンデン・ラボの公式ブログでセカンドライフにID認証システムが導入されることが告知されました。

ID認証はまず本日よりベータ版がSIMオーナーに向けて開始され,その後,正式に導入がされるそうです。

このID認証システムは,従来言われていた年齢認証の意味があるのはもちろんで,これによって18歳以上であるとの証明がない者は,アダルトコンテンツなどが置いてあって,土地所有者が未成年者に不適当として立ち入りを制限した区域には立ち入れないことになります。

しかし,重要なことは,このシステムは,セカンドライフ内での取引の安全の確保も目的としていることです。

前に,インターネットの「匿名性」が仮想世界内での法の適用を困難にしていることをブログで取り上げました。
ID認証システムの導入は,この「匿名性」に制限をかけることを意味します。

リンデン・ラボによれば,このID認証システムの利用は,各人の自由にまかされているということです。
しかし,取引の相手方としては「匿名」な相手方よりも,「ID認証」された相手方が適当であることはいうまでもありません。
もし,SL内銀行のオーナーが「ID認証」されていなかったら,その銀行に多額の金を預けるでしょうか?
したがって,このシステムが導入されたら,SL内銀行のオーナーや証券取引所のオーナーだけでなく,ある程度規模の大きな経済活動をするためには,その資格としてID認証が求められることになりそうです。

リンデンによれば,ID認証によって得られた個人識別情報は,裁判所の命令によって開示されることがあるということですから,もし,訴えたい相手がID認証をしていたなら,今までのようにIPアドレスから相手方を特定して訴訟をするなど面倒なことをしないでも,相手方を特定することができることになります。

リンデン自体は,ID認証によって得られた個人情報を保存しないというのですが,これは社会保障番号などの原データということでしょうね。年齢データがリンデンのデータベースにないと行動の制限をしようがないですから,年齢データは保存されることは間違いないでしょう。ほかの識別情報はどこまで保存されるか不明ですが,コミュニケーションの信頼性を向上させるという目的が上げられていることからすれば,リアルの氏名,住所などは保存されてしかるべきでしょう。あるいは,認証プロバイダのほうに保存されているのかもしれません。このへんはもうちょっと情報を集めてみたいと思います。

免許証番号などで正確な認証ができるのか疑問の声もあり,具体的に手続がどう運用されるのか,プライバシーがきちんと保護されるか心配な面もありますが,正式導入まで引き続き注目していきたいと思います。

2007年8月29日水曜日

仮想世界で生涯の友人や恋人をつくる?

英国のノッティンガム・トレント大学(Nottingham Trent University)は,世界のオンラインゲーマー1,000人を対象した調査の結果を発表しました。回答者のほぼ半数の好きなゲームがWorld of Warcraftだというので,セカンドライフにどの程度当てはまるかはわかりませんが,面白いのでご紹介します。


原文

日本語訳

これによれば,調査対象者の4分の3は仮想世界で親しい友人を作っており、ほぼ半数は現実生活でも会っており,10人に1人は肉体関係に進んでいるということです。

この種の統計は,対象者の選び方,質問の仕方などによって,答えが変わってきますので,話半分に聞いておくくらいが丁度よいと思います。それにしても「10人に1人云々」はちょっと多すぎるような気がします(リアルで会うまでになった人10人のうちの1人ということかもしれませんが。ちょっと原データを見ないと分かりません。)。

しかし,仮想世界の関係がかなりの確率で現実の関係に発展していくことについては,直接的,間接的に経験することからみて,数字の大小はともかく,ある程度は当たっているような気がします。

40%の人が微妙な問題は現実生活の友人よりもオンラインの友人相手に話すほうがいいと答えているのも,面白いと思いました。
面と向かって話せないようなことでも,かえってオンラインだと話せてしまうというようなことがあるのかもしれません。

いずれにしても,仮想世界の人間関係と現実世界の人間関係について,その相互関係とか,両者の関係性の相違などについて,研究するのも面白いかもしれません。いままで仮想世界の社会システムに注目してブログを書いてきましたが,今後は,仮想世界の中での個々の人間の心理,行動様式なんかについても取り上げていこうかなと思います。

2007年8月25日土曜日

仮想世界と法

【1 仮想世界は無法地帯か?】

よくセカンドライフのような仮想世界は無法地帯であるなどということが言われます。しかし,これは厳密な意味では正しくないと思います。
仮想世界のキャラクターを動かしているのが現実世界の生きた人間であり,その人間に現実世界の法律が適用されている以上,仮想世界で生じた様々な紛争も結局は現実世界の人間同士の紛争に還元されます。要するに仮想世界といっても,単に現実の人間同士の,メールやチャットなどと同じような通信手段にすぎません。特徴といえば,メールなどと異なり,同時に(不特定)多数の人との関係が生じ得るということにあるだけでしょう。

では,仮想世界にも法があるはずなのに,一見して無法地帯のように思えるのはどういうわけでしょうか?

