2007年12月31日月曜日

2007年の総括

このブログは,主にセカンドライフをネタに駄文を重ねてきました。
もともと更新頻度は高くなかったのですが,後半は,更にリアルが忙しくなり,失速してしまいました。
それでもブログを見に来てくれて,ありがとうございました。

セカンドライフ内で起こった性表現の規制の問題,ギャンブルの問題,著作権侵害の問題などを取り上げて記事にしてきました。そういった記事を書いていて思ったことは,セカンドライフで起こっている様々な法的な問題は,それまでインターネットの発達によって生じた人と人との関わりで生じた紛争,インターネット上に生まれたコミュニティに生じた法的問題などが,形を変えて現れたものが多いということです。
もちろん,仮想世界に特有の問題もありますが,インターネットの持つ匿名性,ボーダーレスなど,それまでのインターネット上の紛争の特徴が反映しているものが多いように思います。したがって,それらの問題に取り組むためには,セカンドライフのことを知るだけでは不十分であり,もっと広い視野が必要だと痛感いたしました。また,逆に,セカンドライフ上の法的問題の処理は,広くインターネット全般に応用可能な要素もあるということがいえます。

その意味では,いろいろ勉強しなければならないことが多いと感じています。もともと,楽しみで始めたセカンドライフであり,その基本は今も同じですが,こんなにいろいろな方面に知的好奇心を奮い起こされたのは,久々のことであり,セカンドライフをやってみて,本当によかったと思います。

リアルでもそれなりに多忙な1年でしたが,セカンドライフでも本当にいろいろなことが経験できました。まだまだ,やりたいことの半分もできていませんが,あせらず,マイペースでやっていきたいと思います。

勝手に持ち上げられて,勝手にこき下ろされたLL社の方もおつかれさまでした。わたしも,心の中では評価してますよ。純粋な楽しみの場として,セカンドライフを支持している人は着実にいますし,それらのユーザーの声に,しっかりと耳を傾けていけば,まだまだ成長の要素はあると思います。

最後になりましたが,セカンドライフの中でたくさんの出会いがありました。
もともと飽きっぽい性格なので,それらの方々との出会いがなかったら,多分,セカンドライフ自体もブログも,ここまで続いていなかったと思います。
本当にありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。m(_ _)m

SL総合研究所 Sora

2007年12月26日水曜日

仮想世界の紛争予防の重要性

世間では,クリスマスのようですが,わたしは,ひたすら仕事です(グスン)
かといって,せっかく始めたブログですから,そろそろ更新しないとヤバイです。あまり煮詰めた話もできませんが,忙しい師走なので,後日暇になったら補充ということでご勘弁願います。

最初,仮想世界の紛争をどう解釈するかという内容で,原稿を書いていたのですが,やはり,その前に強調しなければならないのは,紛争の予防ということです。リアルでも紛争予防が重要なことはいうまでもありませんが,仮想世界では,リアルに比べて紛争解決自体が困難であるのと,仮想世界の現状では,一旦起こってしまった紛争を解決するコストに見合うだけの経済的取引が行われていないように思えることから,一層,紛争予防ということの重要性が高いと思います。

紛争予防については,1.紛争を生じさせないようなシステムの構築とその運用,2.一般ユーザーへの警告・教育活動,個人としてのリスク回避努力などが重要になってきます。

1 紛争を生じさせないようなシステムの構築とその運用

まず,紛争を生じさせないようなシステムの構築ということですが,当然のことながら,これは仮想世界を設計している側は考えておくべきことで,現に,セカンドライフのような仮想世界では,ある程度考慮されてシステムが構築されています。

一例を挙げると,仮想土地の売買については,セカンドライフでは,代金支払と同時に土地の仮想所有権が移転されるシステムが提供されています。また,友人など特定の人に無償又は安価で売買しようとする場合には,買主を特定の人に限定する指名売買という設定ができるようになっており,横から知らない人に購入されてしまうことを防止できるようになっています。

迷惑行為の防止については,土地所有者であれば,ある特定のアバターをBANして,土地に入らせないようにすることができます。また,勝手に土地の上にオブジェクトを置く行為については,土地に返却設定をしておけば,一定時間経過後は,持ち主にオブジェクトが返却されます。

もっとも,せっかくの,こうしたシステムを利用しないで,不利益を受けることはあり得ます。土地の取引でいえば,例えば,お金を先に支払ったのに,土地を移転してくれないまま,別の人に売られてしまったとか,友人に土地を安値で売ろうとしたが,SIMに誰もいないと思って誰でも買える設定にしておいたところ,LandBOTに買われてしまったということを聞きます。しかし,システムを知っていて利用していないなら,本人の責任ですし,知らなかったとしたら,周知方法に問題があるということになりましょう。

もっとも,システムの欠陥を突くという方法も出てきます。例えば,セカンドライフでは,オブジェクトを譲渡するとき,コピー,修正,他人への譲渡を制限するか,許可するかを制作者は設定できるようになっています。また,誰でもオブジェクトを調べれば,制作者と所有者が表示される仕組みになっています。システム設計者は,これで制作者の著作権が保障されると考えていたと思われ,基本的には有効に働いている仕組みだと思います。しかし,CopyBOTを使ってコピーしたり,SIMクラッシュを利用して無断で複製したりすることがあるのは,前に書いたとおりです。これは,システムの欠陥を利用した行為です。イタチごっこになる可能性はありますが,システムの側も改良の余地があるといえます。

システムの欠陥というよりも,現状のシステムで,まだ対応できていない問題もあります。例えば,オブジェクトの全部が所有地上に置かれていれば,返却できますが,オブジェクトの一部が越境しているときは,これをシステム的に直接防止する方法はないようです。(そういえば,隣の椰子の木,少しこちらに出ているような・・・ヒトリゴト)ここらへんは,今後,改善が図られると思います。参考サイト

紛争予防のためには,今後も,こうしたシステムを,より一層充実させていく必要があると思います。

2 一般ユーザーへの警告・教育活動

どんな立派なシステムを構築しても,やはりそれが一般のユーザーに周知されていないと意味がありません。こうしたことは,プラットフォーム提供者が頑張ってやる必要があると思います。LL社もそれなりにやってはいると思うのですが,どうでしょうねえ。例えば,公式ブログを読んでいるユーザーがどれほどいるのか疑問です。もう少し周知方法を考えた方がよいかもしれません。

それに,どうしてもシステムで防止できない問題が残ります。そうなってくると,消費者教育のようなものが重要になってきます。不用意にクリックすると所持金を全部奪われる詐欺オブジェクトというのがありますが,一応システム的には,警告表示が出るはずですので,対応法を知っていれば問題ないはずですが,こうした話は,LL社から警告されたよりも,早く,他のユーザーのブログで知ったような記憶があります。

もちろん,個人レベルでもリスク回避が重要になってきます。しかし,経済取引についても,どこまでリスクを意識してやっているのか本当に疑問に思う例が多いですね。例えば,SL内銀行といっても,その実態は,単なる個人で,リアルの素性の知れない人に,どうして簡単に金を預けられるのかと思うことがあります。例えば,株の取引とかいっても,実態は,ただ金を預けるだけなんですよね。銀行がつぶれたの,会社がつぶれたのとかいっても,その裏にいる個人は(のうのうと?)生きているわけで,要は,その個人に借金を踏み倒されただけなんです。まあ,当たり前の話ですが,知らない人に金を預けないというのが大事ですね。

土地のレンタルについても,リスク回避が必要です。例えば,これからは個人運営のSIMで経営難になってくるところも出てくるように思います。しかし,SIMオーナーが破綻したときは,LL社側からみて土地の賃借人の権利はほとんど保障されていないといってよいと思いますので,信頼できる業者から賃借することが重要になってくると思います。あるいはメインランドにするか。

まあ,もともとリアルの財産の一部を仮想土地又はリンデンドルにすること自体リスクがあることですが,そもそもそれが嫌なら,仮想土地も買わず,リンデンドルも買わず,無料アカウントでフリーアイテム漁りして暮らすのが,一番のリスク回避かもしれません。もっとも,そこはそれ,リスクがあっても,それを楽しめればいいのかもしれません。

個人として,リスク回避することは重要ですが,リアルでも消費者詐欺が後を絶たないように,けっこう驚くほど無知な人が多いので,こういうことをするとリスクがあるんだよということは,LL社側も教育活動をする必要があると思います。GINKOが破綻したときに思ったのですが,そこはやっぱり不十分な感じがしますね。なんか,住民の自治に任せたら,最後はうまくいくというような,根拠のない理想主義があるような気がしてなりません。そういうのを信じられるのがいいのかなあ。まあ,きっと,わたしとは育ちが違うんですねw

2007年12月16日日曜日

近況報告

最近リアルライフが大変忙しくなって,ブログの更新ができなくなってしまいました。
今日は,つまらない駄文でブログを埋めようという作戦ですw

この間,セカンドライフにはログインしていましたが,自宅をメインランドの少し広い土地に引っ越し,その後のbuildの連続で、到底ブログまでは手が回りませんでした。ほんとに時間がいくらあっても,足りないくらいです。あと,イベントの参加とかもろもろもあったり。自宅の整備がおわったら,いろいろ製作にとりかかりたいのですが,どうなることやら。いろいろやりたいことが多すぎて困ります。

わたしは,どちらかというとライトゲーマーですが,今までは,それなりにゲームをやっていました。しかし,最近は,そんなこんなで全くゲームをやっていないように思います。まあ,セカンドライフもゲームといえば,ゲームなんですけどね。ちょっと,違うような。

それでもMMORPGには関心があるので,いろいろと情報だけは集めているのですが,あまりに沢山のネットゲームがありすぎですね。時間があったら,あれこれ試してみたいのですが,実際は,ラグナロクオンライン2(RO2)のオープンβをちょっとやっただけで,それもすぐに飽きました。こんなにネットゲームがあったら,さぞかしゲーム提供者側も競争が大変だろうなと心配していましたが,案の定,収益が悪化するなど,苦戦しているところも出てきているようです。

ちょっとニュースとしては古いですが,「ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン」や「ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン」を運営しているさくらインターネットは,債務超過に陥り,社長が辞任するということになってしまいました。
同社では,クライアント料金を無料化するなどして,まき直しを図ろうとしているようです。それなりに面白そうなゲームだけに何とか頑張ってもらいたいものです。

ちょっと,気になっていたタイトルとしては,GMO Gamesの「アニス&フリッキー」というのがあったのですが,これも12月31日でサービス終了するようです。
あと,RO2も正式サービス開始時期を大幅に延期するなど,苦戦しているようです(それにしても予定料金高すぎじゃない?)。

コンシューマーゲームについても,そう思うのですが,いろいろなタイトルが出ていても,似たようなものばっかりというか,もうひとつコレといったものがないですねえ。最近,面白そうだとおもったのは,PATAPONくらいです。

このブログでも前に仮想世界のカンブリア紀で取り上げましたが,仮想世界のほうも,これからは競争が激しくなっていくと思われます。セカンドライフについても,これまでの拡大傾向が減速しているという報道もあり,リンデンラボもうかうかしていられないと思います。しかし,リンデンラボは,宣伝活動を熱心にしていると思えないんですが,大丈夫なんでしょうか?そういえば,リンデンラボは,井之上パブリックリレーションズと戦略広報の正式契約を締結したというニュースはかなり前に聞いたような気がします。しかし,その後,目立ったことをやったとは聞いていないように思いますが,わたしが知らないだけでしょうか?どなたかリンデンラボの日本での宣伝活動がどうなっているか,教えてください。

それと,前に紹介した国内版仮想世界meet-meが,今日から試験登録を開始したようです。興味がなくはないのですが,多分,わたしは,やらないでしょう。なぜなら,東京の街をリアルに再現した世界というのが,meet-meのウリだそうですが,毎日,東京であくせく働いている身としては,仮想世界の中まで東京に居たいとは絶対に思えません。やっぱり,わたしとしては,セカンドライフのように閑散としているとか貶されるくらい,人が少なくて,のんびり,まったりとした世界で過ごすのがいいですね。

 ということで,今日も,セカンドライフの中で,お話ししたり,イベントに出たり,物をつくったりして,だらだらと過ごしたいと思います。
 
 ブログのほうも,例えば,仮想世界内の紛争をどう扱っていくかといった,基本的なところから,整理していきたいと思います。時間があれば・・・ですが(^^;)

2007年12月5日水曜日

Eros LLC対Thomas Simon(著作権侵害訴訟)で同意判決

Eros LLC.ほか2つの会社と4人の個人が,NYの住民Thomas Simon(アバタ名Rase Kenzo)に対して,違法コピー商品を販売しているとして,損害賠償及び侵害行為の差止めを求める訴えをNY東部連邦地方裁判所に提起したことは,前にブログ記事にしたとおりです。

この訴訟において,双方の合意がまとまり,同意判決がされたようです。同意判決とは,厳密な意味では異なりますが,おおよそ日本における裁判上の和解に相当するものと思われます。

VBの記事

同意判決の内容

これによれば,被告Simonは,原告Eros LLCらに対して,違法コピーによる損害賠償として,来年の1月15日までに525米ドルを支払うことを骨子とし,そのほか12月31日までにSimonが使用している全アカウントのセカンドライフ及びペイパルの取引履歴等を開示することなどが合意されているようです。

525ドルは,今のレートでは,日本円にすると6万円を切っています。裁判費用にすら遠く及ばない金額だと思います。しかも,この程度の金額なのに支払期日まで1か月以上あるというのも泣けます(これは支払われないこともあり得るということです。)。Eros LLCの前の欠席判決で終わった訴訟もそうですが,こうした著作権侵害行為をどのような種類の人が行うかを考えたとき,現実の損害の回収が困難であることは,ある程度予測できたことです。

もっとも,被告に侵害行為を認めさせ,取引履歴の全面開示を認めさせたことなどから,同種の行為に対する一般予防的な効果としては,かなりのものがあると思われます。原告らもそのような効果を意図して,このような合意を成立させたと考えられます。そういう意味では,和解金額にかかわらず,実質的な原告側の勝訴といえそうです。

2007年12月1日土曜日

Eros LLCの訴訟で欠席判決

リアルが大変忙しくて,ブログの更新が滞ってしまいました。
いろいろネタはあったのに,書けなくて残念です。

さて,Eros LLCの訴訟で被告となったアバター名Volkov Catteneoのリアルの人格が特定されたことは,前にブログの記事にしたとおりです。

しかし,その男性は,所定期間内に,裁判所に対して何らの応答もしなかったことから,欠席判決がされる見通しです。

ロイターの記事

要するに,原告であるEros LLCの主張事実を認めたのと同じ扱いになるということです。

これによって,Eros LLC側がいくらの損害賠償を求めることができるのかよくわかりませんが,最終的には,強制執行も可能になると思われます。ただ,報道の範囲内では,被告となった19歳の男性に,めぼしい資産や収入があるようには思われません。資産がないからこそ,特に裁判で争わなかったとも考えられます。最後までどうなるかわかりませんが,現実の回収はなかなか難しいかもしれません。

なお,Eros LLC側は,LL社にVolkov Catteneoのアカウント剥奪を求めていくようです。

2007年11月3日土曜日

仮想世界のカンブリア紀

約5億5千年前,後にカンブリア紀と呼ばれた時代,それまで数十数種しかなかった生物が突如1万種もに爆発的に増加しました。このころ,いろいろな形をした生物が多数現れました。これがカンブリア紀の生命進化の大爆発といわれるものです。
 
