2007年6月10日日曜日

性的表現の規制

1 発端

私が認識している限り,発端は次のような事件と思われます。

2007年5月3日にドイツのテレビ局が,大人の男性と子供の女性のアバターが性行為に及んでいることを見つけ,これをリンデン・ラボに通報したそうです。
実際にリンデン・ラボが調査したところによれば,アバターを使用していたのは,54歳の男性と27歳の女性であったそうですが,リンデン・ラボは2人をBAN(セカンドライフの利用禁止措置)しました。

国にもよると思うのですが,児童保護の観点から児童を対象とする性行為が規制されることは当然と思います。
でも,大人同士がいわばロールプレイとしてやっているときは,果たしてそこまで規制する必要があるか疑問です。
こうしたものを見て不快に思う人がいるのもたしかですが,閉鎖的空間(入場制限を設け,それを許容する人のみ入場する)でやれば,特に問題ないと思われます。
上記の二人がこうしたプレイが許容されない場所でやったのであれば,BANの対象となってもやむをえないでしょうが,そのような状況だったかどうかはニュースだけではわかりません。

2 リンデン・ラボの規制方針と問題点

 ともかく,こうした特殊なロールプレイ(エイジプレイともいうらしいです。)に対しては,リンデン・ラボは厳しく規制する方向性を打ち出しています。

公式ブログの記事
これによれば,子供を対象とする性的行為,レイプなどの性暴力,生々しい暴力の描写などが規制され(アカウント停止,グループの閉鎖,コンテンツの除去,土地の没収などの制裁が課せられる)というのです。

しかし,セカンドライフはよくも悪くも自由な世界だったから,ここまで発展したと思うのです。
こうした表現は確かに不快ですが,場所を選んで当人たちがロールプレイとして楽しむのなら(リアルでやるわけではないのですから)大目にみてよいのではないでしょうか?
それにリンデン・ラボが規制しようとする対象は,すごくあいまいです。
例えば,上記の規制対象のプレイには,other broadly offensive content(その他明らかに不快なコンテンツ)も禁止するとあります。
この表現は主観的であいまいなもので,運用によっては広範囲に規制が及ぶ可能性があります。
これでは表現の自由に対して,Chilling Effects(萎縮効果)が生じてしまいます。
参考サイト

実際ユーザーの反応は,かなり不評のようです。
セカンドライフ・ヘラルドの記事参照

おそらく,このゲームの社会に対する認知度が高まるにつれ,リンデン・ラボ自身が,いままでのような野放図な状態では社会の批判を受けると恐れているように思われます。
しかし,表現の規制については明確な基準が必要でしょう。
いままでユーザーの自主性を重視するということにしていたのですから,あまりにひどいものはともかく,ユーザー間の相互批判に任せてもよいのではないでしょうか?
ここはゲームの良さを損なわないためにも寛容さを示すときであろうと思われます。