最近,セカンドライフ内のいろいろな法律問題を考えるにつれ,仮想世界の問題は,それに特有の新しい問題もありますが,もともとインターネットの世界で生じていた問題が形を変えて現れているものが多いのではないかという考えに行き当たりました。
仮想世界の法の施行を難しくしている要素もそのようなところにあると思います。

【2 匿名性とボーダーレス】

仮想世界の法の施行を難しくしているのには,インターネットの世界の次の2つの特徴が大きく影響していると思います。

 1 匿名性
 2 ボーダーレス(インターネットの世界には国境がない)

次のような事例を考えればわかりやすいでしょう。
セカンドライフ内で,日本人だけで構成しているリアルの素性の判っている人同士のグループがあったとします。このグループ内で争い事が生じて話し合いがつかず,それが法律的な紛争に発展したとしても,日本の裁判所に訴えて法的な解決を求めることができます。

ところが,どうでしょう。もし,相手のリアルの素性が判らなければ,仮に日本人と判っていたところで訴えようがありません。前に,Eros LLCの訴訟の記事で取り上げたように,リンデン・ラボからIPアドレスとタイムスタンプの情報の開示を受けて,さらにインターネットプロバイダーから登録情報の開示を受けて,PCを特定していくほかありません。その大変さについては,いうまでもないでしょう。これが「匿名性」の問題です。
なお,日本の裁判所は,その権力が及ばない国外の法人であるリンデン・ラボに情報開示を求めることはできないので,日本で訴えを起こすことは米国で訴えを起こすよりも困難かもしれません。

仮に,相手のリアルの素性が判ったとしても,外国人であった場合はどうでしょう。どこの国で裁判するかの問題があります。外国で裁判するとなれば,当該国の弁護士に依頼する必要があり,外国で信頼できる弁護士を捜すのが非常に困難な作業であることは言うまでもありません。仮に,日本の裁判所が訴えを受理してくれたとしても,相手の財産が相手国にしかない場合,結局強制執行をしようと思ったら,相手国の裁判手続を利用するほかありません。まあ,たいていの人は裁判を諦めることになるでしょう。これがボーダーレス(国境がない)の問題です。

これらの問題は,仮想世界だけの問題にとどまらず,インターネット世界全体の問題です。もちろん,匿名性の問題についてはプロバイダー法で発信者情報の開示が定められたように各国政府ともインターネット上の権利侵害に対する保護に関して立法上の配慮をしていますし,国際的な私人間の紛争についても,現在国際的な規範に乏しい裁判管轄や準拠法についてハーグ国際私法会議などで各国政府による条約化に向けての動きなどがありますが,インターネット世界の紛争解決のシステムとしてある程度有効なものが確立されるのは,かなり未来のことのようです(それがあるとすればということですが)。

【3 契約による秩序の形成】

現実世界の法が十分機能していないとして,仮想世界に法的な安定性のある社会システムを構築するにはどのようにすればよいのでしょうか?セカンドライフを例にとって考えます。

方法としては,「契約」(ここでは1対1のものだけでなく,集団的な合意も含めています。)による法秩序の形成しかないでしょう。「契約は守られなければならない(pacta sunt servanda)」はローマ法以来の法原則ですが,強制力のある法秩序の形成が困難である以上,合意による秩序を形成するしかないと思います。

住民間の合意による秩序形成

前に,セカンドライフの中でCDSという自治政府を作っているSIMについての記事を書きましたが,こうした動きが住民全体に広がっていき,大きな住民自治組織ができる可能性があります。そして,各住民自治組織の中で,住民の合意によって規範が形成されていくことが考えられます。日本人のグループにも一部そういうことをしているグループがあるようです。こうした規範に厳密な意味での強制力はないですが,規範から逸脱することは,最終的にはその集団から排除されることになるので,その意味での強制力はあるといえます。
問題は,こうした規範が形成されるとしても,当該集団の外の住人には,何らの影響力がないということです。また,同国人など共通の文化・風習を持った人たちのグループなら容易に合意形成も可能だと思いますが,異なった国の人が混在している地域(ほとんどのメインランド)では合意形成が困難なこともあるでしょう。