今年になって,あちこちで独自の仮想世界を創造する動きが強まってきました。ちょっと大げさかもしれませんが,仮想世界のカンブリア紀が到来するのかもしれません。 
 
セカンドライフ自体の正式サービスが開始されたのは2003年から(ベータ版は2002年から)ですが,飛躍的に会員数が伸び出したのは,去年から今年にかけてで,現在の登録会員数は1000万人(二重に登録したり,登録しただけでほとんど活動していない人も相当含まれます。)を超えたようです。このほか日本ではそれほど有名ではありませんが,There ,IMVUEntropia Universeなどもかなりの会員数があり,徐々に日本人の会員も増えているようです。アジアでも,中国では,HiPiHi(ハイピーハイ)という仮想世界を運営する会社が現れ,日本企業ngi groupが出資して,日本展開における権利を獲得したということでも知られています。また,最近,中国政府が国営の仮想世界を計画しているというニュースが流れ,本当に驚きました。

日本においても,splumeという仮想世界の運営が開始されおり,meet-meという現実の東京をリアルに再現した仮想世界も2007年内の開始に向けて準備中らしいです。

こうした仮想世界に,少し広げて,従来からあるWoW(World of Warcraft),リネージュ,リネージュⅡ,ファイナルファンタジー11,ラグラロクオンラインなどのMMORPGも加えると,仮想世界の数や,そこに参加する人々の数は,どんどん増大しているといえます。

おそらく,今後も新たな仮想世界の参入は続くものと思われますし,グーグルなども仮想世界への参入の噂があります。これらの仮想世界には,プラットホームを提供するにとどまり,コンテンツ提供はユーザー側に任されているもの(セカンドライフなど),独自のテーマを持ち,ゲームとして提供されるもの(一般的なMMORPGなど),その中間形態(Entropia Universeなど)があり,そのほかにも,独自の通貨を持つのか,持たないのか,現実通貨への換金を認めるのか,認めないのか,キャラクター(アバター)の容姿のリアル度,その自由度など,いくつかのバリエーションが考えられます。

最近では,こうした一般的な仮想世界のほかに,企業が社内会議などのために従来のビデオ会議などに替えて仮想世界を構築する動きがあります。これらはクローズドなものなので,ミニ仮想世界というか,むしろ「世界」というよりは,「仮想会議室」(アバターを利用した電子会議室)といった方が適切かもしれません。例えば,シスコは,3D仮想世界「Cisco Industry Solutions Partner Network」を開設して,同社の約4万社のチャネル・パートナーとソフトウェア・ベンダーとの交流の場として利用するそうです。IBMも社内の連絡や会議などに仮想世界を利用しようと考えているようです。最近では,サンマイクロシステムズが社内協働システムとして,独自の3D仮想空間「Project Wonderland」を開設し,オープンソースとして公開しています。仮想世界を社内会議などに利用することは有用だと考えられていたものの,セカンドライフなど一般的な仮想世界を利用しての社内会議では,秘密情報の扱いが困難であるため,こうした独自の仮想世界を構築して利用することが考えられたのだと思います。おそらく,こうした動きは今後も続くと思われます。

このように,たくさんの仮想世界が増えてきそうですが,これら仮想世界相互の行き来も検討されるようになってきました。最近,IBMは,LL社と共同で,異なる仮想世界間の相互運用を推進するという発表をしました。

今後も,いくつもの仮想世界が産まれ,そして消えていくものと思われます。今は,セカンドライフだけが目立っているような感じがしますが,顧客サービス,使いやすさや安定性(それらはセカンドライフに不足しているものと感じます。)などを煮詰めていけば,ほかの仮想世界サービスもまだまだ頑張れると思います。また,企業内仮想世界構築の動きも注目されます。

進化と淘汰の先に生き残って繁栄するのはどのような仮想世界になるのでしょうか?

2007年10月31日水曜日

新たな著作権侵害訴訟と知的財産権保護ツール

Eros LLCの訴訟で,インターネットプロバイダーから開示された情報に基づいて,SexGen Bedを違法にコピーしたとされるCatteneo(アバター名)のリアルの人格が特定されたことは前回記事にしたばかりです。

今度は,Eros LLCが,ほかの5つのブランドとともに,違法コピーをしたとされるNY州の男性を訴えたというニュースが入ってきました。

Eros, LLC. DE Designs Inc.という2つの会社とSLではRH Designs, Le Cadre, Nomine,Pixel Dollsというブランド名で商品を販売している4人の個人が,NYの住民Thomas Simon(アバタ名Rase Kenzo)に対して,違法コピー商品を販売しているとして,損害賠償及び侵害行為の差止めを求める訴えを,NY東部連邦地方裁判所に提起したそうです。

前のSexGen Bed事件も決着が付いていませんが,今度は6者が共同して提起しており,社会的な影響力は前よりも大きいかもしれません。今度は被告のうち1名は特定しており,この部分は,当該被告が侵害行為を行ったかどうかを立証できるかどうかで勝負が決まるので,前よりも単純な訴訟になると思います。

もっとも,氏名不詳者が共謀しているとして,John Does(名無しの権兵衛)10人も被告に加えていますので,これを本気で特定しようとすれば,前の裁判と同じような問題が生じます。訴状によると,John Doesは全部米国民であるとしていますが,おそらく,そのように定義しないと,米国の連邦裁判所が管轄を認めてくれないために,そのようにしているのではないかと思います。

仮想世界の紛争解決を困難にしている理由が,匿名性と,国境を越えた紛争であることは,前に述べたとおりです。今回の訴訟のように,たまたま一部とはいえ相手方が特定され,しかも,同じ国民同士の紛争であれば,そういった困難な問題はありませんが,いつもそうなるとは限りません。むしろ,そうならないことの方が多いはずです。

今回の訴訟によって,違法コピー問題が解決されるとしたら,それが全体の問題の一部とはいえ,好ましいことには違いありませんが,やはり現実世界の訴訟に持ち込まずに解決できる枠組みが必要です。

まず,システムとして違法コピーができないようにする必要があります。SIMクラッシュを利用して違法コピーが作られたり,CopyBOTによる違法コピーが横行したりしているのに,どうもLL社側はこれに対して無策なように見えます。最近,ダイヤモンド社のPhilip Rosedale のインタビューが載っていましたが,Philip氏いわく「セカンドライフでは、人々は詐欺行為や悪いことをしている人々がいると、それが誰かを簡単に見極められるので、誰もが安全なのです。電子的世界、デジタル世界に存在する資産の中には、現実のモノよりも多くのアイデンティティが含まれています。ですから、セカンドライフの中ではモノを盗むことができません。」だそうです。ええと・・・なんと言ったらいいんでしょう。

LL社がそういう認識である以上,制作者側は自衛手段を講じる必要があります。最近,そういう仕組みを提供するグループが現れました。

The Second Life Patent & Trademark Office(S.L.P.T.O.)は,新しい知的財産権保護ツールを開発し,試験運用を始めているようです。

VBの記事

S.L.P.T.O.は,創作物の登録,オリジナルであることを証明する証拠資料の保存などいくつかのサービスを提供するようですが,商品を限定販売品とするスクリプトの提供というのが面白いですね。これは,アイテムを売るたびに,アイテムの購入者を記録したり,一定限度を超えてアイテムを販売しないようにしたりするもののようです。これによって違法コピーの発見と,その立証を容易にするもののようです。

これとは別に考えたのですが,例えば,Rezしたら,オリジナルの作成者に,そのアイテムの所有者が誰かを通知するようなスクリプトを埋め込むことはできるような気がします。しかし,そのようなオブジェクトの通信ばかりが増えて,セカンドライフが重くなったら問題ですね。

やっぱりLL社に頑張ってもらうしか,良い方法はないような気がするのですが・・・技術力に限界が?

2007年10月27日土曜日

全てのSIMをつなげたら?

「セカンドライフ,ここが不満」(その1)

仕事が一段落したら,風邪をひいてしまいました。
すぐ次の仕事に取りかからなければならないのに,
こまったものです。

仕事が忙しくてしばらく更新できていなかったので,駄文を連発することにします。
今日はセカンドライフをやってて不満な点,ここをこうやってほしいというようなことを書いてみたいと思います。もし,反響がよかったらシリーズで書いてみたいと思います。題して「セカンドライフ,ここが不満」(その1)(仮称)とでもしますか。


セカンドライフでは,仮想土地は,SIM単位に分かれており,基本的に,1つのサーバーが1つのSIMに相当します。1つのSIMの仮想的な広さは256m×256mです。そして,このSIMは,LL社が直接管理するメインランドと,ユーザーがSIMオーナーとして管理するプライベートSIMに分かれています。

ところが,これらのSIMは地図上で近接して置かれているように見えても,実際はアバターが歩いたり,飛んだりして自由に行き来できるわけではなく,これらのSIMを行き来するには基本的にはテレポートをするしかありません。SIMとSIMの間に海があるように見えても,海の上を飛んでいけるわけではないのです。自由に行けるのは,メインランド上のつながったSIM(メインランドも大陸が離れていれば,テレポートしか移動手段はありません。)か,複数SIMを所有しているSIMオーナーが,自分のSIMを連結している場合(MagSLとかのSIM)などに限定されます。

セカンドライフを始めたころ,ここが最初よくわからなくて,海の上に飛んでいこうとして見えない壁にぶち当たっていましたw 今では,すっかり,近くのSIMでもテレポートしかいけないということがごく馴染んだものになってしまいましたが,果たしてこれでいいんでしょうか?

前回企業SIMの問題のところでふれましたが,SIMが独立していたら,客が偶然にそのSIMに入るということが期待できません。だから,WEBで宣伝しないと客が来てくれないということになります。しかし,このことがセカンドライフというメディアを阻害しているように思います。

人々の流動性を高めるにはどうしたらよいのでしょうか?

いっそ全てのSIMを連結したら,どうでしょう?

SIMオーナーによっては,見も知らない他人のSIMとの直結をいやがる人もいるでしょう。連結したら,客も入ってきますが,来てほしくないマナーの悪い人も入ってくるからです。隣に派手な看板が見えるといやだという人もいるでしょう。

だったら,直結するのではなく,リンデン所有の海(公海)でつなげればよいのです。今でもメインランドの一部にリンデン所有の海はありますが,すべてのSIMというSIMの間を自由に行き来できる海にするのはどうでしょう。いっぱい空のサーバーを作らなければならないという問題はありますが,マスメディアに踊らされた企業がいっぱい参入して,LL社も儲けているはずですから,できないことはないでしょう。企業側も人が流入したほうがよいと考えれば,既存の例えばメインランドとの連結を希望する企業も少なくないはずです。

すべてのSIMが連結して海でつながったら,いわば大航海時代の始まりです。今までのように検索して目的のSIMへテレポートという単線的な動きではなく,フラフラと当て所もなくさまようという遊び方ができます。偶然に面白いものを発見することができるかもしれませんし,楽しいと思います。

わたしは,飛行船のようなものに乗って,ふわふわと世界をさまよい,面白いものを見つけたら下に下りるという感じで,気ままな旅をしてみたいですね。

今後,流行るとしたら,多分きっとそういう仮想世界だと思います。テレポートも慣れれば便利ですが,味気ないですよねえ。

2007年10月26日金曜日

ついに名無しの権兵衛でなくなった

前にEros LLCの訴訟で,インターネットプロバイダーから開示された情報に基づいて,SexGen Bedを違法に複製したとされるCatteneo(アバター名)のリアルの人格が特定されようとしていることを書きました。

前記事

Eros LLC側弁護士Taney氏によれば,ついにCatteneoがテキサス州ノースリッチランドヒルズに住む19歳の男性であることが特定されたようです。

ロイターの記事

その男性はCatteneoであることを否定しているようですが,開示されたプロバイダーの情報では,その男性の家が特定されたということです。また,もうひとつのプロバイダーからの情報は,ダラスからアクセスされたことを示しましたが,家族からの聞き取りによれば,その19歳の男性がダラスにPCを持っていってネットにつないでいたという裏付けが取れているそうです。

前にCatteneoは,ロイターのインタビューに答えて,絶対に見つからないと思ったのか,自分が19歳であるということを話していましたが,これとも符合しますね。

ロイターによれば,Catteneoは,わざとSIMをクラッシュさせて,ロールバック時にアイテムが複製されることを利用して(くわしくはわかりませんw),アイテムの複製を作っていたそうです。

Eros LLC側弁護士は,その男性に和解の申出をしているそうですが,和解になるのか,裁判が進められるのか,今後の動きが注目されます。

ここまで書いてきて,ちょっとひっかかることがあります。

弁護士が派遣した調査員によると,その男性の家は,家の前に壊れた車が置かれた質素な家で,叔父,祖母,曾祖母といっしょに暮らしていたそうです。前回,「パパやママに相談したら」なんて気楽なことを書いてしまいましたが,心から相談できるような人が身近にいなかったのかもしれません。おばあちゃん(おそらく母親代わり?)によれば,その男性はADD(注意欠陥障害)で,多分何をしていたのかよく分からなかったのでは?ということですが。

その男性のおばあちゃんに同情します。
その男性が本当に「犯人」かどうかは,まだわからないですが,仮にそうであっても,早く和解で解決できるといいですね。
おばあちゃんに心配かけるんじゃないよ・・・

2007年10月25日木曜日

企業のセカンドライフの参入の問題点

1 すぐに飽きられる企業SIM

電車のつり広告,街角の看板,テレビのコマーシャル,WEBサイトの隅,いろいろなところに広告があると思いますが,そうした広告などを見るということは決して意図してされた作業ではありません。たまたま目に入ってしまうというものです。ところが,セカンドライフで企業SIMに行くということは,そうした広告を見るというのと異なり,たまたま何かの行動をしていて,偶然に企業SIMに入ってしまうなどということは基本的にないと思います。たいていの企業SIMは,独立したプライベートSIMに構築されているところがほとんどですので,そのSIMを訪問するということは,必然的にそこを目的としてテレポートするという意識的,意図的な作業を伴います。居住用のSIMに隣接して企業SIMを作っているところもあり(MagSLなど),こういったところは,通りすがりに立ち寄ってもらえることも期待しているのでしょうが,隣接した居住用SIMを訪問する人で,偶然に企業SIMに入ってしまう人は,そんなに多くないと思います。

したがって,企業SIMに客を呼ぶためには,どこそこのSIMで,こういうのをやってるよという宣伝が必要になってくるということになります。宣伝用のSIMに来させるために更に宣伝しなければならないという皮肉な状況があると思います。

また,客にそこへ行くための動機付けを与える必要があります。それでないとわざわざテレポートという面倒な作業をしないと思います。この動機付けとして使われているのは,例えば,ゲームや無料アイテムの配布といったものです。しかし,ゲームはよほど面白いゲームでもなければ,1回やったらそれまでということになります。無料アイテムも1回もらったらそれで終わりでしょう。こないだ日産のSIMでスケートボードを3回成功させたら,アイテムをもらえるというのがあって行ってきました。ゲームはそれなりに面白かったのですが,無料アイテムももらえたし,もう,二度は行かないと思います。

セカンドライフガイドというセカンドライフの検索サイトがありますが,そこでテレポート数を分析したら,企業SIMの人気はすこぶる悪く,企業がセカンドライフに参入してすぐは、物珍しさから訪問するが、長くても2日後には、訪問数はピークに達し、4日後には、ほとんどの人が興味を失い再度訪問しなくなる傾向にあるそうです。

参考記事

セカンドライフへの企業の参入がマスコミで大きく取り上げられましたので,セカンドライフをやり始めた人が,最初に企業SIMに行くことも多いでしょう。しかし,企業SIMがあまり面白くないことから,その後セカンドライフ自体をやらなくなってしまうという人も少なからずいるような気がしてなりません。

2 企業SIMに行って思うこと

セカンドライフを始めてから,有名な企業が進出するたび,そのSIMを訪れてみるのですが,なんだかなあというのが結構多いです。よく思う感想は,「これってWEBサイトを単に立体化しただけじゃない?」というものです。中には,わざわざWEBサイトに誘導するだけのものもあります。そんなときは,「そんなことなら最初からWEB見るよ」といいたくなります。だって,WEBの方が,情報は豊富だし,軽いですからね。そんなSIM作って,セカンドライフでやる意味ってあるんでしょうか?

