2008年2月27日水曜日

Lessig氏の米議会選挙出馬取りやめ

Lawrence Lessig(ローレンス,レッシグ)氏は,スタンフォード大学の法学部教授で,デジタル著作権の権威であって,セカンドライフ内のコンテンツの著作権の在り方について影響を与えたとされる人物です。

同氏は,最近,「Change Congress Movement」(議会変革運動)と名付けた活動を開始するとともに,米下院議員選挙への出馬を検討していると発表していました。

WIRED NEWSの記事(翻訳)

しかし,同氏は,自身のブログで,出馬の取りやめを発表したようです。

同氏は,自ら政治の舞台に立つことによって,政治腐敗に直に取り組むという意図だったようでしたが,その目的のためには,むしろ政治の場の外で活動するほうが有効と判断したようです。

アメリカでも,日本と同様に,政治と金の問題の根は深いようです。

2008年2月23日土曜日

Ad Farmの規制

「Ad Farm」とは,典型的には,ほとんど使い道のないような小さな区画に通常の価格よりも著しく高い価格で販売設定した上,そこに視界を遮るような背の高い看板を立て,これに困った周囲の土地所有者に高値で土地を買い取らせることをいいます。これを業として行う人のことをAd Farmerとも呼ぶようです。

これはメインランドの困った問題で,これに反対し,対抗するグループもいくつか存在しています。勝手に紹介させていただきますと,日本でも,Landscape Protection Network of Japan(日本景観保護ネットワーク)というグループが,景観保護という観点から活動されています。

これまで,リンデンラボは,Ad Farmについて,特段の規制をしていませんでした。
従前のリンデンの態度は,上記Landscape Protection Networkのブログ記事にあるChiyo Lindenさんの対応からも窺えます。


しかし,こうした景観保護の働きかけがリンデンラボを動かしたのだと思いますが,
リンデンラボは,Ad Farmについて,コミュニティスタンダード違反(ハラスメント行為)として処罰する方針を発表しました。

公式ブログの記事

翻訳サイトの記事(いつもお世話になります)

最近,リンデンラボがAd Farmを問題視しているらしいことが分かったのは,2008年2月8日の公式ブログにJack Lindenのコメントがあったからですが,それから1週間も経たない同月13日に公式ブログでハラスメント行為として規制することを発表したのは,(それまで何もしていなかったことに目をつぶれば)驚くべき早さであったというべきでしょう。

さっそく,この方針を受けて,次々と処分がされているようです。リンデンラボの方針によれば,最初は軽い処分から,順次重い処分へと段階的にされるようです。最近の処分の結果の発表のなかには,ちらほら「Visual spam from ad farms」という理由で警告や,アカウント停止などの処分がされています。

プライベートSIMでは,建築物については高さ制限を設けているところが多いようです。しかし,メインランドではそのような規制がないため,景観を害する建築物も少なくなく,メインランドの人気が上がらない一つの理由になっているようです。リンデンラボは,最近人材を募集して公共事業部を立ち上げ,メインランドのコンテンツを充実させる方針を打ち出しました。メインランドの魅力を高め,利用を活性化する目的と思われます。Ad Farmの規制も,これとリンクするものだと思います。

リンデンラボのAd Farmの規制方針は,景観保護を直接の目的としたものではなく,見通しの悪い看板を立てることによって,隣地所有者に高値で買い取らせようとする行為がハラスメントであるとするものです。これはこれで対応するべきですが,今後は,景観自体の保護についても,それなりの対応をしてもらいたいと思います。

規制といっても,それに反したら処分するといった固いものだけでなく,例えば,メインランドの建築物のガイドラインのようなもの(建築する以上,これを守ることが望ましいという程度の規範)を発表するのも,有効かもしれません。

言い訳

またリアルの仕事に追われて,更新が滞ってしまいました。今の仕事の状況からして,次年度もこのような状況が続きそうです。ごめんなさい。もう同じ言い訳するのはやめます。ということで気が向いたら更新します(いいのかw)。

そういえば,最近,セカンドライフを除けば,全くゲームをやっていません。もう友だちに合わせて,長時間のレベル上げとか絶対に無理だし。そういえば,セカンドライフが一般受けしない理由に,ゲームの目的が定められていないことを挙げている人がいましたが,どうもピンときません。忙しい自分には,何をやってもいいし,何もやらなくてもよいという,このユルさ加減が合ってるのかもしれないと思います。いろいろやりたいことだらけだけど,時間がないうちに何をやりたかったかを忘れるという体たらく・・・

2008年2月10日日曜日

著作権侵害と運営会社の立場

1 最近の著作権侵害騒動

 しばらく,更新をしていなかった間に,相変わらず,セカンドライフでは,著作権侵害問題が起きているようです。わたしが参加しているファッション関係のグループでも,違法にコピーしたアイテムを売っている店に対して抗議する通知や,これに対してみんなで抗議活動しようなどという呼びかけもされているようです。