リンデン・ラボによる秩序形成

ユーザーはセカンドライフのサービスを受けるとき,リンデン・ラボとサービス提供契約を結びます。これによって,利用規約(TOS)及びコミュニティスタンダード(ビッグ シックスとして知られています。)を守る契約上の義務が生じ,これに違反すれば,契約に従って警告,アカウント停止,追放などの処分を受けることになります。これも契約の一種ですが,全ユーザーを対象にするものであり,契約に違反すれば最終的には契約が解除されますので,法秩序の形成としては最も有効と思われます。

迷惑行為は禁止されているのに,現実性のない高利を約束して金を集めることは禁止されていないなど矛盾に感じられる部分もありますが,現在でもリンデン・ラボによって最低限の法秩序は確立されています。例えば,ハラスメント被害を受けた場合,リンデン・ラボに当該違反者を報告して処分を受けさせることができるので,一応平和が保たれているといえます。

しかし,ここには問題もあります。リンデン・ラボとの契約は,ユーザーは選択の余地がなく,受け入れてセカンドライフをするか,受け入れずにセカンドライフをしないか,どちらかしかありません(附合契約といいます。)。これらの契約が現実世界の法律によって無効とされる余地もありますが(仲裁条項が非良心的とされて無効になった事例),そうでなければリンデンはいつでも自由に改変可能です。ギャンブル禁止のときも問題となりましたが,何の事前告知もなく,突然に新しい規制が行われるということがあります。この世界では,リンデン・ラボがいわば独裁者となっているといえます。

やはりコミュニティスタンダードのような住民相互の問題を規律するものの改変に関しては,ユーザー側にも発言権を持たせる必要があるのではないかと思います。リンデン・ラボが自主的にユーザーの意見を聞くことも期待したいのですが,ギャンブル禁止やGINKOでの対応ぶりからすれば,リンデン・ラボに啓蒙君主を期待することは無理のような気がします。それをするためには,やはり革命・・・というと過激ですが,ユーザーが集団化して,リンデン・ラボと交渉していくことが必要になってくると思います。まだまだ小さい動きですが,一部でそうした動きもあるように思います。住民1人1人が運営会社の株式を取得し,仮想世界の運営について発言力を高めていくという方法も考えられます(リンデン・ラボが株式を上場しないのはそれを避けるため?)。

ともかく,仮想世界が現実世界のように大きく発展していくとすると,いずれは仮想世界の運営について住民主権が確立される必要があると思います。そうしてできた規範は民主的なものとして正当性があり,運営会社による法施行の裏打ち(仮想世界からの追放処分による強制力)もあるので,安定した法秩序を築くことが可能となるでしょう。
まあ,どうしても仮想世界の中だけでは解決できない問題が残るはずで,現実世界の裁判に訴える必要がなくなるとは思いませんが,ある程度は仮想世界内の秩序維持システム又は紛争処理システムが機能する可能性があります。

2007年8月18日土曜日

仮想世界と恋愛

1 はじめに

オンラインゲーム歴が長くなると,オンラインゲームの中で知り合って恋愛しているとか,果ては結婚したとか,また,逆に失恋したとかいうことをよく聞きます。オンラインゲームで恋愛が成立することは所与のものとしていいと思いますので,さらに進んで,オンラインゲーム内の恋愛にどういう形があるのかについて,遊び半分で議論してみたいと思います。

ここでいう仮想世界は,セカンドライフのようなものだけでなく,オンライン上でキャラクターを操作して遊ぶ多人数ゲーム(MMORPG)も含めて考えます。

なお,「仮想世界の恋愛」と,「仮想恋愛」とは区別する必要があります。
仮想恋愛は,それが現実の対象(アイドルやクラスメイトなど)であろうと,架空の対象(ゲームキャラなど)であろうと,その対象との恋愛を空想して,頭の中で恋愛の気分を味わうことを言います。仮想世界の恋愛は,仮想世界のキャラを通じて,あくまでも現実の恋愛をすることを言います。