それにそういうSIMに行って思うのは,「生きている人がいない」ということです。もちろん,客がちらほらいますが,肝心の企業側の人(アバター)がSIMにいるというのをあまり見たことがありません。常時いるというのは,人件費もかかるでしょうが,時間を決めているとか,IMで呼ばれたら対応できるようにするとか,いろいろとできるはずです。特にかまえたことをしなくても,誰かがいて,話しかけてくれるだけでも印象が違うと思うのですが。

あと,イベントとかもやってるところは少ないです。新商品の説明会とか,そんな直接的なものでなくても,企業協賛のコンサートやクイズ大会,スポーツ大会とかいろいろあると思うのですが,こうしたことをやっているのは少ないです。

たいていのところは,一回作ったら,かなり長い間,手間も暇もかけずに放置しているような気がします。これでは,飽きられて当たり前ですね。セカンドライフは,リアルタイムに多人数の人が出会えるコミュニケーション・ツールであるところに特色があると思いますが,こういったSIMに行って思うのは,企業側がポンとオブジェクトを置いてあるだけで,いわば死んだ街であり,およそコミュニケーションの要素がないということです。

3 最近の動き

最近,企業側でも,こうしたゴーストタウンを作るだけの仮想世界利用について再検討する動きがでてきました。仮想世界を利用した社内会議など,コミュニケーションツールとして,仮想世界というメディアの特性に応じた利用をしようという動きです。

ロイターの記事

上記の翻訳

ただ,社内会議もよいのですが,そうしたクローズドなコミュニケーションにだけ利用されるのでは,ちょっと残念ですね。
どうして,企業は顧客と直接コミュニケーションするという発想にならないのでしょうか?クレーム殺到の場になるのが怖いのでしょうか?

4 個人的にこういうのがあったらいいなと思うもの

例えば,新製品を発表するときって一般的にはプレスに向けて発表会を開くと思うのです。そのプレス発表を通じて,間接的に消費者はどんな新製品が出たかを知るのですね。でも,セカンドライフなら,消費者に向けて直に訴えることができるのではないでしょうか?セカンドライフ内で,新製品の発表会やイベントをするとともに,一定の時間を決めて担当者を置いておいて,何でも説明に応じるというのはどうでしょうか?実際に購入したい人がいたら,最寄りの店舗を紹介するとかしてくれるといいですね。個人的には,例えば,アップルの人に「新しいiPodってどうなのよ?」みたいな質問をしてみたいです(できたら日本語でw)。

PC用ソフトなんかはどうでしょうね。セカンドライフを利用したデモンストレーションや,トレーニング講座を開いたりすると面白いかもしれません。いちいち本読んで勉強したり,スクールに通ったりするのは大変ですものねえ。

旅行会社で,セカンドライフ内に支店を作って,店員をおいておき,例えば,「今度の週末に一泊で温泉にいきたいけど,お手頃なパックはないですか?」などといった相談に応じてくれ,最寄りの店舗でチケットを確保してくれるというようなのはないですかねえ。いちいち旅行会社に行くのが面倒なのです。

こんなふうに書くとすごくものぐさな人間と思われるかもしれませんが,仕事がとても忙しくて,リアルの店舗に行く暇がないのです。コンビニじゃないけど,夜に仮想世界で開いている店舗があるととてもうれしいです。どういうものか分かっているものなら,アマゾンなどのWEB通販で買いますが,商品の説明を聞いてから,買いたいようなものもあるので,説明をしてくれる店員がいるとうれしいですね。

たぶん,きっと人件費の問題とかあるんでしょうね。実際に客が来るかどうか不安なら,現実世界で他の仕事やりながら,IMで呼ばれれば,仮想世界の店舗にも顔を出せるというくらいでいいのですがねえ。

そういえば,NECがセカンドライフ内に仮想銀行店舗を作って,相談業務をする「可能性を検証する」というのが最近発表されました。
ローンの相談などがセカンドライフ内で実際にできたら便利ですね。

なかなかこういうのが広まらないのは,手間がかかるからだと思いますが,手間をかけないで期待した結果が得られなくても,セカンドライフのせいにしないでほしいですね。

2007年10月14日日曜日

メガプリム問題

メガプリム,又はヒュージプリムと呼ばれる1辺の長さが10mを超える巨大プリムは,セカンドライフの初期の頃(β版?)に作成可能だったもので,その後は作成するプリムの大きさは1辺10mに制限されています。そして,今は,この初期の頃に作成されたメガプリムがコピーされたり,変形されたりして,一般に配布されています。

このメガプリム,セカンドライフでは土地面積当たりのプリム数が制限されていることから,大きな建造物を造るときには,結構活用されていると思います。

しかし,このメガプリムは,SIMに大きな負荷をかけるもので,LL社はその使用を奨励していませんし,レンタルの個人SIMでは,メガプリムの使用を規制しているところもあります。

最近,公式ブログにメガプリムの使用の是非について,問題を投げかける投稿がありました。

公式ブログの記事

この問題への関心は大きいようで,あっという間にコメント欄は150を超えてしまいました。

コメントをざっと見た限りでは,ユーザーの意見の多くは,10mを超えるプリムを一律に規制するのではなく,ある程度の大きさ(1辺20m,50m,100m?)以下のものは使用を認めてもらいたいというもののように思います。やっぱり,かなりの人が,プリム数を節約するために,建造物についてメガプリムを活用しているように見えます。仮に,既存のメガプリムを削除されてしまいますと,建造物を1から作り直ししなければならない人がたくさん出てくることが予想され,これに踏み切ると大変な混乱が生じる可能性があります。

LL社は,最近,物理エンジン(オブジェクトについて物理的挙動をさせるソフトウェアライブラリ)のバージョンを新しくしようとしています。セカンドライフに使用されている物理エンジンは,最近インテルに買収されたHavok社のものを使用していますが,最近,Havok4(最新バージョンと書きたかったのですが,最新は5のようです。)を導入したベータグリッドを公開しており,ゆくゆくはこれをメイングリッドに導入しようと考えているようです。しかし,メガプリムは,物理エンジンに大きな負担をかけるため,LL社としては,この機会にメガプリムを一掃したいと考えているのではないでしょうか?

個人的な感想としては,せめて1辺32mまでは認めて欲しいと思います。実は,床を敷くのに32×32×0.8のプリムを使っているのですw やっぱり10mって建築するときはあまりに小さいですよねえ。

LL社さま,メガプリムを禁止するなら,せめて土地に置けるプリム数増やしてください。
ユーザー数伸び悩んでいるみたいなのに,ちょっとはいいことも考えてほしいですね。

2007年10月8日月曜日

ID認証その後

1 問い合わせのメール

前にセカンドライフにID認証システムが試験的に導入されるということを書きました

LL社のプレスリリース

これはSIMオーナーを対象に試験的に実施されたもので,実際にID認証をした人の話では,登録ページから,氏名,住所,生年月日などのID情報とともに公的証明書のID番号を打ち込むことになっていて,日本の場合,運転免許証番号又はパスポート番号を打ちこんで認証手続をするようです。わたしはSIMオーナーではないので,これを試すことはできないのが残念です。

ところで,認証プロバイダーが,どうやって日本人の運転免許証番号やパスポート番号を入手しているのか疑問になって,直接認証プロバイダーであるAristotle社に問い合わせのメールを出してみました。
最初のメールは8月31日でしたが,ごく簡単にAristotle社が日本人のID認証を行っているのかどうかを聞いてみました。

しかし,返事がないため,9月23日に再度のメールを出しました。
メールの内容は,「日本政府は運転免許証番号やパスポート番号を民間業者に開示していないと思われるのに,どうやってそれらの情報を入手しているのか?」という内容です。
そのメールを送った際に,また,返事がないと困るので,ちょっと失礼かと思ったのですが,ID認証システムの信頼性に疑問があること,自分が日本のブロガーで返事の内容はブログに公開すること,返事がなかったときはそのことも公開することなどを付け加えておきました。

しかし,なおも返事がこないので,10月7日付けで3度目のメールを送信してあります。果たして返事は来るのでしょうか?

2 ID認証は浸透するか?

現時点では,ID認証をする意味は,土地所有者が制限エリアを設けた場合に,そこに入っていけるというだけにとどまるようです。しかし,アダルトコンテンツを置く業者が,どこまで積極的に,制限エリアを設けるのか疑問のように思います。というのは,制限エリアを設けるとID認証した人しか入れないため,もしID認証が広まらないと,ある意味では客を排除することになって,営業的には不利になると思われるからです。それに,もともとセカンドライフは18歳未満の人は利用できないことになっているはずですので,特に制限しないで,もし18歳未満の人が入ってきてしまっても,それは業者側の責任ではないという言い分が成り立つようにも思えます。
 
LL社は成人向けコンテンツがある場合には,規制をするように強く推奨していますが,果たしてどこまで浸透するでしょうか?

公式ブログ

上記の和訳
  
ID認証の信頼性については,Aristotle社からの返事がない限り,断定的なことはいえませんが,仮に,公的データからの照合がきちんと行われていたとしても,そうした公的データ自体を盗用されることもないとはいえませんから,いずれにしても完全に信頼できる個人認証というものではないようです。まあ,費用対効果を考えると上記のようなシステムが限界なのかもしれませんが。

2007年10月5日金曜日

Marc Bragg氏とLindenとの間に和解成立

Lindenが,Marc Bragg氏が不正な土地取引をしたとして,同氏のアカウントを停止していた件について,Marc Bragg氏がLindenとその代表者Philip Rosedale氏を訴えていた事件で,和解が成立したそうです。

公式ブログの記事

ロイターの記事


和解の内容は秘密とされています。
ともかく,これによってMarc Bragg氏のアカウントは回復されるようです。

野次馬としては判決まで行ってほしかったのですが,それぞれに和解をする事情(勝訴の見通し?早期解決?訴訟のコスト?)があったようです。

ただ,この訴訟の中でLindenのTOSの仲裁条項の効力が否定されたことから,LindenがTOSを変更するきっかけとなったもので,チャレンジャーとしての意義はあったものといえましょう。

わたしは新しいTOSの専属管轄の条項についても十分争う余地は有りそうな気がするのですが,次のチャレンジャーの登場を期待したいと思います。

2007年9月29日土曜日

EU住民への付加価値税相当額の支払請求

1 EU住民へのVAT相当額支払請求

LL社は,EU(ヨーロッパ連合)の住民に対して,LL社との取引に関してVAT(付加価値税,日本の消費税のようなもの)相当額を支払うように告知したようです

対象となる取引は,プレミアムアカウントの料金,メインランドの土地使用料,SIMを購入するときの代金,その維持費の支払などで,おそらくLL社から受けるサービスの対価全部が対象となると思われます。
正確には,これらの取引に対して,EU諸国がLL社に課税し,それを消費者(EU住民)に転嫁するということだと思います。

どうして急にこのような措置がとられるようになったか不明ですが,あるいはVATに関してEU諸国の課税当局から何らかの働きかけがあったのでしょうか?

2 日本の消費税はどうなる?

これに関連して,日本の消費税の取扱いはどうなるのか気になって調べてみました。

日本の消費税は,国内において事業者が行った資産の譲渡,役務の提供等に課されます。要するに,国内取引にのみ課税されるという建前になっています。

そこで,セカンドライフのように,外国法人がインターネットなどでサービスを提供し,そのサービスを国内で受けているというケースではどうなるかが問題となります。

これについては,サービスの享受地が国内なので,国内取引と見る余地があるようにも思いますが,課税当局は,国内に外国法人の事業所がない限り,国内取引ではないという扱いをしているようです。

参考1
参考2

したがって,セカンドライフの利用について日本の消費税は課せられないようです。わたしはEU諸国も日本と同じだと思っていたのですが,今回のLL社の取扱の変更をみると,違うのかもしれません。

もっとも,これはLL社とユーザー間の取引のみに言えることで,例えば国内法人から土地のレンタルなどのサービスを受ける場合は,国内取引となる可能性があります。

この場合,外国のサーバー内のレンタルであることから,役務の提供場所は外国であって,国内取引でないとする見解もあり得ますが,サービスを提供する法人の事業所が国内にあるのであれば,国内取引とみなされる可能性があります。

もっとも,わたしの経験では,国内のレンタル業者で消費税分を付加しているところはないように思うのですが,当局は外国のサーバー内のことだからよいと考えているのか,単にそこまで捕捉していないのか,どちらか不明です。

2007年9月24日月曜日

仮想世界内のADRの可能性

前に,1万ドル未満の少額損害賠償請求に関してオンラインADR(裁判外紛争解決)の利用ができるような規約改正がされたことをブログ記事にしました。

ロイターの記事によれば,LL社の関係者の発言として,もしADR機関がセカンドライフ内で仲裁手続を行うことができるのであれば,それも認められるということです。はっきりとしたことは分かりませんが,これによれば,以前に紹介したe-Justice Centreも,この規約に基づくADRとして利用できるかもしれません。

ユーザーがアカウント停止又は剥奪されてしまったケースなどを別として,セカンドライフの利用に関して起こった紛争であれば,セカンドライフ内で紛争解決手続が行われるのがふさわしいと思われます(前記事参照)。

もっとも,規約の対象とする紛争では,LL社自身が紛争当事者なので,紛争の一方当事者の事業を活用して紛争解決手続を行うこと自体に抵抗があるかもしれません。この場合には,仲裁機関内部の会話や,仲裁機関と訴えたユーザーとのやり取りなどの通信の秘密を確保することが重要になってきます。

この規約の問題とは離れて,仮想世界内でのADRの有用性を考えることは重要かもしれません。今でも,オンラインを利用したADRサービスがありますが,主としてその通信手段はメールのようです。そのため,当事者が出頭して行う普通のADRに比べて,臨場感に欠ける,即応性がないなどの問題が指摘されています。また,実際やってみると分かると思いますが,メールや文書のやり取りだけでだけで紛争当事者を説得し,妥当な解決に導いていくのはかなり困難な作業だと思います。しかし,仮想世界でアバター同士が会話をする方法によってADRを行えば,実際に直接対面して話しているようなイメージで会話が可能ですし,臨場感のある議論が可能です。時間のかかるメールのやり取りなどに比べて,話し合いもリアルタイムで行われ,より早い速度で合意に進むことが可能と思われます。ですから,仮想世界に関連した紛争に限らず,インターネット内の取引関連の紛争などを含めた一般的な紛争についても,仮想世界を利用したADRの活用が有効なように思われます。

