2007年7月21日土曜日

ユーザー間訴訟の問題点

リアルが多忙で更新が滞ってしまいました。

ついにセカンドライフ日本語版ベータが出ましたね。
更新していなかった間に,そのほかにもいろいろなことがありましたが,
私が注目していたのは次の裁判の動きです。
ロイターの記事


1 事件の概要

アダルトコンテンツの企業Eros LLCを経営するKevin Alderman(SL名Stroker Serpentine)が,SexGen Bed(sexアニメがたくさん入ったベッドのようです)を違法に複製されて販売されたとして,SL名Volkov Catteneoをタンパの連邦地方裁判所に訴えました。

Volkov Catteneoの実名が不明であるため,被告をJohn Doe(名無しの権兵衛)としてあります。Alderman側の弁護士によれば,リンデンラボ,ペイパルに対して,裁判所の令状を得て,Catteneoの個人情報,チャット履歴,経済取引上の記録などの開示を要求し,被告を特定していく計画のようです。

しかし,Catteneoは,ロイターのインタビューに答えて,「リンデンラボのファイルには自分の本名は登録されていないし,自分は実世界で固定した住所を持ったこともない。」などとうそぶき,追及の手が自分に伸びることはないとしているようです。

2 ユーザー間訴訟の問題点

セカンドライフが発展拡大していくにつれて,著作権侵害などのユーザー間の紛争も増えていくことが予想されます。しかし,これを裁判に持ち出すためには,大きな問題があることがわかります。
それは,被告を実社会で特定する必要があるということです。
被告の実名と住所が分からなければ,裁判所からの呼出状などの書類を送達することができませんし,そうなれば有効に裁判を始めることができないと思われます。

この問題は,セカンドライフに特有の問題ではありません。例えば,匿名掲示板での名誉毀損など,インターネットの中では,権利侵害を受けても,侵害者を特定できないという問題がつきまといます。このため発信者情報の開示が問題になっているのです。日本でプロバイダー責任制限法が施行され,発信者情報の開示請求が定められたことはご存じの方も多いでしょう。日本でも発信者情報の開示を巡って,いくつもの裁判や仮処分がされているようです。

米国では,Eros LLCの訴訟のように,まず,仮名訴訟を提起した後,裁判所の命令を得て,Webサイトの管理者等に対して,発信者情報の開示を求めることになるようです。この開示命令は,比較的容易に形式審査で発令されるようです。
参考サイト


3 裁判のその後の動き

ペイパル(Paypal)は,裁判所の命令に応じて,Catteneoの個人情報を開示したそうです。
ロイターの記事


開示された個人情報の詳細はわかりませんが,ペイパルの規約によれば,住所,氏名,銀行口座,クレジット番号,IPアドレスなどが含まれるようです。
ペイパルに登録された住所,氏名は,真実かどうか怪しいかもしれません。
これが捜査機関であれば,さらに銀行やクレジットカード会社などを捜査していけば,個人の割り出しができるのでしょうけれど,民間人がそれをやるのは大変ですね。
なお,IPアドレス(とタイムスタンプ)から使用プロバイダが特定され,その登録情報からもPCを特定することが可能なようです。日本のネット犯罪の捜査などではその手法で被疑者を特定しているようです。

リンデンラボも,ペイパル同様に開示命令を受けており,対応が注目されます。
ただ,情報が開示されても,Catteneoは多分偽名で登録してあるのでしょうから,個人の特定は期待が薄いかもしれません。
問題はチャット履歴などが開示されるかどうかですね。