2 分類

リアル恋愛との関係に着目して,試しに次のように分類してみました。

    1) リアルリンク型
      a) リアル先行型
      b) リアル追随型
    2) リアル分離型
      a) 非ロールプレイ型
      b) ロールプレイ型

3 リアルリンク型-リアル先行型

これは例えば,恋人や配偶者を同じゲームに引き入れるような形です。もともと,リアルで知り合っているのですが,その通信手段又は共通の趣味として,仮想世界を利用するような場合です。
リアル多忙でスケジュールが合わせられない場合,遠距離恋愛の場合などは,仮想世界でのコミュニケーションが有効でしょう。3Dのキャラ同士で空間を共有するのは,電話やメールよりも気持ちが通い合うかもしれせん。特にセカンドライフは,恋人同士がするようなアニメーションをアバタ同士にさせることができるので,そういうのが好きな人にはよいかもしれません。

4 リアルリンク型-リアル追随型

仮想世界で知り合って,まず,仮想世界内で恋愛を始め,それがリアルの恋愛に発展する類型です。仮想世界ではただの知り合いで,オフ会で会ってそこで恋愛を始めたようなものは,むしろリアル先行型かもしれません。

仮想世界で恋愛を始めることはなかなか困難な問題があります。相手を判断する情報が,主として相手の打った文字の情報(時には音声)しかないからです。恋愛においては,自分を良く見せたいという心理が働くことがあり,積極的に嘘をつかないまでも,相手の誤解に乗じたり,都合の悪いことを言わないということはあり得ます。リアルでもそうですから,仮想世界では,これに一層バイアスがかかる可能性があります。
また,人は見えない部分を想像力で補います。仮想恋愛とよく似ていますが,相手のリアルについて自分の願望を投影して,実際以上に美化してしまう可能性もあります。

仮想世界で気のあった相手とリアルでも会ってみたいと思うのは自然な心情かもしれません。その場合,仮想と現実のギャップをどう埋めていくかが問題になってきます。

少々古い話ですが,ユーガットメールという映画がありました。インターネットで知り合った男女が,実際は商売敵同士であったという話です。映画のほうは,なぜかハッピーエンドになるのですが,現実にはそうはいかないでしょう。
極端なケースでは,善良な人だと思ったら,犯罪者だったということもあり得ます。

そういうリスクもあるわけですが,現実世界で知り合うチャンスのない人と知り合うことができるというメリットもあります。

何も恋愛しようと思ってゲームをしている人は少ないと思います。いつもいっしょに遊んでいるうちに気がついたらそうなっていた,というのが多いような気がします。その場合,次のステージに進もうと思ったら,上のような問題を意識して,自分の気持ちをよく整理しておく必要があると思います。リアルで会う場合は,そこで新しく始めるような感じのほうが,よいのかもしれません。

5 リアル分離型-非ロールプレイ型

これは仮想世界内の恋愛を,リアルとは切り離して行う類型で,(意識的には)ロールプレイをしていない場合です。
ロールプレイはしていなくても,「恋愛ゲーム」に近いようなものかもしれません。お互いに割り切ってやるのなら,第三者がとやかく言うことではないのかもしれません。前にいった仮想恋愛じゃないけれども,リアルから遊離して,相手の姿を空想しながら醒めない夢を見るのも悪くないかもしれません。

リアルに進もうと思っても,いろいろな障害がある場合,リアルでは遠距離,極端には外国に住んでいるとか,リアルでは別にパートナーがいるような場合など,リアルに進もうと思ってもできず,こうした形態を取ることがあり得ます。
この類型とリアル追随型との境界はあいまいです。ここからリアルに進んでいく場合もあり得ます。

6 リアル分離型-ロールプレイ型

これは仮想世界内の恋愛を,リアルとは切り離して行う類型のうち,意識的にロールプレイをして行う場合です。

典型的には,性別を偽って同性とつき合うような場合(ネカマプレイ,ネナベプレイ)があります。
セカンドライフ内のエスコートさんも男性が多いといううわさがあります。
そのようなものでなく,性別の違うキャラで遊んでいて,異性を好きになってしまったが,相手は同性と思っているという場合もあります。こうした場合,誤解した状況を放置していると最後は悲劇になるようです。