問題は,今のところ,一般人が仮想世界を気軽に利用するには,少し敷居が高いことです。しかし,前回仮想世界を利用するためのPCの能力の問題について述べましたが,少なくとも10年程度はムーアの法則が妥当するでしょうから,普通のPCでサクサク仮想世界が利用できるのもそう遠くないことと思います。そういえば,LL社がセカンドライフを作るのに影響を受けたという「スノウ・クラッシュ」という小説のなかでは,公共端末からも仮想世界が利用できるようになっていました(モノクロアバターですがw)。そういったことも実現可能性はあると思います。

まあ,そこまで拡大しなくても,まずは仮想世界に関連した紛争からADRサービスを始めることが考えられますね。先行者であるe-Justice Centreの活動が注目されますが,そろそろ民間の事業者も参入してきてほしいものです。

2007年9月23日日曜日

Intelは仮想世界に期待

CNETの記事から

Second Lifeが普及しにくい理由の一つとして,CPUとビデオカードに高い能力が要求されることがよく言われます。しかし,IntelはSecond Lifeのような仮想世界の発展に期待を寄せているようです。

たしかに,今売られているPCの一番低いグレードのものでも,ワープロや表計算などのオフィスソフトを動かすだけなら問題ありません。ところが,Intel(AMDもそうかもしれませんが)の立場からすれば,それでは困るわけです。人々がもっとPCに負担をかけるソフトを使用するようにならないと,買い換え需要が少なくなるわけですし,PCに負担をかけるソフトが普及してほしいわけですね。

上記の記事によれば,Second Lifeの現状の荒い画面でもメインプロセッサの使用率は70%に上がり、グラフィックプロセッサでは35~70%まで上昇するらしいです(記事は,どのようなPCを対象にして言っているのか不明ですが)。わたしのPCは,とても重い3DのMMORPGをプレイするために去年Core2Duo , Geforce7900GTに替えたのですが,それでもSecond Lifeをやると,ときどき重くなるので,最近メモリを3Gに増やしました。

ユーザーには,もっときれいな画面でプレイしたいという要求があると思いますから,Second Lifeもソフトが進歩し,これと同時に処理が重くなっていくことも予想されます。

ムーアの法則にも限界が見え始めたといいますが,きっとIntelはそうは考えていないでしょう。
Intelは人々がもっと仮想世界を利用するようになり,より高性能なPCを求めることを期待しているように思えます。

2007年9月22日土曜日

オートリターン防止スクリプト!?

Second Life Heraldの記事によれば,
土地にオートリターン設定がされていても,オブジェクトを置き続けることができるスクリプトを作った人がいるようです。

アバター名Tre Gilesが開発したGiTech Anti-Autoreturn v7というスクリプトを使用すれば,土地にオートリターン設定をしていても,オブジェクトがリターンされずに置き続けられるそうです。

事の真偽は確認できていませんが,もし,このスクリプトを利用して,他人の土地に居座り続ける等の行為をすれば,SLの平穏を害する行為としてBAN対象になる可能性があります。
また,悪質ないたずらに利用される可能性もあるので,とても心配です。

それにしても,いろいろ考えつく人がいるもんですね。ちょっと,面白いなと思ってみたり・・・わたしは使いませんけどね(^^;)

2007年9月19日水曜日

紛争解決に関する利用規約(TOS)の変更

1 はじめに

 LL社は,LL社とユーザーとの間の紛争解決に関して,利用規約(TOS)を改正しました。

 公式ブログの記事

 新しい利用規約

 古い利用規約

 これによれば,ユーザーがLL社に対して訴えを提起する場合に,サンフランシスコの裁判所を専属管轄裁判所と定めるとともに,1万ドル未満の少額損害賠償請求に関してオンラインADR(オンラインによる仲裁などの裁判外紛争解決)の利用ができることを定めました。

2 規約改正の背景

従来の利用規約(TOS)によれば,LL社とユーザー間の紛争は,サンフランシスコの国際商業会議所 (International Chamber of Commerce)の仲裁によって解決するとされていました。しかし,連邦裁判所で,この条項が非良心的とされて,この条項の効力を否定する判決がされたことは,前に取り上げたとおりです

 おそらくLL社は,この条項によって,ユーザーからの訴えを上記の機関に集中させ,カリフォルニア州外での訴訟追行を強いられることから生じる訴訟費用等のコストを減らすことを意図し,あわよくば訴訟自体をあきらめさせたかったと思われます。しかし,上記のように裁判所がこの条項の効力を否定したことから,皮肉にも,裁判管轄についての効力ある規約がないことになってしまいかねず,LL社は,どこの裁判所にでも訴えられる危険にさらされていたことになります。

 こうした事情から,LL社は,上記の規約改正の必要に迫られていたといえます。

 これはLL社のお家の事情ですが,それに加えて別の面からの問題点もありました。
 それは,セカンドライフのユーザーは世界に広がっているために,カリフォルニアでの裁判を強いることは,訴訟を断念させるに等しいという問題です。わたしのブログでも,こうした問題を取り上げ,バーチャル裁判所の提案をしたり,又は,オンライン上で調停をするオンラインADRを紹介したりしました。 この面でも何らかの対応をする必要があったと思われます。

 うがった見方ですが,専属裁判管轄を決めるだけでは,また「非良心的」とされて無効になるおそれがあるために,「良心的」な条項を付加する必要があったのかもしれません。

3 改正の骨子

○ ユーザーがLL社を訴える場合の専属管轄裁判所(そこにしか訴えられないという意味です。)をカリフォルニア州,サンフランシスコの裁判所とする。

○ 請求額が1万米ドル未満の少額損害賠償請求については,電話,オンライン,書面など当事者が仲裁機関に出頭しなくてもよいADR(裁判外紛争解決)を利用できる。

○ この規約に反して,「誤った」場所で訴訟を提起した場合,これによってLL社が支払った弁護士費用や損害について1000米ドルまで賠償を求められることがある。

4 専属管轄について

 この種の規約は,オンラインサービスであれば,よく見かけるものです。例えば,グーグルの利用規約によれば,カリフォルニア州、サンタクララ郡内に所在する裁判所の専属管轄権に服するとされています。

 しかし,規約に反して別の裁判所に訴えた場合に訴訟費用の支払を義務づける条項はあまり聞いたことがありません。

 1万米ドル以上の損害賠償請求,金銭賠償ではなく特定の行為の履行を求めるもの(エクイティ上の救済)については,上記のADRによる解決の対象外とされていますので,サンフランシスコに訴えるしかないわけですが,この条項についても,従来の条項と同様に「非良心的」とされて無効になる可能性は残るものと思われます。

5 少額損害賠償請求についてのADRについて

 利用するADRはLL社とユーザーが合意で決めるものとされますが,利用可能なADRの要件も規約で定められています。公式ブログによれば,既存のADRのうちAmerican Arbitration Association (AAA) (http://www.adr.org/), Judicial Arbitration and Mediation Services/Endispute (JAMS)(http://www.jamsadr.com/),National Arbitration Forum (NAF) (http://www.arb-forum.com/)が利用可能であるとして例示されています。

 請求金額等の限定はあるにしても,これによって日本など外国のユーザーにも,LL社との紛争解決の道が拡大したことは好ましいことだと思います。

 (請求金額が1万ドル以上の場合でも,1万ドル未満の請求に小分けすれば?・・・あ,聞かなかったことにしてw)
 

2007年9月15日土曜日

ロイヤル・リバプール・フィルのコンサート

ロイヤル・リバプール・フィルのコンサートに当選したので,行ってきました。

 当選してから気がついたのですが,これって時差があるから開始時間は日本時間で土曜日の早朝なんですね。午前3時ころ@30分で始まるとのグループメッセが来てあわてました。実はすっかり忘れていたのです。
 たしか7:30GMT開始と聞いていたので,日本時間午前4時半からかなあと思っていたのですが,1時間計算違いしたかも?ひょっとして夏時間でしょうか?後で聞くと時差の計算を間違えて遅れてきた人も多かったようです。SL時間で表示してくれれば助かったのにと思います。

会場の様子













 会場は,収容人員の関係でしょうか,右翼と左翼が別のSIMになっていました。時差の関係で当たっても来られなかった人が多かったのでしょうか。空席が目立ちました。

 コンサートの曲目は,最初の曲はKENNETH HESKETH,JOHN McCABEらの現代曲で余り馴染みのないものでしたが,その後,Kate Royal(ソプラノ)によるラヴェルの声楽曲シェエラザードからアジア(Asie)などがあって,とても盛り上がりました。

コンサートの様子













 15分の休憩を挟んで,ラフマニノフの交響的舞曲(Op. 45)が始まった当たりで,午前5時ころでしょうか,仕事の疲れが出て,猛烈な睡魔に襲われ,床に突っ伏して音だけ聞いていましたら,気持ちよくなって,いつの間にか気を失い,最後の拍手で目が覚めてしまいました(^^;)

 音がときどき切れたり,「音がでない,画像が見えない」などと苦情をいうお客さんがいたり,なかなか主催者さんは大変そうでしたが,これからも,こういった試みを続けていってもらいたいです。

 コンサートには,Philip Lindenも来ており,Nobody Fugaziなど有名ブロガーも来ていました。Nobody Fugaziさんも,ブログにコンサートの記事を書いておられます。

ただ,Philip社長は途中からawayになっておりました。
↓Away中の社長を激写w

 

セカンドライフの面白さ

1 はじめに

 最近は飽きたのかそういう記事を目にすることは少なくなりましたが,以前は「セカンドライフのどこが面白いの?」というような記事をときどき見かけました。何に面白さを感じるかは人それぞれで,これがつまらないという人がいても特に何も感じません。価値観が多元化した現代ですから,誰もが同じことをやる必要はないと思います。
 じゃあ,自分はどこが面白くてセカンドライフをやっているのかについて自分なりに整理しました。あくまでも個人的な感想です。

2 チャットその他のコミュニケーション(自分的熱中率40%)

 オンラインゲームの楽しさのかなりの部分がチャットその他のコミュニケーションにあると思います。セカンドライフもそうだと思います。わたし自身,ログインして何をしているかというと相当な時間チャットをしていることに気がつきます。見ず知らずの人と話すのも楽しいですが,気の合う友人ができて何時間もひたすらチャットするのは本当に楽しいことです。前にも書きましたが,セカンドライフが面白くないという人は,こうした出会いがうまくいってないように感じます。

 もっとも,チャットの楽しさはオンラインゲームであればどれにも当てはまるもので,セカンドライフの特色ということはできないと思います。セカンドライフと他のMMOとのコミュニケーションの違いは,次のようなところにあると思います。

他のMMOでは,サーバがいくつかに分かれていたり,同じサーバ上であっても,いくつかのレイヤーに分かれていることがあったりして,同じゲームをやっている人同士が常に出会えるとは限りません。しかし,セカンドライフでは,常にログインしている人同士同時にチャットができ,場所を決めて出会うことが可能です。キャラ名を検索して,誰にだってIM(インスタントメッセージ)を送ることができます。また,WEBとの親和性があり,セカンドライフ内から容易にWEBに誘導することができ,WEBを立ち上げながら,セカンドライフをやることも可能です。最近では,セカンドライフ内からWEB(携帯利用含む)とのチャットができるツールも無償で配られているようです。以前,グループIMで日本語が使えなくなったことがありましたが,今は問題なく日本語も使えます。以上のことは,コミュニケーションツールとしてはとても有用な側面でしょう。

もっとも,ときどきIM(特にグループIM)がダウンして使えなくなったりすることがあったり,重くなってチャットがなかなか画面に表示されないなどの不具合も生じます。ここは,他のMMOのしっかりした安定性のあるチャット機能と比べるとストレスを感じることがあります。ぜひ改善してほしいところです。

3 アバターの着せ替え(自分的熱中率30%)

 MMOゲームをやっていると,自分の操るキャラクターの容姿や服装にこだわりたくなるのは当然のことと思います。しかし,他のゲームだと,装備を作成するための生産スキルを上げなければならなかったり,レアアイテムを獲得するためにレアポップモンスターを狩らなければならなかったり,何かと大変だったりします(まあ,それも楽しみの一部かもしれませんがw)。性能がよくても外見がアレな装備であったり,その逆であったりとか,とかく思うままになりません。
 しかし,セカンドライフでは,アバターの容姿は思いのままですし,自分で作らなくても,安価で見栄えのする服装が出回っています。アバターの容姿には好き嫌いがあるかもしれませんが,努力と金次第でそれなりの容姿が実現可能です。
 正直,わたしも着せ替えを楽しんでおり,SL内有名ブランドのセールがあれば飛んでいくタイプで,いつのまにか手持ちのリンデンドルが少なくなっているのに気がつくことも多いです。最近はウインドウショッピングで済ますことも多いですが,それでも十分楽しいです。それも,ゴス,パンク,ロリータ,ストリート,アバンギャルド,グランジ,フォーマル,クラシック,和装,コスプレ,ハダカ(BAN注意)など,何でも可能です。性転換や,動物やロボットなどへの人外転換も自由です。自分のイメージを固定する人も多いようですが,わたしは,いろいろやって楽しんでいます。もっともっと楽しめそうです。多分,リアルのファッションと同じで終わりがないと思います。

4 物の製作と製作物の販売(自分的熱中率20%)

 セカンドライフが他のMMOや仮想世界と大きく異なるのは,セカンドライフ内のオブジェクトを自由に製作でき,それを他人に譲渡,販売できるということだと思います。作ったオブジェクトにはLSL(リンデンスクリプト)で動きを付けたり,いろいろな機能を付けることができます。最近では,クリエーターの人が多数セカンドライフで製作をしており,そのなかには,私が前から知っていたプロの方もいらっしゃいます。服,小物,建物,乗り物など,本当に素晴らしいものを目にすることが多くなりました。以前,リアル東京をシミュレートした仮想世界が発表されたことがありますが,そんなお仕着せの世界で遊んで楽しいのでしょうか。セカンドライフに慣れ親しんでしまうと,この自由に創造できる世界が本当に魅力的に感じます。
 自分はクリエイティブな才能はないと思っていますが,それでも建物や小さなオブジェクトを作るのは楽しいことです。わたしもいつの間にかBlenderをいじくり始めることになりました。今後はこれが自分的熱中率50%を超える日もそう遠くないでしょう。
 もっとも,製作をしていると不満な点も多々あります。土地に置けるプリムが制限されていることは,一番頭の痛い問題です。プリムを節約しようとsculptプリムを作るのは素人にはやっかいです。LSLも思ったような動きをさせるのは骨が折れます。持って産まれた美術的才能の無さはどうしようもありませんが,これらのことが改善されたら,セカンドライフはもっと楽しくなることでしょう。

5 イベントの企画と参加(自分的熱中率10%)

 これは物の製作とコミュニケーションの統合とでもいうべきでしょうか。いくつものグループが,マラソン,フットサル,運動会,クイズ大会,花火大会,コンサートなど楽しいイベントを毎日のように企画して,みんなで楽しんでいます。わたしは,集団行動が苦手ですし,リアル仕事が忙しくログイン時間がほぼ深夜近くになるため,あまり積極的にやっているわけではないのですが,週末などにイベントに参加しています。こうしたイベントを企画される人は本当に大変だと思いますが,セカンドライフを動かす原動力のようなものを感じます。

6 そのほかの興味ある事項(自分的熱中率 未知数)

 昔「太陽の船ソルビアンカ」というアニメで,登場人物の少女が宇宙船の中からバーチャルリアリティの小学校に通学していました。これがとても印象的なシーンとして頭に残っています。既に一部でそういう試みがありますが,教育に仮想世界を利用するのはよい考えだと思います。病気や不登校など何らかの事情で学校に通えない子供たちのために,仮想世界の中で学校を開くのはどうでしょう。現状では,成人向けの学校を除き,ティーングリッドを利用するしかないかもですが。リアルの仕事をどうにかしなければなりませんが,将来そういう機会があれば,ぜひやってみたいです。

7 自分的にどうでもよい事項(自分的熱中率 0%近く)

 最近,企業の参入が多くなっていますが,企業のSIMには一度行ったら,二度行くことは少ないです。二度行く理由がないからです。企業の人は大変だろうと思いますが,魅力を感じるものはほとんどないです(個人的な感想です。あくまでも)。宣伝SIMを作って放置するくらいなら,ユーザーのイベントのスポンサーとなってお金出してもらったほうがいいです。まあ,どうでもよいことですが。

8 今後のこと

 わたしは,セカンドライフのような仮想世界に発展性を感じ,そのなかに形成される人間同士の関係,社会に興味を持って,このブログを始めたわけですが,自分的には,セカンドライフはそんな大げさなものではなく,やはりゲームとして純粋に楽しんでいるという感じです。何に楽しみを覚えるかは人それぞれだと思いますが,セカンドライフの楽しさは長く続きそうな予感がします。

2007年9月7日金曜日

名無しの権兵衛でなくなる日も近い?

