2007年6月16日土曜日

バーチャル裁判所構想

最近,eBayでリンデンドルを購入したユーザーが、アカウント停止措置を受けたようです。
Second Life 体験&探検の記事
アカウント停止処分を受けたユーザーに何らかの規約違反があったかどうかは不明です。

仮に,不当にアカウント停止処分を受けた場合どうすればよいのでしょうか?
リンデンにクレームを出すことは当然ですが,これが受け入れられない場合は,やはり最後の手段としては,裁判ということになるのでしょう。

リンデンラボの規約では,紛争が生じた場合は,サンフランシスコの国際商業会議所の仲裁によって解決するとなっているようです。
いわゆる仲裁条項というものです。仲裁とは、当事者が,私人である第三者をして争いを判断させ,その判断に服することを合意し,その合意に基づき紛争を解決する制度をいいます。この合意があると,仲裁手続によらずに,いきなり訴えることはできないことになります。

ところが,この仲裁条項について,最近,連邦裁判所で,この条項の効力を否定する判決がされました。
The Secondlife Newspaperの記事

一般消費者とのオンライン契約に関して,こうした仲裁条項が非良心的とされて,効力を否定する判決はほかにも出ているようです。
参考サイト

非良心的とは,法律用語で,アメリカの多くの州で採用されている統一商事法典によれば
「裁判所が, 契約または契約条項が契約締結の時点で非良心的なものであったと認めるときは, 当該の契約を強制することを拒否できる, あるいは, 非良心的な条項を除いた当該契約の残りの部分を強制するか, または非良心的な結果を避けるように非良心的な条項の適用を制限することができる。」とされているようです(正直わかりにくい概念です)。

なお,セカンドライフの規約によれば,
”rights and obligations shall be governed by and construed under the laws of the State of California, including its Uniform Commercial Code,”
(本規約に基づく当事者の)権利と義務は,統一商事法典を含むカリフォルニア州の法律に準拠します。
とあります。

上記の判決によると,いきなり裁判をすることは可能と思いますが,日本からはどうでしょうか?
サンフランシスコの裁判所に訴えることはたぶん大丈夫です。細かい説明をするのは省略しますが,「原告は被告の法廷に従う」という原則があるといわれています。

日本の裁判所に訴えることはできるのでしょうか?
リンデンは日本に営業所があるわけではなく,日本で積極的に顧客を勧誘しているわけでもないようですので,日本の裁判所はたぶん管轄を認めないでしょう。

そうすると,不当にアカウント停止処分がされても,大部分のユーザーは泣き寝入りということになりそうです。

でも,仮想現実で起こったことなら,仮想現実内で解決することはできないのでしょうか?

無効となった仲裁条項ですが,たしかに,いちいちサンフランシスコにまで行って仲裁手続をすることは,ほぼ不可能を強いるものです。
しかし,セカンドライフ内で仲裁手続をすることにしたら,面白いのではないでしょうか?

バーチャル裁判所の構想です。
セカンドライフ内で仲裁裁判所を作るのです。当然,リンデンから独立した公平な仲裁人が選定される必要があります。

ところで,セカンドライフ内では,リンデンとユーザー間の問題のほか,ユーザー同士が経済取引をしているので,ユーザー間の紛争も当然に生じます。

これについては,また別の問題があるので,後日改めて検討したいと思います。
ただ,これについても仮想現実内の紛争処理手続で解決することができないかと夢想中です。