ロールプレイ型になると思いますが,セカンドライフ内で性倒錯的なプレイを行う人たちがいます。リアルで同じことをやっていたら,むしろ非ロールプレイ型ですが,リアルでは一応ノーマルなのに,仮想世界では違う場合をいいます。まあ,心の奥にそういう欲望が潜んでいるのかもしれませんが。ただ,最近,セカンドライフでこうした表現について厳しい規制がされるようになっているのは前に取り上げたとおりです。

7 最後に

現代社会では,仮想世界が実体化していく一方で,現実世界が希薄化していくような感覚があります。仏教では,もともと現実の肉体を仮の入れ物と見る感覚もあります。リアルの恋愛自体も現世というはかない夢のような世界の出来事なのかもしれません。

「夢とこそ 言ふべかりけれ 世の中に うつつあるものと 思ひけるかな」
紀貫之・古今和歌集

2007年8月16日木曜日

SL銀行についてLL社の見解(夏の夜の夢)

うだるように暑いある夜のこと・・・
ブログネタを仕入れるために,いつものように公式ブログを見ていました。

セカンドライフの経済

辞書を引き引き,読んでいると暑さのためか意識が薄れてきました。
目の前がぼんやりとしていきます。
いつのまにか,どこからか声が聞こえてきました。

どうやら,誰かが私に代わって公式ブログを翻訳してくれてるようです。

公式ブログの最後の段落は,銀行規制について書いてあるようですが・・・
「Probably the most important point is that real-world banks are regulated by real-world laws. Linden Lab does not intend to recreate or subvert real-world laws in any way.We are not aware of any institutions in Second Life that are insured by the Federal Deposit Insurance Corporation or similar governmental agencies in other countries. We caution our residents to be wary of anyone offering extremely high interest rates at no risk, either in the real world or in Second Life ? if it sounds too good to be true, it probably is.」(原文)

声が言います。

「たぶん大事なのはね,リアルの銀行はリアルの法律できちっと決められてるってことにあるの。でもリンデンラボはね,そんな法律をSLの世界に持ち込んで,どうのこうのするつもりなんてないの(だって,そんなのめんどいし,大変でしょ?)。SLの金融機関で連邦預金保険機構とかの預金保険がついているところなんてないわよね?「すごーく高い利息をつけてあげます。リスクはゼロですよ」って言ってくる人には気をつけてね。リアルでもSLでもね。だって,うまい話には裏があるって,よく言うじゃない。(ね? GINKOに騙されたのはオバカだけなのョ アタシ,し~らないっと)」

ちょっと言葉遣いが変です。一体誰なのでしょう?
はっと気がつくと,声は消えていました。

どこから,どこまでが夢だったのか・・・
公式ブログの記事そのものも夢のように思えてきました。

2007年8月10日金曜日

Ginko支払停止- この事件から得られるものは?

SL最大の銀行Ginkoが預金者への支払を停止しました。
Ginkoは,強制的に預金をすべて無期限債(償還期限無期限で金利のみ払う債券)に転換すると告知しました。
この経緯は,sheilaさんのブログ「Second Life 体験&探検」がくわしいので,参照下さい。

1 Ginkoの今回の措置の問題点

Ginkoと預金者の関係は契約関係ですが,当事者の一方が他方の同意なしに契約内容を変更することはできないはずです(契約の中で一方的変更権を定めてあれば別ですが)。したがって,無期限債への転換に同意できないのであれば,預金者はこの告知には拘束されないと思います。

それに,このような重大な変更をするのであれば,預金者の預金がどのように使われていたのか(投資運用していたとする,その具体的な内容)を全て証拠とともに開示し,預金者を納得させる必要があると思います。

もっとも,こうなっては何を言っても空しいだけかもしれません。

2 リンデンラボの態度

Ginkoはかなり前から不安視されていましたが,リンデンラボは最後まで何もしませんでした。これに警告を発することもなかったと記憶しています。
Rosedale氏の発言を見る限り,リンデンラボは,SL内銀行について何の規制もしてこなかったし,今後も規制をする気はないようです。

3 Ginkoの事件から何を学ぶのか?

今回のことからは,リアルの素性のしれない会社や人に安易に財産を預けてはいけないという,ごく当たり前の教訓が導かれるだけなのでしょうか?「インターネットの世界ではよくあること」ですまされてよいのでしょうか?