前にEros LLCの訴訟でLL社がCatteneoの個人情報を開示したことを取り上げました。
前記事

新たにタンパの連邦地方裁判所は,2つのインターネットプロバイダーに対し,多分LL社かペイパルが開示したIPアドレスに基づいてだと思うのですが,そのIPアドレスに関するプロバイダーの登録情報を開示するよう命令を発しました。

ロイターの記事

ロイターがしたCatteneoへのインタビューによれば,Catteneoはリアルは19歳でIPアドレスは家族のアカウントにリンクされているそうです。
Catteneoが真実を言っているかどうかわかりませんが,プロバイダーの登録情報から直接本人の情報が得られるかどうかわかりません。しかし,家族の誰かを特定することができれば,Catteneo本人の特定は容易でしょう。

Catteneoにとっては,外堀を埋められてきたという感じでしょう。

ロイターのインタビューによれば,Catteneoは家族には何も言っていないと答えているようです。しかし,彼(又は彼女)が19歳なら,そろそろパパやママに相談しておいたほうがよさそうです。もっとも,子供がセックスベッドを違法コピーしていたと知ったら,さぞ両親は驚くことでしょう。

2007年8月30日木曜日

セカンドライフにID認証システムが導入

重要なニュースが入ってきました。
リンデン・ラボの公式ブログでセカンドライフにID認証システムが導入されることが告知されました。

ID認証はまず本日よりベータ版がSIMオーナーに向けて開始され,その後,正式に導入がされるそうです。

このID認証システムは,従来言われていた年齢認証の意味があるのはもちろんで,これによって18歳以上であるとの証明がない者は,アダルトコンテンツなどが置いてあって,土地所有者が未成年者に不適当として立ち入りを制限した区域には立ち入れないことになります。

しかし,重要なことは,このシステムは,セカンドライフ内での取引の安全の確保も目的としていることです。

前に,インターネットの「匿名性」が仮想世界内での法の適用を困難にしていることをブログで取り上げました。
ID認証システムの導入は,この「匿名性」に制限をかけることを意味します。

リンデン・ラボによれば,このID認証システムの利用は,各人の自由にまかされているということです。
しかし,取引の相手方としては「匿名」な相手方よりも,「ID認証」された相手方が適当であることはいうまでもありません。
もし,SL内銀行のオーナーが「ID認証」されていなかったら,その銀行に多額の金を預けるでしょうか?
したがって,このシステムが導入されたら,SL内銀行のオーナーや証券取引所のオーナーだけでなく,ある程度規模の大きな経済活動をするためには,その資格としてID認証が求められることになりそうです。

リンデンによれば,ID認証によって得られた個人識別情報は,裁判所の命令によって開示されることがあるということですから,もし,訴えたい相手がID認証をしていたなら,今までのようにIPアドレスから相手方を特定して訴訟をするなど面倒なことをしないでも,相手方を特定することができることになります。

リンデン自体は,ID認証によって得られた個人情報を保存しないというのですが,これは社会保障番号などの原データということでしょうね。年齢データがリンデンのデータベースにないと行動の制限をしようがないですから,年齢データは保存されることは間違いないでしょう。ほかの識別情報はどこまで保存されるか不明ですが,コミュニケーションの信頼性を向上させるという目的が上げられていることからすれば,リアルの氏名,住所などは保存されてしかるべきでしょう。あるいは,認証プロバイダのほうに保存されているのかもしれません。このへんはもうちょっと情報を集めてみたいと思います。

免許証番号などで正確な認証ができるのか疑問の声もあり,具体的に手続がどう運用されるのか,プライバシーがきちんと保護されるか心配な面もありますが,正式導入まで引き続き注目していきたいと思います。

2007年8月29日水曜日

仮想世界で生涯の友人や恋人をつくる?

英国のノッティンガム・トレント大学(Nottingham Trent University)は,世界のオンラインゲーマー1,000人を対象した調査の結果を発表しました。回答者のほぼ半数の好きなゲームがWorld of Warcraftだというので,セカンドライフにどの程度当てはまるかはわかりませんが,面白いのでご紹介します。


原文

日本語訳

これによれば,調査対象者の4分の3は仮想世界で親しい友人を作っており、ほぼ半数は現実生活でも会っており,10人に1人は肉体関係に進んでいるということです。

この種の統計は,対象者の選び方,質問の仕方などによって,答えが変わってきますので,話半分に聞いておくくらいが丁度よいと思います。それにしても「10人に1人云々」はちょっと多すぎるような気がします(リアルで会うまでになった人10人のうちの1人ということかもしれませんが。ちょっと原データを見ないと分かりません。)。

しかし,仮想世界の関係がかなりの確率で現実の関係に発展していくことについては,直接的,間接的に経験することからみて,数字の大小はともかく,ある程度は当たっているような気がします。

40%の人が微妙な問題は現実生活の友人よりもオンラインの友人相手に話すほうがいいと答えているのも,面白いと思いました。
面と向かって話せないようなことでも,かえってオンラインだと話せてしまうというようなことがあるのかもしれません。

いずれにしても,仮想世界の人間関係と現実世界の人間関係について,その相互関係とか,両者の関係性の相違などについて,研究するのも面白いかもしれません。いままで仮想世界の社会システムに注目してブログを書いてきましたが,今後は,仮想世界の中での個々の人間の心理,行動様式なんかについても取り上げていこうかなと思います。

2007年8月25日土曜日

仮想世界と法

【1 仮想世界は無法地帯か?】

よくセカンドライフのような仮想世界は無法地帯であるなどということが言われます。しかし,これは厳密な意味では正しくないと思います。
仮想世界のキャラクターを動かしているのが現実世界の生きた人間であり,その人間に現実世界の法律が適用されている以上,仮想世界で生じた様々な紛争も結局は現実世界の人間同士の紛争に還元されます。要するに仮想世界といっても,単に現実の人間同士の,メールやチャットなどと同じような通信手段にすぎません。特徴といえば,メールなどと異なり,同時に(不特定)多数の人との関係が生じ得るということにあるだけでしょう。

では,仮想世界にも法があるはずなのに,一見して無法地帯のように思えるのはどういうわけでしょうか?

最近,セカンドライフ内のいろいろな法律問題を考えるにつれ,仮想世界の問題は,それに特有の新しい問題もありますが,もともとインターネットの世界で生じていた問題が形を変えて現れているものが多いのではないかという考えに行き当たりました。
仮想世界の法の施行を難しくしている要素もそのようなところにあると思います。

【2 匿名性とボーダーレス】

仮想世界の法の施行を難しくしているのには,インターネットの世界の次の2つの特徴が大きく影響していると思います。

 1 匿名性
 2 ボーダーレス(インターネットの世界には国境がない)

次のような事例を考えればわかりやすいでしょう。
セカンドライフ内で,日本人だけで構成しているリアルの素性の判っている人同士のグループがあったとします。このグループ内で争い事が生じて話し合いがつかず,それが法律的な紛争に発展したとしても,日本の裁判所に訴えて法的な解決を求めることができます。

ところが,どうでしょう。もし,相手のリアルの素性が判らなければ,仮に日本人と判っていたところで訴えようがありません。前に,Eros LLCの訴訟の記事で取り上げたように,リンデン・ラボからIPアドレスとタイムスタンプの情報の開示を受けて,さらにインターネットプロバイダーから登録情報の開示を受けて,PCを特定していくほかありません。その大変さについては,いうまでもないでしょう。これが「匿名性」の問題です。
なお,日本の裁判所は,その権力が及ばない国外の法人であるリンデン・ラボに情報開示を求めることはできないので,日本で訴えを起こすことは米国で訴えを起こすよりも困難かもしれません。

仮に,相手のリアルの素性が判ったとしても,外国人であった場合はどうでしょう。どこの国で裁判するかの問題があります。外国で裁判するとなれば,当該国の弁護士に依頼する必要があり,外国で信頼できる弁護士を捜すのが非常に困難な作業であることは言うまでもありません。仮に,日本の裁判所が訴えを受理してくれたとしても,相手の財産が相手国にしかない場合,結局強制執行をしようと思ったら,相手国の裁判手続を利用するほかありません。まあ,たいていの人は裁判を諦めることになるでしょう。これがボーダーレス(国境がない)の問題です。

これらの問題は,仮想世界だけの問題にとどまらず,インターネット世界全体の問題です。もちろん,匿名性の問題についてはプロバイダー法で発信者情報の開示が定められたように各国政府ともインターネット上の権利侵害に対する保護に関して立法上の配慮をしていますし,国際的な私人間の紛争についても,現在国際的な規範に乏しい裁判管轄や準拠法についてハーグ国際私法会議などで各国政府による条約化に向けての動きなどがありますが,インターネット世界の紛争解決のシステムとしてある程度有効なものが確立されるのは,かなり未来のことのようです(それがあるとすればということですが)。

【3 契約による秩序の形成】

現実世界の法が十分機能していないとして,仮想世界に法的な安定性のある社会システムを構築するにはどのようにすればよいのでしょうか?セカンドライフを例にとって考えます。

方法としては,「契約」(ここでは1対1のものだけでなく,集団的な合意も含めています。)による法秩序の形成しかないでしょう。「契約は守られなければならない(pacta sunt servanda)」はローマ法以来の法原則ですが,強制力のある法秩序の形成が困難である以上,合意による秩序を形成するしかないと思います。

住民間の合意による秩序形成

前に,セカンドライフの中でCDSという自治政府を作っているSIMについての記事を書きましたが,こうした動きが住民全体に広がっていき,大きな住民自治組織ができる可能性があります。そして,各住民自治組織の中で,住民の合意によって規範が形成されていくことが考えられます。日本人のグループにも一部そういうことをしているグループがあるようです。こうした規範に厳密な意味での強制力はないですが,規範から逸脱することは,最終的にはその集団から排除されることになるので,その意味での強制力はあるといえます。
問題は,こうした規範が形成されるとしても,当該集団の外の住人には,何らの影響力がないということです。また,同国人など共通の文化・風習を持った人たちのグループなら容易に合意形成も可能だと思いますが,異なった国の人が混在している地域(ほとんどのメインランド)では合意形成が困難なこともあるでしょう。

リンデン・ラボによる秩序形成

ユーザーはセカンドライフのサービスを受けるとき,リンデン・ラボとサービス提供契約を結びます。これによって,利用規約(TOS)及びコミュニティスタンダード(ビッグ シックスとして知られています。)を守る契約上の義務が生じ,これに違反すれば,契約に従って警告,アカウント停止,追放などの処分を受けることになります。これも契約の一種ですが,全ユーザーを対象にするものであり,契約に違反すれば最終的には契約が解除されますので,法秩序の形成としては最も有効と思われます。

迷惑行為は禁止されているのに,現実性のない高利を約束して金を集めることは禁止されていないなど矛盾に感じられる部分もありますが,現在でもリンデン・ラボによって最低限の法秩序は確立されています。例えば,ハラスメント被害を受けた場合,リンデン・ラボに当該違反者を報告して処分を受けさせることができるので,一応平和が保たれているといえます。

しかし,ここには問題もあります。リンデン・ラボとの契約は,ユーザーは選択の余地がなく,受け入れてセカンドライフをするか,受け入れずにセカンドライフをしないか,どちらかしかありません(附合契約といいます。)。これらの契約が現実世界の法律によって無効とされる余地もありますが(仲裁条項が非良心的とされて無効になった事例),そうでなければリンデンはいつでも自由に改変可能です。ギャンブル禁止のときも問題となりましたが,何の事前告知もなく,突然に新しい規制が行われるということがあります。この世界では,リンデン・ラボがいわば独裁者となっているといえます。

やはりコミュニティスタンダードのような住民相互の問題を規律するものの改変に関しては,ユーザー側にも発言権を持たせる必要があるのではないかと思います。リンデン・ラボが自主的にユーザーの意見を聞くことも期待したいのですが,ギャンブル禁止やGINKOでの対応ぶりからすれば,リンデン・ラボに啓蒙君主を期待することは無理のような気がします。それをするためには,やはり革命・・・というと過激ですが,ユーザーが集団化して,リンデン・ラボと交渉していくことが必要になってくると思います。まだまだ小さい動きですが,一部でそうした動きもあるように思います。住民1人1人が運営会社の株式を取得し,仮想世界の運営について発言力を高めていくという方法も考えられます(リンデン・ラボが株式を上場しないのはそれを避けるため?)。

ともかく,仮想世界が現実世界のように大きく発展していくとすると,いずれは仮想世界の運営について住民主権が確立される必要があると思います。そうしてできた規範は民主的なものとして正当性があり,運営会社による法施行の裏打ち(仮想世界からの追放処分による強制力)もあるので,安定した法秩序を築くことが可能となるでしょう。
まあ,どうしても仮想世界の中だけでは解決できない問題が残るはずで,現実世界の裁判に訴える必要がなくなるとは思いませんが,ある程度は仮想世界内の秩序維持システム又は紛争処理システムが機能する可能性があります。

2007年8月18日土曜日

仮想世界と恋愛

1 はじめに

オンラインゲーム歴が長くなると,オンラインゲームの中で知り合って恋愛しているとか,果ては結婚したとか,また,逆に失恋したとかいうことをよく聞きます。オンラインゲームで恋愛が成立することは所与のものとしていいと思いますので,さらに進んで,オンラインゲーム内の恋愛にどういう形があるのかについて,遊び半分で議論してみたいと思います。

ここでいう仮想世界は,セカンドライフのようなものだけでなく,オンライン上でキャラクターを操作して遊ぶ多人数ゲーム(MMORPG)も含めて考えます。

なお,「仮想世界の恋愛」と,「仮想恋愛」とは区別する必要があります。
仮想恋愛は,それが現実の対象(アイドルやクラスメイトなど)であろうと,架空の対象(ゲームキャラなど)であろうと,その対象との恋愛を空想して,頭の中で恋愛の気分を味わうことを言います。仮想世界の恋愛は,仮想世界のキャラを通じて,あくまでも現実の恋愛をすることを言います。