 しかし,違法コピー商品を売る犯罪者側もなかなかしぶといようで,被害にあった制作者らの抗議から逃れて,一旦はセカンドライフ内からいなくなっても,すぐに新たなアカウントを作って,セカンドライフ内に現れ,同種行為を繰り返すようです。
 
こうした騒動については,最近のロイターの記事にも取り上げられています。(いつもロイターばかり引用していますが,やはり情報源としては一番信頼できるような気がします。)

ロイターの記事でも言及していますし,わたしの過去の記事でも,同様に言及していますが,こうした著作権侵害に対して,リアルの法制度下で救済を図ることは,とても困難です。これまで2つの著作権侵害訴訟のことを取り上げてきましたが,これらはいずれも被害者も加害者とされる者も,いずれも米国の住民であって,LL社やプロバイダーなども米国の会社であったことから,同一国内の裁判所で,同一国の法律で解決できた事例です。もちろん,米国は州が集まった連邦国家ですので,日本のような単一法国ではありませんが,それでも連邦法のもとで解決できたということは,異なる国民同士が訴訟をするよりははるかに容易です。しかし,これらの2つの訴訟ですら,アピールにはなったとしても,はっきりいって被害が回復できたというには,ほど遠い現実があります。ロイターの記事の事例もそうですが,異なる国民同士でこうした問題が起こったら,リアルの訴訟というのは,可能ではあっても,訴訟コストを考えた場合,非現実的な手段というしかないでしょう。

リアルでの法的解決が困難だとしたら,やはりセカンドライフ内で解決を図るほかありません。

もちろん,目には目をとばかり,グリファー行為によって違法コピー商品を販売する商店のSIMをクラッシュさせたりしたら,TOS違反になってしまいますから,そうした行為は許されません。例えば,穏健な集団的示威活動などによって,犯罪者の活動を妨げるということが考えられますし,現に今回の騒動ではそうした活動がされたと聞いています。また,安いからといって,違法コピー商品の疑いのあるものには手を出さないという,われわれの自覚が大事だと思います。

2 運営会社としてどうすべきか?

 やはり,こうした問題には,リンデンラボ社に存在感を示してもらいたいと思います。

 そもそも,セカンドライフがユーザーの支持を集めている大きな理由に,セカンドライフがユーザーの自由な創作を認めて,コンテンツの著作権を保障し,その自由な売買を認めたことがあると思います。著作権が保障され,オブジェクトの売買ができることによって,コンテンツの創作を活発化させ,これによって多様な世界を生み出しているのです。したがって,著作権の保障の度合いを高めることが,この世界の価値を高めることにつながるということがいえます。この路線に従えば,運営会社の立場からみて,著作権の保障をより徹底させることは,セカンドライフという「商品」の価値を高めることになると考えることができます。リンデンラボ社には,自分たちの商品の価値の根本につながる仕事だという自覚を持って,やってもらいたいと思います。
 
もっとも,不正ツールを使用しない,単なるアイデアの盗用といったものは,全くの私的紛争なので運営会社が関与することは,困難だと思います。もちろん,そういった場合でもADRなどの紛争解決機関へのあっせんをするといったことは運営会社でも可能です。

一番頑張ってもらいたいのは,不正ツールを使用したり,意図的にSIMクラッシュを引き起こしたりするなどのTOS違反行為によって複製をすることについて,厳しい態度を示してもらいたいということです。これらの行為は,当然のことながら,処分の対象となる行為ですので,もしそうした情報があれば,本人の弁解を聞いた上,不正が認定できたら,BANすべきでしょう。Nockさんのブログでも,AR(嫌がらせの報告)の活用が取り上げられています。

お前に言われなくても,寝る間を惜しんで昼寝して毎日一生懸命取締りをしているよ,ってリンデンラボ社の方は言うかもしれません。おそらく努力はされているのでしょうが,われわれ一般ユーザーにはあまりそれが伝わってきません。どこかのMMORPGでは,運営会社が特別な取締チームを作って,その活動に基づいて定期的に処分したアカウントの数などを公表しています。リンデンラボ社も,こうした「目に見える」取締活動をする必要があると思います。どうせ全部を取り締まることはできないのでしょうが,そうであっても,厳しい姿勢で臨んでいるということをアピールすることが重要だと思います。

違法コピー自体をシステム的に防止できたら,それに勝るものはないのですが,なかなか難しいのでしょう。でしたら,制作者が意図しない場所で販売されたら,制作者に通報されるシステムって開発できないでしょうか?制作者が予め登録した店以外,又は,所定の方式以外で販売されたら,通報されるスクリプトとか・・・その場合,オブジェクト自体を消去できたら理想的なんだけどなあ。まあ,どうせそういうの作っても抜け道は考え出されるだろうけど。

後は,月並みだけど,市民運動が大事かもしれません。銀行規制のときも思いましたが,仮想世界が安定したコミュニティとして発展するためには,リアルと同じように,政治活動や市民運動をする必要が出てきたと思います。