この世界は自由放任が売りだったかもしれません。しかし,仮想世界が現実世界と同じように発展するためには(それはセカンドライフではないかもしれませんが),やはり最低限のルールが必要です。

現実世界では,銀行などについては免許制になっており,預金者を保護するために政府が監督しています。免許制にしないまでも,リアルの人格を特定する情報の開示,資産運用の開示などを義務づけるような最低限のルールを決めておくのも悪くないでしょう。

broadly offensive contentなどを取り締まるより,そっちのほうが重要ではないかと思うのですがどうでしょう。

2007年8月7日火曜日

リンデンラボはCatteneoの個人情報を開示

前に,ユーザー間訴訟の問題点で取り上げましたが,リンデンラボは裁判所の開示命令に応じて,Catteneoの個人情報を開示した模様です。

ロイターの記事

具体的にどのような内容が開示されたかについては明らかにされていませんが,IPアドレスやチャット履歴などの開示を求める裁判所の命令にリンデンラボは素直に従ったようです。この開示された情報から,Eros LLC側の弁護士は,Catteneoがアメリカ人であるとみているようです。

Eros LLC側の弁護士によれば,更にインターネットプロバイダーに開示命令を出すように求めていくそうです。
おそらくリンデンラボやペイパルから開示されたIPアドレスによって,Catteneoの使用プロバイダーが特定されるので,その登録情報からPCを特定しようとしているのでしょう。

これによって被告を特定することに成功すれば,今後の重要なリーディングケースとなると思われます。

成り行きを見守っていきたいと思います。

2007年8月3日金曜日

どうしてセカンドライフ内でディスカッションしないの?

最近,セカンドライフのことがメディアで取り上げられることが多くなりました。
一般マスコミの取り上げ方は,どちらかというとビジネス面に偏っているような感じがします。やたら企業や大学の進出や,リンデンドルが換金できることなどを強調しているように思います。

その一方,セカンドライフは言われているほど流行っていない。実際に関心を示す人は少ないなどというアンケート結果や否定的な論調も出ています。

否定的な論調の人を見ますと,ちょっとセカンドライフに入って,あちこち見て回って,やがて飽きるという感じの人が多いように思います。

セカンドライフの重要な楽しみの一つはやはりコミュニケーションを楽しむということにあると思います。そういった人間関係ができる前にセカンドライフをやめてしまって,本当にこのゲームを理解したといえるのでしょうか?1人でフラフラ世界を回っていても,つまらないのは当たり前で,それは現実世界でも同じことでしょう。

この前,それまでメールのやり取りだけしかしていなかった人と初めてゲーム内でアバタ同士としてお会いしたことがありました。そのとき,ほんとにリアルで対面してお話ししているように感じました。メールやチャットだけでは味わえない感覚です。もちろん,リアルで会えばよいのですが,それがすぐにできないときもあります。このゲーム内で会えば,また違う感じがします。そのときは,ほんとに新しい通信手段が増えたという感じを受けました。

最近,CNET Japanの「オンラインパネルディスカッション」でセカンドライフが取り上げられているのを見ましたが,否定論の人は,コミュニケーションを楽しむところまで行っていないように感じました。

ところで,このパネリストの人たち,こんな伝言ゲームのような片方向のディスカッションでなく(ディスカッションというに値しないと思います。),どうしてセカンドライフ内でディスカッションしないんでしょう?
議論の発展性がないとつまらなくないですか?
チャットでもできますけど,セカンドライフでやる方が数倍面白いですよ。もちろん,リアルで会えるほどスケジュール調整できればいいですけど。そうでないなら,せっかくセカンドライフを話題にしているのですから,セカンドライフ内でやったらどうでしょう?

2007年8月1日水曜日

e-Justice Centre(つづき)

固い話題ばかりになってしまったので柔らかい話題を

e-Justice Centreの制服は
ポルトガル人のデザイナーMaria Gherardiによってデザインされてます。

Mg fashionのサイト
なかなかよいですね。
ADRというと堅苦しい感じを予想してましたが,
お国柄でしょうか?