2 分類

リアル恋愛との関係に着目して,試しに次のように分類してみました。

    1) リアルリンク型
      a) リアル先行型
      b) リアル追随型
    2) リアル分離型
      a) 非ロールプレイ型
      b) ロールプレイ型

3 リアルリンク型-リアル先行型

これは例えば,恋人や配偶者を同じゲームに引き入れるような形です。もともと,リアルで知り合っているのですが,その通信手段又は共通の趣味として,仮想世界を利用するような場合です。
リアル多忙でスケジュールが合わせられない場合,遠距離恋愛の場合などは,仮想世界でのコミュニケーションが有効でしょう。3Dのキャラ同士で空間を共有するのは,電話やメールよりも気持ちが通い合うかもしれせん。特にセカンドライフは,恋人同士がするようなアニメーションをアバタ同士にさせることができるので,そういうのが好きな人にはよいかもしれません。

4 リアルリンク型-リアル追随型

仮想世界で知り合って,まず,仮想世界内で恋愛を始め,それがリアルの恋愛に発展する類型です。仮想世界ではただの知り合いで,オフ会で会ってそこで恋愛を始めたようなものは,むしろリアル先行型かもしれません。

仮想世界で恋愛を始めることはなかなか困難な問題があります。相手を判断する情報が,主として相手の打った文字の情報(時には音声)しかないからです。恋愛においては,自分を良く見せたいという心理が働くことがあり,積極的に嘘をつかないまでも,相手の誤解に乗じたり,都合の悪いことを言わないということはあり得ます。リアルでもそうですから,仮想世界では,これに一層バイアスがかかる可能性があります。
また,人は見えない部分を想像力で補います。仮想恋愛とよく似ていますが,相手のリアルについて自分の願望を投影して,実際以上に美化してしまう可能性もあります。

仮想世界で気のあった相手とリアルでも会ってみたいと思うのは自然な心情かもしれません。その場合,仮想と現実のギャップをどう埋めていくかが問題になってきます。

少々古い話ですが,ユーガットメールという映画がありました。インターネットで知り合った男女が,実際は商売敵同士であったという話です。映画のほうは,なぜかハッピーエンドになるのですが,現実にはそうはいかないでしょう。
極端なケースでは,善良な人だと思ったら,犯罪者だったということもあり得ます。

そういうリスクもあるわけですが,現実世界で知り合うチャンスのない人と知り合うことができるというメリットもあります。

何も恋愛しようと思ってゲームをしている人は少ないと思います。いつもいっしょに遊んでいるうちに気がついたらそうなっていた,というのが多いような気がします。その場合,次のステージに進もうと思ったら,上のような問題を意識して,自分の気持ちをよく整理しておく必要があると思います。リアルで会う場合は,そこで新しく始めるような感じのほうが,よいのかもしれません。

5 リアル分離型-非ロールプレイ型

これは仮想世界内の恋愛を,リアルとは切り離して行う類型で,(意識的には)ロールプレイをしていない場合です。
ロールプレイはしていなくても,「恋愛ゲーム」に近いようなものかもしれません。お互いに割り切ってやるのなら,第三者がとやかく言うことではないのかもしれません。前にいった仮想恋愛じゃないけれども,リアルから遊離して,相手の姿を空想しながら醒めない夢を見るのも悪くないかもしれません。

リアルに進もうと思っても,いろいろな障害がある場合,リアルでは遠距離,極端には外国に住んでいるとか,リアルでは別にパートナーがいるような場合など,リアルに進もうと思ってもできず,こうした形態を取ることがあり得ます。
この類型とリアル追随型との境界はあいまいです。ここからリアルに進んでいく場合もあり得ます。

6 リアル分離型-ロールプレイ型

これは仮想世界内の恋愛を,リアルとは切り離して行う類型のうち,意識的にロールプレイをして行う場合です。

典型的には,性別を偽って同性とつき合うような場合(ネカマプレイ,ネナベプレイ)があります。
セカンドライフ内のエスコートさんも男性が多いといううわさがあります。
そのようなものでなく,性別の違うキャラで遊んでいて,異性を好きになってしまったが,相手は同性と思っているという場合もあります。こうした場合,誤解した状況を放置していると最後は悲劇になるようです。

ロールプレイ型になると思いますが,セカンドライフ内で性倒錯的なプレイを行う人たちがいます。リアルで同じことをやっていたら,むしろ非ロールプレイ型ですが,リアルでは一応ノーマルなのに,仮想世界では違う場合をいいます。まあ,心の奥にそういう欲望が潜んでいるのかもしれませんが。ただ,最近,セカンドライフでこうした表現について厳しい規制がされるようになっているのは前に取り上げたとおりです。

7 最後に

現代社会では,仮想世界が実体化していく一方で,現実世界が希薄化していくような感覚があります。仏教では,もともと現実の肉体を仮の入れ物と見る感覚もあります。リアルの恋愛自体も現世というはかない夢のような世界の出来事なのかもしれません。

「夢とこそ 言ふべかりけれ 世の中に うつつあるものと 思ひけるかな」
紀貫之・古今和歌集

2007年8月16日木曜日

SL銀行についてLL社の見解(夏の夜の夢)

うだるように暑いある夜のこと・・・
ブログネタを仕入れるために,いつものように公式ブログを見ていました。

セカンドライフの経済

辞書を引き引き,読んでいると暑さのためか意識が薄れてきました。
目の前がぼんやりとしていきます。
いつのまにか,どこからか声が聞こえてきました。

どうやら,誰かが私に代わって公式ブログを翻訳してくれてるようです。

公式ブログの最後の段落は,銀行規制について書いてあるようですが・・・
「Probably the most important point is that real-world banks are regulated by real-world laws. Linden Lab does not intend to recreate or subvert real-world laws in any way.We are not aware of any institutions in Second Life that are insured by the Federal Deposit Insurance Corporation or similar governmental agencies in other countries. We caution our residents to be wary of anyone offering extremely high interest rates at no risk, either in the real world or in Second Life ? if it sounds too good to be true, it probably is.」(原文)

声が言います。

「たぶん大事なのはね,リアルの銀行はリアルの法律できちっと決められてるってことにあるの。でもリンデンラボはね,そんな法律をSLの世界に持ち込んで,どうのこうのするつもりなんてないの(だって,そんなのめんどいし,大変でしょ?)。SLの金融機関で連邦預金保険機構とかの預金保険がついているところなんてないわよね?「すごーく高い利息をつけてあげます。リスクはゼロですよ」って言ってくる人には気をつけてね。リアルでもSLでもね。だって,うまい話には裏があるって,よく言うじゃない。(ね? GINKOに騙されたのはオバカだけなのョ アタシ,し~らないっと)」

ちょっと言葉遣いが変です。一体誰なのでしょう?
はっと気がつくと,声は消えていました。

どこから,どこまでが夢だったのか・・・
公式ブログの記事そのものも夢のように思えてきました。

2007年8月10日金曜日

Ginko支払停止- この事件から得られるものは?

SL最大の銀行Ginkoが預金者への支払を停止しました。
Ginkoは,強制的に預金をすべて無期限債(償還期限無期限で金利のみ払う債券)に転換すると告知しました。
この経緯は,sheilaさんのブログ「Second Life 体験&探検」がくわしいので,参照下さい。

1 Ginkoの今回の措置の問題点

Ginkoと預金者の関係は契約関係ですが,当事者の一方が他方の同意なしに契約内容を変更することはできないはずです(契約の中で一方的変更権を定めてあれば別ですが)。したがって,無期限債への転換に同意できないのであれば,預金者はこの告知には拘束されないと思います。

それに,このような重大な変更をするのであれば,預金者の預金がどのように使われていたのか(投資運用していたとする,その具体的な内容)を全て証拠とともに開示し,預金者を納得させる必要があると思います。

もっとも,こうなっては何を言っても空しいだけかもしれません。

2 リンデンラボの態度

Ginkoはかなり前から不安視されていましたが,リンデンラボは最後まで何もしませんでした。これに警告を発することもなかったと記憶しています。
Rosedale氏の発言を見る限り,リンデンラボは,SL内銀行について何の規制もしてこなかったし,今後も規制をする気はないようです。

3 Ginkoの事件から何を学ぶのか?

今回のことからは,リアルの素性のしれない会社や人に安易に財産を預けてはいけないという,ごく当たり前の教訓が導かれるだけなのでしょうか?「インターネットの世界ではよくあること」ですまされてよいのでしょうか?

この世界は自由放任が売りだったかもしれません。しかし,仮想世界が現実世界と同じように発展するためには(それはセカンドライフではないかもしれませんが),やはり最低限のルールが必要です。

現実世界では,銀行などについては免許制になっており,預金者を保護するために政府が監督しています。免許制にしないまでも,リアルの人格を特定する情報の開示,資産運用の開示などを義務づけるような最低限のルールを決めておくのも悪くないでしょう。

broadly offensive contentなどを取り締まるより,そっちのほうが重要ではないかと思うのですがどうでしょう。

2007年8月7日火曜日

リンデンラボはCatteneoの個人情報を開示

前に,ユーザー間訴訟の問題点で取り上げましたが,リンデンラボは裁判所の開示命令に応じて,Catteneoの個人情報を開示した模様です。

ロイターの記事

具体的にどのような内容が開示されたかについては明らかにされていませんが,IPアドレスやチャット履歴などの開示を求める裁判所の命令にリンデンラボは素直に従ったようです。この開示された情報から,Eros LLC側の弁護士は,Catteneoがアメリカ人であるとみているようです。

Eros LLC側の弁護士によれば,更にインターネットプロバイダーに開示命令を出すように求めていくそうです。
おそらくリンデンラボやペイパルから開示されたIPアドレスによって,Catteneoの使用プロバイダーが特定されるので,その登録情報からPCを特定しようとしているのでしょう。

これによって被告を特定することに成功すれば,今後の重要なリーディングケースとなると思われます。

成り行きを見守っていきたいと思います。

2007年8月3日金曜日

どうしてセカンドライフ内でディスカッションしないの?

最近,セカンドライフのことがメディアで取り上げられることが多くなりました。
一般マスコミの取り上げ方は,どちらかというとビジネス面に偏っているような感じがします。やたら企業や大学の進出や,リンデンドルが換金できることなどを強調しているように思います。

その一方,セカンドライフは言われているほど流行っていない。実際に関心を示す人は少ないなどというアンケート結果や否定的な論調も出ています。

否定的な論調の人を見ますと,ちょっとセカンドライフに入って,あちこち見て回って,やがて飽きるという感じの人が多いように思います。

セカンドライフの重要な楽しみの一つはやはりコミュニケーションを楽しむということにあると思います。そういった人間関係ができる前にセカンドライフをやめてしまって,本当にこのゲームを理解したといえるのでしょうか?1人でフラフラ世界を回っていても,つまらないのは当たり前で,それは現実世界でも同じことでしょう。

この前,それまでメールのやり取りだけしかしていなかった人と初めてゲーム内でアバタ同士としてお会いしたことがありました。そのとき,ほんとにリアルで対面してお話ししているように感じました。メールやチャットだけでは味わえない感覚です。もちろん,リアルで会えばよいのですが,それがすぐにできないときもあります。このゲーム内で会えば,また違う感じがします。そのときは,ほんとに新しい通信手段が増えたという感じを受けました。

最近,CNET Japanの「オンラインパネルディスカッション」でセカンドライフが取り上げられているのを見ましたが,否定論の人は,コミュニケーションを楽しむところまで行っていないように感じました。

ところで,このパネリストの人たち,こんな伝言ゲームのような片方向のディスカッションでなく(ディスカッションというに値しないと思います。),どうしてセカンドライフ内でディスカッションしないんでしょう?
議論の発展性がないとつまらなくないですか?
チャットでもできますけど,セカンドライフでやる方が数倍面白いですよ。もちろん,リアルで会えるほどスケジュール調整できればいいですけど。そうでないなら,せっかくセカンドライフを話題にしているのですから,セカンドライフ内でやったらどうでしょう?

2007年8月1日水曜日

e-Justice Centre(つづき)

固い話題ばかりになってしまったので柔らかい話題を

e-Justice Centreの制服は
ポルトガル人のデザイナーMaria Gherardiによってデザインされてます。

Mg fashionのサイト
なかなかよいですね。
ADRというと堅苦しい感じを予想してましたが,
お国柄でしょうか?

お披露目ではやはりポルトガル人モデルで有名なAna Lutetiaが身につけています。

気合い入ってます。
やはり見かけは大事ですね。

何か期待できそうです。

e-Justice Centre

以前バーチャル裁判所構想について取り上げましたが,
どうもこれが現実化しそうです。

1 オンラインADR

その前にオンラインADRのことを書く必要があります。

ADR(Alternative Dispute Resolution)とは裁判外紛争解決のことで,裁判によらず,調停や仲裁などによって紛争を解決することをいいます。

このADRサービスをオンラインで提供している機関があることを知りました。

ADRJapanのサイトにいくつかが紹介されています。
利用条件や費用は各団体によって異なっていますが,オンライン上のトラブルにおいては,紛争当事者が外国や遠隔地に住んでいることが多いですから,こうしたサービスの利用が検討されてもよさそうです。

2 ポルトガル司法省の試み

最近,セカンドライフの中でADRサービスをするものができたそうです。

ポルトガル司法省が,2つの大学の協力を得て,セカンドライフ内にe-Justice Centreを開設し,調停や仲裁のADRサービスを提供するそうです。

利用対象者は,ポルトガル人に限られず,セカンドライフの住人なら誰でも可能なようです。
使用言語はポルトガル語,英語を選択できるようです。
手続は基本的には,UNCITRAL国際商事調停モデル法に準拠して行われるそうです。
使用料金は紛争対象の経済的利益を基準として定められているようで,まあ合理的な金額と思われます。

なかなか面白そうな試みですし,公的な機関がやるのがよいですね。ポルトガルなかなかのものです。日本の法務省はこんなこと絶対できないですね。

こうしたADRは,お互いに理性的な話し合いができることが前提ですから,たちの悪い著作権侵害を行っている者を相手方にするには適当でないかもしれませんが,裁判での解決の困難性は前に取り上げたとおりですから,結構使えるかもしれません。

この試みが成功することを祈ります。

e-Justice Centreの建物













会議場の様子


ギャンブルを除去することがなぜ重要だったのか?

