2008年11月24日月曜日

電子マネーについての法規制とリンデンドル

1 電子マネーに対する法規制の動向

かなり前に,電子マネーについて,利用者保護のために金融庁が「電子マネー法」(仮称)の制定を目指して作業中であると報道されたことがありました。このときの報道によれば,2008年中の制定を目指すということでした。もう12月になろうとしていますが,とても法案化までは無理そうですね。まあ,重要法案の審議もままならない昨今の政治状況では,仕方ないでしょう。

これについては,現在も金融庁の金融審議会の第二部会-決済に関するワーキング・グループで議論中のようです。最近の議論の様子は,金融庁のウェブサイトで確認することができますが,法案化までは,すこし時間がかかりそうな感じがします。

2 現在行われている議論

現在,金融審議会で行われいる議論は,おそらく金融庁のサイトに論点の整理(再)という資料がありますが,これのとおりだろうと思います。

わかりやすく言うと,次のとおりです。

発行者があらかじめ利用者から資金を受け取り,前払式支払手段が発行される場合で,紙・ICチップ等の有体物にその価値が記録されるもの(EdyやSuicaなどが代表的ですね。)には,「前払式証票の規制等に関する法律」(前払式証票規制法)による規制があります。

同法によって,未使用発行残高の2分の1以上の金額について,供託又は金融機関等の保証が必要(供託等の義務)とされ,これによって利用者の保護が図られています。

しかし,電子マネーの中には,利用者が保有する物には価値が記録されておらず,サーバに記録され,通信回線を介してサーバにアクセスし,利用するもの(サーバ型前払式支払手段)については同法の適用がないと解釈されています。

そこで,このままでは,利用者の保護に欠けるので,そうしたサーバ型の電子マネーについても,同様の規制を及ぼすべきかどうかというのがここでの議論の中心です。

同審議会では,それだけでなく,①いわゆるポイント・サービスについての利用者の保護をどう考えるか,②現在,銀行のみが行うことができるとされている為替取引について,銀行以外の事業者による資金移動サービスを認めるかどうかどうか,などの問題も議論されているようです。これらの議論も大いに注目されます。

方向性としては,こうした電子マネーについても,未使用発行残高の一定割合について供託等の義務を課すなどして,利用者の保護を図るということになるものと思われます。電子マネーの大手事業者が破綻した例はまだあまりないようですが,電子マネーの利用が拡大しつつありますので,やはり立法が必要だと思います。


3 リンデンドルに対する法規制

さて,セカンドライフ内で使用されているリンデンドルも,現実の通貨でリンデンドルを購入し,これと交換することによって,LL社からサービスを受けることができるので,電子マネーであることに変わりないと思います。また,利用者相互でも流通しており,資金移動手段としても利用可能です。

しかし,さきほどの電子マネー法がどうなるにせよ,これは国内法なので,外国の事業者であるLL社を規制対象にするかどうかは微妙です。法案ができてみないと何ともいえないのですが,国内に営業所がなければ,外国の事業者には規制は及ぼさない感じがします。

そこで,これについては,LL社が本店を置く,カリフォルニア州での規制がどうなっているかが問題です。

電子マネーについての欧米の法規制の動向については,流通科学大学の片木進教授の論文がくわしいようです。

これによれば,アメリカでは,グリーンスパンFRB議長が電子マネーの規制に消極的な見解を示したことから,連邦レベルでは目立った規制の動きはないようですが(オバマ政権では変わるかもしれません。),各州政府が,消費者保護,マネーロンダリング防止等の観点から規制に向けて動いているようです。

わたしは,カリフォルニア州の法律制度のことは,ほとんど知りませんが,リンデンドルがこうした規制を受けることになるのかどうか,今後とも注目していきたいと思います。

なお,以前にも書きましたが,現状では,消費者としては自己防衛しかないと思います。世界的な金融恐慌がLL社に影響を及ぼしているという情報はありませんが,為替リスクもありますので,使う当てのないリンデンドルは現実通貨に換金しておくことをお勧めします。