お披露目ではやはりポルトガル人モデルで有名なAna Lutetiaが身につけています。

気合い入ってます。
やはり見かけは大事ですね。

何か期待できそうです。

e-Justice Centre

以前バーチャル裁判所構想について取り上げましたが,
どうもこれが現実化しそうです。

1 オンラインADR

その前にオンラインADRのことを書く必要があります。

ADR(Alternative Dispute Resolution)とは裁判外紛争解決のことで,裁判によらず,調停や仲裁などによって紛争を解決することをいいます。

このADRサービスをオンラインで提供している機関があることを知りました。

ADRJapanのサイトにいくつかが紹介されています。
利用条件や費用は各団体によって異なっていますが,オンライン上のトラブルにおいては,紛争当事者が外国や遠隔地に住んでいることが多いですから,こうしたサービスの利用が検討されてもよさそうです。

2 ポルトガル司法省の試み

最近,セカンドライフの中でADRサービスをするものができたそうです。

ポルトガル司法省が,2つの大学の協力を得て,セカンドライフ内にe-Justice Centreを開設し,調停や仲裁のADRサービスを提供するそうです。

利用対象者は,ポルトガル人に限られず,セカンドライフの住人なら誰でも可能なようです。
使用言語はポルトガル語,英語を選択できるようです。
手続は基本的には,UNCITRAL国際商事調停モデル法に準拠して行われるそうです。
使用料金は紛争対象の経済的利益を基準として定められているようで,まあ合理的な金額と思われます。

なかなか面白そうな試みですし,公的な機関がやるのがよいですね。ポルトガルなかなかのものです。日本の法務省はこんなこと絶対できないですね。

こうしたADRは,お互いに理性的な話し合いができることが前提ですから,たちの悪い著作権侵害を行っている者を相手方にするには適当でないかもしれませんが,裁判での解決の困難性は前に取り上げたとおりですから,結構使えるかもしれません。

この試みが成功することを祈ります。

e-Justice Centreの建物













会議場の様子


ギャンブルを除去することがなぜ重要だったのか?

「リンデンラボにとってギャンブルを除去することがなぜ重要だったのか?」というブログを発見しました。

わたしの見方と共通している部分があるように思います。

システムの安定性への懸念

この数日間セカンドライフでは暗い話題が続いているようです。

GINKOの取り付け騒ぎがありました。もともと,どのように資金運用しているのか明らかにされておらず,経営の健全性を疑問視されていたGINKOですが,預金引き出しを停止し,その後も引き出しを制限しました。

WSE(World Stock Exchange)のハッキングのニュースもあり,セキュリティを強化した新システムについても不具合が出て利用者に不評のようです。

ここらへんの経過についてはSecond Life 体験&探検をご参照下さい。

(その後GINKOはなんと別の株式市場AVIX(Allenvest International Exchange)を取得しようとしていたことが分かったようです。これは断念されたようですが,一体どうなっているのでしょうか?  Virtually Blindの記事

それと,最近セカンドライフはシステムダウンが相次いでいます。

これらの問題と,前に取り上げたギャンブル禁止の影響も重なり,セカンドライフ内で消費されるドルの量が最近低下しているとのレポートがあります。
Second Life Heraldの記事

最近,セカンドライフがメディアに登場することが多くなる反面,否定論も多く目にします。

わたし自身は,この世界を結構楽しんでおり,セカンドライフのような仮想世界が今後も発展する可能性があることは肌で感じています。しかし,セカンドライフ自体が発展するかどうかについては最近の様々な出来事を見ていますと,不安にならないわけではありません。

この世界が発展するためにはやはりシステムの安定性が必要です。

第1に物理的なシステムが安定している必要があります。

頻繁にダウンする,持ち物やリンデンドルが突然無くなってしまう,ちょっとイベントで人が集まると固まってしまうというのでは,安心して活動ができません。
もっとも,ここらへんは,リンデンラボに改善の意欲が感じられますし,まだまだ技術的に発展途上だと思いますので,暖かい目で見守っていきたいと思います。

第2に社会的なシステムが安定している必要があります。

ある日突然に規則が変わり,今まで許されていた経済活動ができなくなる,著作権が保護されているといいながら,侵害されてみれば,結局はリアルで裁判しなければ解決しない,消費者保護の仕組みもない,詐欺的な経済活動を取り締まる仕組みもないというのでは,安心して経済活動をすることができないと思われます。

リンデンラボは,ユーザーの自治に任せているといいますが,要するに放置しているに等しい状況です。それにリンデンラボには規約改正やアカウント停止処分などの場合に,適正手続(Due Process)という発想が不十分なように感じます。

リンデンラボが非公開企業で,財務内容が開示されていないのも問題です。我々は株主ではありませんが,我々のセカンドライフ内での財産の価値はリンデンラボの信用力に依存しているので,知る権利があるはずです。

ここらへんについて,リンデンラボの関係者はどのように考えているのでしょうか?