「リンデンラボにとってギャンブルを除去することがなぜ重要だったのか?」というブログを発見しました。

わたしの見方と共通している部分があるように思います。

システムの安定性への懸念

この数日間セカンドライフでは暗い話題が続いているようです。

GINKOの取り付け騒ぎがありました。もともと,どのように資金運用しているのか明らかにされておらず,経営の健全性を疑問視されていたGINKOですが,預金引き出しを停止し,その後も引き出しを制限しました。

WSE(World Stock Exchange)のハッキングのニュースもあり,セキュリティを強化した新システムについても不具合が出て利用者に不評のようです。

ここらへんの経過についてはSecond Life 体験&探検をご参照下さい。

(その後GINKOはなんと別の株式市場AVIX(Allenvest International Exchange)を取得しようとしていたことが分かったようです。これは断念されたようですが,一体どうなっているのでしょうか?  Virtually Blindの記事

それと,最近セカンドライフはシステムダウンが相次いでいます。

これらの問題と,前に取り上げたギャンブル禁止の影響も重なり,セカンドライフ内で消費されるドルの量が最近低下しているとのレポートがあります。
Second Life Heraldの記事

最近,セカンドライフがメディアに登場することが多くなる反面,否定論も多く目にします。

わたし自身は,この世界を結構楽しんでおり,セカンドライフのような仮想世界が今後も発展する可能性があることは肌で感じています。しかし,セカンドライフ自体が発展するかどうかについては最近の様々な出来事を見ていますと,不安にならないわけではありません。

この世界が発展するためにはやはりシステムの安定性が必要です。

第1に物理的なシステムが安定している必要があります。

頻繁にダウンする,持ち物やリンデンドルが突然無くなってしまう,ちょっとイベントで人が集まると固まってしまうというのでは,安心して活動ができません。
もっとも,ここらへんは,リンデンラボに改善の意欲が感じられますし,まだまだ技術的に発展途上だと思いますので,暖かい目で見守っていきたいと思います。

第2に社会的なシステムが安定している必要があります。

ある日突然に規則が変わり,今まで許されていた経済活動ができなくなる,著作権が保護されているといいながら,侵害されてみれば,結局はリアルで裁判しなければ解決しない,消費者保護の仕組みもない,詐欺的な経済活動を取り締まる仕組みもないというのでは,安心して経済活動をすることができないと思われます。

リンデンラボは,ユーザーの自治に任せているといいますが,要するに放置しているに等しい状況です。それにリンデンラボには規約改正やアカウント停止処分などの場合に,適正手続(Due Process)という発想が不十分なように感じます。

リンデンラボが非公開企業で,財務内容が開示されていないのも問題です。我々は株主ではありませんが,我々のセカンドライフ内での財産の価値はリンデンラボの信用力に依存しているので,知る権利があるはずです。

ここらへんについて,リンデンラボの関係者はどのように考えているのでしょうか?

2007年7月31日火曜日

ギャンブル全面禁止の理由

リンデンのギャンブル禁止方針については,反発の声も大きいようです。
SL-Newspaperの記事

リンデンを責めるのは筋違いであって,インターネットギャンブル禁止法を立法した米議会を問題とすべきであるとする見解もあります。
Second Life Heraldの記事


ところで,リンデンラボはどのような理由からセカンドライフ内のギャンブルを一般的に全て禁止したのでしょうか?
公式ブログの記事を何度か読んだのですが,英語力がないためか今ひとつ理解できません。

Safe Port Actのインターネットギャンブル禁止条項(インターネットギャンブル禁止法)は,個々のギャンブルのプレイヤーの行為を直接に規制するものではないようです。
金融機関がオンラインギャンブルサイトとの出入金のやりとりをすることを禁止したり,インターネット事業者がオンラインギャンブルサイトを運営したり,ユーザーを誘導したりすることを禁止するものです。
当然のことながら,リンデンラボは,オンラインギャンブルを提供していないという立場をとってきましたし,今回の公式ブログでもそのことに言及してあります。

また,この法律はその規制目的からいって「善良な合衆国民をインターネットギャンブルの害悪から保護するもの」で,米国外の人同士がやるものであれば規制対象外のはずです。
(細かい話ですが,これは連邦法なので,同一州民同士の賭けは規制していません。それはその州の立法政策の問題であって,連邦の問題ではないからです。もちろん,州法違反になる場合はあります。)

リンデンラボは,従前,カジノの広告を禁止するだけの措置をとっていましたが,その前提としてこれまでの運営が違法ではないという立場をとっていたように思います。

それにも関わらず,全面禁止しなければならない理由はなんでしょうか?公式ブログを読んでも,これが違法だから禁止するとは言っていないように思います。
公式ブログのFAQを読みますと,リンデンのビジネス上の必要という言葉で正当性を説明しようとしている一節が鍵になるような気がします。

多くのカジノがセカンドライフ内で営業していましたが,セカンドライフでは本人確認を厳格にやっているわけではありませんから,事実上米国民がやりたい放題できるようになっていたことは否定できないように思います。これを容認するとインターネットギャンブルを規制した効果が減殺されます。リンデンがそのような状況を認識しつつ,何も規制しないということであれば,事実上誘導しているのと同視できるという解釈が成り立つ余地があるかもしれません。また,決済にリンデンドルが使用されている点も問題になります。法的にグレーな領域だと思いますが,結局,リンデンラボは米司法当局と戦うのではなく,厳しく規制することによって,法的リスクを回避し,「良識ある米国市民」からの社会批判も封じようと考えたのではないかと思われます。もちろん,司法当局と取引があった可能性もあります。

カジノ経営者はリンデンラボのよいお客でしたから,当然に経済的損失を考慮しなかったはずはありません。しかし,セカンドライフがより成長するために,目先の利益ではなく,できるだけ法的規制や社会批判を受けないようにしようと考えたのかもしれません。

もはやセカンドライフはセックスとギャンブルが売りのゲームではないと言いたいのでしょう。

そうすると,性的表現についても更に規制がされる可能性が否定できません。これは前にも取り上げたことですが,この世界がより多くの人の目に触れるようになるにつれ,今後リンデンの規制が厳しくなっていき,普通の「健全なゲーム」と同様になってしまうかもしれません。

casino worldというsimの現在の状況
野原になっています。

2007年7月29日日曜日

情報処理推進機構のレポート

ネットを巡回していたら,独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のニューヨーク事務所からのレポートに「仮想世界を巡る法制度的な議論」と題して,セカンドライフの法制度上の問題(著作権や課税問題)などを取り上げているのを発見しました。

「仮想世界を巡る法制度的な議論」

このブログで取り上げた話題とも関連する議論がされていて,興味深いのでリンクしておきます。

これは4月のレポートですが,検索能力が低いためか,今ごろ気がつきました。

2007年7月27日金曜日

セカンドライフ内のギャンブル規制

急にブログの更新頻度が高まりましたが,ただの気まぐれです(w)

リンデンラボはセカンドライフ内でのギャンブル行為を禁止する方針を打ち出したようです。
公式ブログの記事

規制対象となるものは,
偶然によって勝者が決まるか,現実世界のスポーツの結果によって勝者がきまるもので,勝者にリンデンドル又は現実世界の通貨が与えられるものと定義されています。
バカラ,ブラックジャック,ポーカー,スロットマシーンなどが例示されています。野球賭博などスポーツの結果への賭けも含まれるようですね。

これに違反したら,関連するオブジェクトの除去,アカウントの停止又は剥奪などの厳しい処分がされるとのことです。

リンデンは米国で成立したインターネットギャンブル禁止法を意識して,カジノの広告を禁止していましたが,今回,ギャンブル自体を禁止するという方針を打ち出したのは驚くべきことと思います。

前に性的表現の規制でも書いたのですが,このゲームの認知度が高まるにつれ,社会批判を恐れて,リンデンラボは,最も厳しい国の基準を採用しようとしているように思われます。

2007年7月26日木曜日

著作権侵害に対するリンデンラボの態度(補足)

前のブログを書いた後,ネットを巡回していたら,
古いものですが,リンデンラボの関係者が著作権侵害についてインタビューに答えている記事を発見しました。

4Gamer.netの記事(2006/09/29)

この記事,前に見ているはずなのですが,当時はセカンドライフに興味がなかったので読み飛ばしていました。

「著作権問題にはどう対処するのか?」という問いに対して,
リンデンのCTOであるCory Ondrejka氏は,
リンデンは,そうした紛争には関わらず,要請があればDMCAによって処理するとしています。
また,場合によって侵害者のIPアドレスを著作権者に渡したりするような対応をするなどとしています。

前々回のブログで取り上げたEros訴訟での開示命令へのリンデンの対応が注目されていますが,上記の答えによれば,IPアドレスを開示することになるのかもしれません。

hikoさんのブログで取り上げられたリンデンの応対ぶりも上記の答えのままですね。

著作権の間接侵害による責任追及の可能性

前回,ユーザー間訴訟のことを書きましたが,
日本人のWebサイトでも,セカンドライフ内の著作権侵害が取り上げられているのを目にするようになりました。

参考サイト
つくらない人のためのSecond Life
うのまらま


このような場合,直接侵害者を訴えることの困難さについては,前回のブログで取り上げたとおりです。
それに,せっかく被告を特定して勝訴判決をもらっても,被告に強制執行される財産が何もなければあまり意味がありません。偏見かもしれませんが,セカンドライフのようなゲーム内で著作権侵害を行っているような人に大した財産があるようには思えません。このへんも最終的に問題となります。

それでは,リンデンに何らかの責任を追及することはできないのでしょうか?
リンデンは,素性はよく分かっていますし,勝訴したら取りはぐれがないでしょうから,もし責任を追及できたら,ユーザー間訴訟のような困難さはないと思われます。


著作権の間接侵害の責任追及に関しては,
ViacomがGoogle(YouTube)に10億ドルの損害賠償を求めた訴訟が注目されます。
japan.internet.comのニュース
GoogleはViacom の訴えに対する反論として,デジタルミレニアム著作権法(DMCA) の512条を持ち出そうとしているようです。これはセーフハーバー条項と呼ばれていて,著作権者の正式な届出に対応して著作権を侵害しているコンテンツを削除すれば,法的責任が免除されるというのが基本的内容となっています。Googleがこの条項の適用を受けるかどうかについては,様々な議論があるようですが,リンデンに間接侵害の責任追及をする場合にも,この条項が問題となる可能性があります。


hikoさんのブログを見ていますと,リンデンは,DMCAに基づく“Notice & Take Down”による削除手続で対応しており,このような手続に従っている限りは,セーフハーバー条項の適用を受けるということを前提としているようです。

したがって,リンデンの責任を追及するためには,例えば,ソフトの欠陥によって違法コピーを容易にしたとか,Copybotのような規約違反のツールの使用によって著作権侵害がされているのを知りつつ,有効な対応をしなかったなど,より積極的な関与があることが立証されないと法的責任追及は難しいと思われます。もっとも,単にバグがあるというだけでは法的責任を追及することは困難でしょう。それを知りつつ,容易に是正できるのにしなかったなどということが必要と思われます。

ただし,法的な責任は免れても,もし,著作権侵害が横行し,リンデンが不十分な対応しかしないとなると,このゲーム自体がユーザーから見捨てられる可能性があります。リンデンにそういった問題意識があるかどうか分かりませんが,著作権が保護されることをゲームのセールスポイントにしているのですから,リンデンの姿勢が問われていると思います。

2007年7月21日土曜日

ユーザー間訴訟の問題点

リアルが多忙で更新が滞ってしまいました。

ついにセカンドライフ日本語版ベータが出ましたね。
更新していなかった間に,そのほかにもいろいろなことがありましたが,
私が注目していたのは次の裁判の動きです。
ロイターの記事


1 事件の概要

アダルトコンテンツの企業Eros LLCを経営するKevin Alderman(SL名Stroker Serpentine)が,SexGen Bed(sexアニメがたくさん入ったベッドのようです)を違法に複製されて販売されたとして,SL名Volkov Catteneoをタンパの連邦地方裁判所に訴えました。

Volkov Catteneoの実名が不明であるため,被告をJohn Doe(名無しの権兵衛)としてあります。Alderman側の弁護士によれば,リンデンラボ,ペイパルに対して,裁判所の令状を得て,Catteneoの個人情報,チャット履歴,経済取引上の記録などの開示を要求し,被告を特定していく計画のようです。

しかし,Catteneoは,ロイターのインタビューに答えて,「リンデンラボのファイルには自分の本名は登録されていないし,自分は実世界で固定した住所を持ったこともない。」などとうそぶき,追及の手が自分に伸びることはないとしているようです。

2 ユーザー間訴訟の問題点

セカンドライフが発展拡大していくにつれて,著作権侵害などのユーザー間の紛争も増えていくことが予想されます。しかし,これを裁判に持ち出すためには,大きな問題があることがわかります。
それは,被告を実社会で特定する必要があるということです。
被告の実名と住所が分からなければ,裁判所からの呼出状などの書類を送達することができませんし,そうなれば有効に裁判を始めることができないと思われます。

この問題は,セカンドライフに特有の問題ではありません。例えば,匿名掲示板での名誉毀損など,インターネットの中では,権利侵害を受けても,侵害者を特定できないという問題がつきまといます。このため発信者情報の開示が問題になっているのです。日本でプロバイダー責任制限法が施行され,発信者情報の開示請求が定められたことはご存じの方も多いでしょう。日本でも発信者情報の開示を巡って,いくつもの裁判や仮処分がされているようです。

米国では,Eros LLCの訴訟のように,まず,仮名訴訟を提起した後,裁判所の命令を得て,Webサイトの管理者等に対して,発信者情報の開示を求めることになるようです。この開示命令は,比較的容易に形式審査で発令されるようです。
参考サイト


3 裁判のその後の動き

ペイパル(Paypal)は,裁判所の命令に応じて,Catteneoの個人情報を開示したそうです。
ロイターの記事


開示された個人情報の詳細はわかりませんが,ペイパルの規約によれば,住所,氏名,銀行口座,クレジット番号,IPアドレスなどが含まれるようです。
ペイパルに登録された住所,氏名は,真実かどうか怪しいかもしれません。
これが捜査機関であれば,さらに銀行やクレジットカード会社などを捜査していけば,個人の割り出しができるのでしょうけれど,民間人がそれをやるのは大変ですね。
なお,IPアドレス(とタイムスタンプ)から使用プロバイダが特定され,その登録情報からもPCを特定することが可能なようです。日本のネット犯罪の捜査などではその手法で被疑者を特定しているようです。

リンデンラボも,ペイパル同様に開示命令を受けており,対応が注目されます。
ただ,情報が開示されても,Catteneoは多分偽名で登録してあるのでしょうから,個人の特定は期待が薄いかもしれません。
問題はチャット履歴などが開示されるかどうかですね。

2007年6月28日木曜日

セカンドライフと税金

1 世界の課税の動き
セカンドライフなど仮想世界の経済取引に対して課税が検討されているようです。

例えば,米上下両院合同経済委員会は,近くネット上の仮想社会での経済活動を通じ、個人や企業が得た収益への課税ルールなどに関する調査報告をとりまとめるとのことです。
ITmedia Newsの記事

オーストラリアでの動き
Fairfax Digitalの記事

イギリス政府も米国での調査報告に注目しているようです。
REUTERSの記事

みずほコーポレート銀行の試算によれば,セカンドライフの経済規模(仮想通貨総取引量)は,2007年は約1350億円と見込まれ,2008年には1兆円を超すと予想されています。
この数字は小さな国家のGDPに匹敵する数字となります。このように大量の仮想通貨が流通している以上,国家による課税の動きは当然に予想されたことといえそうです。

2 日本の現行法下での課税の可否

ところで,日本の政府が,こうした仮想世界の経済取引に対して,どのような態度をとっているかが気になるところですが,私が知る限り,今のところ目立った動きはないようです。

ところで,現行法の下でセカンドライフ内の収益に課税することはできないのでしょうか?

例えば,ある個人が,セカンドライフ内でSIMをレンタルしているとします。賃料は,リアルマネーで払ってもよいし,リンデンドルで支払ってもよいという契約になっているとします。その個人が,平成19年度に得た賃料収入の総額が,現実通貨で1000万円,リンデンドルで円換算1000万円とし,リンデンは年度内では未だ現実通貨には交換していなかったものとします。

この場合,現実通貨の収入が課税対象となるのは当たり前のことですが,問題はまだ現実通貨に交換していないリンデンドルの方です。これが収入となるならば,賃料収入だけで2000万円の収入として申告する必要があります。

仮に,リンデンドルを現実通貨に交換した段階で初めて収入となるならば,例えば,次年度にはSIMを新たに大量購入することが予定されるなど,経費が増加することが予想される場合,リンデンを交換する時期を意図的に次年度にずらすことによって,全体の納税額を下げることが可能となります。

所得税法はどうなっているでしょうか?

所得税法36条によれば,
1 その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもつて収入する場合には,その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする。
2 前項の金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額は,当該物若しくは権利を取得し,又は当該利益を享受する時における価額とする。
となっているようです。

ここで問題となるのが,「金銭以外の物又は権利その他経済的利益」という文言です。
従業員に対する現物給与や無償又は低額で貸与された住宅や食事の支給などがこれに当たります。
従業員にストックオプションを付与したときの課税について訴訟で争われたことを知っている方もいると思います。

この文言を素直に読めば,リンデンドルによる収入は,まさに,「金銭以外の物又は権利その他経済的な利益」に該当するといえそうです。

まだ,税務当局がこれについての見解を明らかにしたとは聞いていませんが,諸外国が仮想社会での経済取引への課税の動きを見せる中,日本政府だけが傍観していることはなさそうです。

SL内企業はどんな法人税申告をしているんでしょうか?気になるところです。

以上は,所得税,法人税などの所得課税での問題ですが,
消費税においても,同様のことがいえます。

消費税の課税標準は,課税資産の譲渡等の対価の額,すなわち,資産の譲渡,資産の貸付けや役務の提供について受け取る金額又は,受け取るべき金額ですが,この金額は,金銭で受け取るものに限られず,金銭以外の物や権利その他経済的利益の額が含まれます。

もっとも,私についていえば,SL内で物を買ったとき,消費税(相当額)を支払った記憶はないですね。販売者の方々は消費税はどうしていらっしゃるのでしょうか?

海外法人のサーバー内の取引であることから,まじめに申告しなければ,日本の税務当局に把握されにくい取引であるように思います。ここらへんも問題になるでしょう。

2007年6月17日日曜日

CDSの自治政府

前回バーチャル裁判所のことを書きましたが,
セカンドライフ内で既にそのような試みをしているところがあるようです。

Neufreistadt及びColonia Novaという2つのsimが属するThe Confederation of Democratic Simulators(CDS)という組織では,民主的な自治政府を組織し,憲法などの立法をしているほか,司法組織を作って,住民間の紛争を解決しようとしているようです。

CDSのWebサイト

面白そうだったので,実際にNeufreistadtを訪れてみました。













街の中心部の様子


ここでは,土地の利用規則がかなり厳格に定められていて,
町並みがとても整っています。
西欧的ですね。

地上150ないし170mに位置するので,霧が漂っています。
これは多分その効果を意図して高い位置に町を作っているのでしょう。
西欧の古い町並みという雰囲気がでています。














会議場の様なところに出ました。
ここで,立法その他住民会議が行われるのでしょう。

私が訪れたときは,ちょうどヨーロッパの早朝だったためか,
街に住人の姿はありませんでした。

整然とした町並み
整然とした自治組織
住民は幸せなのでしょうか。

同じ建物の中に次のような掲示を見つけました。














右横は,霧の消し方を書いています。
霧がいやな住人もいるのでしょう。
少し和みました。

日本では,こういう,かっちりとした自治政府はあまり人気がないかもしれません。
でも,新しい試みとして注目されます。

もっとも,実際には議員の選挙や裁判官の任命は困難な作業なようで
CDSのフォーラムでもさんざん議論をしている様子が窺えます。
やはりそれだけのコストを払う覚悟が必要なようです。

(このCDSの記事については,sheila6225さんからの情報が大変役に立ちました。この場を借りてお礼申し上げます。)

(補足)
よく見ると,下の掲示に写っている場所が会議場みたいです。そうすると,上の会議場と思ったところは宴会場かもしれません。

2007年6月16日土曜日

バーチャル裁判所構想

最近,eBayでリンデンドルを購入したユーザーが、アカウント停止措置を受けたようです。
Second Life 体験&探検の記事
アカウント停止処分を受けたユーザーに何らかの規約違反があったかどうかは不明です。

仮に,不当にアカウント停止処分を受けた場合どうすればよいのでしょうか?
リンデンにクレームを出すことは当然ですが,これが受け入れられない場合は,やはり最後の手段としては,裁判ということになるのでしょう。

リンデンラボの規約では,紛争が生じた場合は,サンフランシスコの国際商業会議所の仲裁によって解決するとなっているようです。
いわゆる仲裁条項というものです。仲裁とは、当事者が,私人である第三者をして争いを判断させ,その判断に服することを合意し,その合意に基づき紛争を解決する制度をいいます。この合意があると,仲裁手続によらずに,いきなり訴えることはできないことになります。

ところが,この仲裁条項について,最近,連邦裁判所で,この条項の効力を否定する判決がされました。
The Secondlife Newspaperの記事

一般消費者とのオンライン契約に関して,こうした仲裁条項が非良心的とされて,効力を否定する判決はほかにも出ているようです。
参考サイト

非良心的とは,法律用語で,アメリカの多くの州で採用されている統一商事法典によれば
「裁判所が, 契約または契約条項が契約締結の時点で非良心的なものであったと認めるときは, 当該の契約を強制することを拒否できる, あるいは, 非良心的な条項を除いた当該契約の残りの部分を強制するか, または非良心的な結果を避けるように非良心的な条項の適用を制限することができる。」とされているようです(正直わかりにくい概念です)。

なお,セカンドライフの規約によれば,
”rights and obligations shall be governed by and construed under the laws of the State of California, including its Uniform Commercial Code,”
(本規約に基づく当事者の)権利と義務は,統一商事法典を含むカリフォルニア州の法律に準拠します。
とあります。

上記の判決によると,いきなり裁判をすることは可能と思いますが,日本からはどうでしょうか?
サンフランシスコの裁判所に訴えることはたぶん大丈夫です。細かい説明をするのは省略しますが,「原告は被告の法廷に従う」という原則があるといわれています。

日本の裁判所に訴えることはできるのでしょうか?
リンデンは日本に営業所があるわけではなく,日本で積極的に顧客を勧誘しているわけでもないようですので,日本の裁判所はたぶん管轄を認めないでしょう。

そうすると,不当にアカウント停止処分がされても,大部分のユーザーは泣き寝入りということになりそうです。

でも,仮想現実で起こったことなら,仮想現実内で解決することはできないのでしょうか?

無効となった仲裁条項ですが,たしかに,いちいちサンフランシスコにまで行って仲裁手続をすることは,ほぼ不可能を強いるものです。
しかし,セカンドライフ内で仲裁手続をすることにしたら,面白いのではないでしょうか?

バーチャル裁判所の構想です。
セカンドライフ内で仲裁裁判所を作るのです。当然,リンデンから独立した公平な仲裁人が選定される必要があります。

ところで,セカンドライフ内では,リンデンとユーザー間の問題のほか,ユーザー同士が経済取引をしているので,ユーザー間の紛争も当然に生じます。

これについては,また別の問題があるので,後日改めて検討したいと思います。
ただ,これについても仮想現実内の紛争処理手続で解決することができないかと夢想中です。

2007年6月10日日曜日

性的表現の規制

1 発端

私が認識している限り,発端は次のような事件と思われます。

2007年5月3日にドイツのテレビ局が,大人の男性と子供の女性のアバターが性行為に及んでいることを見つけ,これをリンデン・ラボに通報したそうです。
実際にリンデン・ラボが調査したところによれば,アバターを使用していたのは,54歳の男性と27歳の女性であったそうですが,リンデン・ラボは2人をBAN(セカンドライフの利用禁止措置)しました。

国にもよると思うのですが,児童保護の観点から児童を対象とする性行為が規制されることは当然と思います。
でも,大人同士がいわばロールプレイとしてやっているときは,果たしてそこまで規制する必要があるか疑問です。
こうしたものを見て不快に思う人がいるのもたしかですが,閉鎖的空間(入場制限を設け,それを許容する人のみ入場する)でやれば,特に問題ないと思われます。
上記の二人がこうしたプレイが許容されない場所でやったのであれば,BANの対象となってもやむをえないでしょうが,そのような状況だったかどうかはニュースだけではわかりません。

2 リンデン・ラボの規制方針と問題点

 ともかく,こうした特殊なロールプレイ(エイジプレイともいうらしいです。)に対しては,リンデン・ラボは厳しく規制する方向性を打ち出しています。

公式ブログの記事
これによれば,子供を対象とする性的行為,レイプなどの性暴力,生々しい暴力の描写などが規制され(アカウント停止,グループの閉鎖,コンテンツの除去,土地の没収などの制裁が課せられる)というのです。

しかし,セカンドライフはよくも悪くも自由な世界だったから,ここまで発展したと思うのです。
こうした表現は確かに不快ですが,場所を選んで当人たちがロールプレイとして楽しむのなら(リアルでやるわけではないのですから)大目にみてよいのではないでしょうか?
それにリンデン・ラボが規制しようとする対象は,すごくあいまいです。
例えば,上記の規制対象のプレイには,other broadly offensive content(その他明らかに不快なコンテンツ)も禁止するとあります。
この表現は主観的であいまいなもので,運用によっては広範囲に規制が及ぶ可能性があります。
これでは表現の自由に対して,Chilling Effects(萎縮効果)が生じてしまいます。
参考サイト

実際ユーザーの反応は,かなり不評のようです。
セカンドライフ・ヘラルドの記事参照

おそらく,このゲームの社会に対する認知度が高まるにつれ,リンデン・ラボ自身が,いままでのような野放図な状態では社会の批判を受けると恐れているように思われます。
しかし,表現の規制については明確な基準が必要でしょう。
いままでユーザーの自主性を重視するということにしていたのですから,あまりにひどいものはともかく,ユーザー間の相互批判に任せてもよいのではないでしょうか?
ここはゲームの良さを損なわないためにも寛容さを示すときであろうと思われます。

2007年6月4日月曜日

ブログを作った動機

 わたしがセカンドライフで遊ぶようになったのは,そう古い話ではありません。もともと,MMO(Massive Multiplayer Online・大規模多人数オンライン)RPGをいくつかやっていたのですが,セカンドライフのことを最近ネットでよく目にするので,ちょいとやってみようかなと思って始めたのがきっかけです。

 セカンドライフは,これまでのゲームと違って,敵を倒す,レベルを上げる,レアアイテムを獲得するなどのゲーム会社側から提供されるコンテンツは特になく,何をするのも自由です。そこがよくわからないという人もいるのですが,私はけっこう楽しんでいます。アバターの容姿,服,建物,家具などいろいろなものを自分で作れる(その意欲と能力があればですが)のも気に入っています。わたし自身は今のところ,例えて言うなら「どうぶつの森」オンラインのようなものとして,もっぱらコミュニケーションを中心に遊んでいます。

わたしがこのゲームの特徴として重要だと思うのは次のようなところです。

1 商売を含め,何をするのも自由(場所を選べば,カジノやアダルトなコンテンツも可能)
2 RMT(ゲーム通貨とリアル通貨の交換)がゲームの仕様上認められている。
3 ゲーム内オブジェクトの作成が自由にでき,著作権が保障されている。
4 ゲーム内とWEBとの行き来が容易である。

 セカンドライフはもちろん一つの企業が提供するゲームですが,このゲームの人口が増えつつあることと,上記の特徴が相まって,従来のWEBベースのものを超えた新しいコミュニケーションの道具になる余地がある,少なくともその一つの可能性を示していると思います。

 セカンドライフが最近注目されるようになったのは,上記1と2の特徴からビジネスに利用できるというのが大きいと思います。
しかし,それと同時に,上記の特徴から,この世界が様々な社会問題を生み,それが各国政府の規制の対象となる可能性があります。

例えば,上記1の自由性という特徴から,インターネットギャンブルの規制,エイジプレイ等のアダルト表現への規制が問題になります。また,上記2のRMTの問題は,マネーロンダリングの問題,ゲーム内取引に対する課税や法規制の問題となります。上記3の特徴は,著作権保護の問題(ユーザーの著作権の保護,ユーザー側の既存著作権の侵害の問題)となります。

 わたしは,この世界がけっこう気に入っており,なるべくこの自由な雰囲気が保たれることを願っています。同時にこのゲームが犯罪に利用されることがあってはならないとも考えており,過度にならない適正なルールの確立が必要であると考えます。そういった観点から,ブログを立ち上げて,いろいろと議論を提供してみたいと考えたのです。

 自分自身,この世界をまだ十分知っているわけではなく,何ができるのか心許ないところもありますが,力を抜いて気楽に論じていきたいと思います。

 このブログの方向性も含め,ご意見のある人は遠慮なく,コメントかメールを下さい。

追記 2007年7月25日カジノを含め,ギャンブルは全面的に禁止になりました。

2007年6月3日日曜日

先行研究,参考となるサイトなど

1 公式サイト


 まず,情報源として重要なのはリンデン・ラボの公式サイトと思います。
セカンドライフ日本語版(いつになったら出るんだろう。)の公式サイトhttp://secondlife.com/world/jp/


英語版はこちら
http://secondlife.com/


リンデン・ラボ自身のサイト
http://lindenlab.com/



2 文献

日本語の文献はまだまだ少ないです。

公式ガイドには,ゲームの遊び方のほか,セカンドライフの小史なども載っていて,大変興味深いので一読を勧めます。
「セカンドライフ公式ガイド」インプレスR&D 3200円

3 企業・大学などの研究


デジタルハリウッド大学大学院の開設したセカンドライフ研究室(室長 三淵啓自 同大学教授)では,セカンドライフ・トレーニング講座を行っています。
説明によれば,企業向けに技術・ノウハウを講義する講座のようです。
当研究所とは多少志向が異なっています。
http://www.dhsl.jp



みずほコーポレート銀行産業調査部の研究
力作です。現状の認識としては,よくまとまっていると思います。http://www.mizuhocbk.co.jp/fin_info/industry/sangyou/pdf/mif_57.pdf



3 個人のブログなど

Second Life 体験&探検

セカンドライフ内の最近の社会問題にくわしいので,とても参考になります。
http://sheila6225.blogspot.com/index.html

2007年6月2日土曜日

ご挨拶

リンデンラボのゲーム「セカンドライフ」について,
次のような研究会を立ち上げてみました。

研究員募集中です。

設立趣意にあるとおり,ビジネス利用は一切考えていません。
デジタルハリウッド大学や電通のやっているセカンドライフ研究会などとは無関係です。
ビジネスへの利用を考えている人はよそへ行ってください。

ああだ,こうだと適当なことを論じ合うだけでも楽しいと思います。
さしあたり,膨張するセカンドライフ社会の様々な問題点,これに対するリンデンの規制や国家の法規制の問題などを論じてみたいと思います。


「SL総合研究所」


<設立趣意>

1 リンデンラボのゲーム「セカンドライフ」内の様々な事象について,多面的に研究する。

2 企業やビジネスとは一切関係なく,純粋に知的な興味から研究をする。


<活動>
1 セカンドライフの研究

2 研究会の開催

3 研究成果の発表

4 上記に関連する一切の事項


<研究員資格>

設立趣意に賛同する個人