2007年10月25日木曜日

企業のセカンドライフの参入の問題点

1 すぐに飽きられる企業SIM

電車のつり広告,街角の看板,テレビのコマーシャル,WEBサイトの隅,いろいろなところに広告があると思いますが,そうした広告などを見るということは決して意図してされた作業ではありません。たまたま目に入ってしまうというものです。ところが,セカンドライフで企業SIMに行くということは,そうした広告を見るというのと異なり,たまたま何かの行動をしていて,偶然に企業SIMに入ってしまうなどということは基本的にないと思います。たいていの企業SIMは,独立したプライベートSIMに構築されているところがほとんどですので,そのSIMを訪問するということは,必然的にそこを目的としてテレポートするという意識的,意図的な作業を伴います。居住用のSIMに隣接して企業SIMを作っているところもあり(MagSLなど),こういったところは,通りすがりに立ち寄ってもらえることも期待しているのでしょうが,隣接した居住用SIMを訪問する人で,偶然に企業SIMに入ってしまう人は,そんなに多くないと思います。

したがって,企業SIMに客を呼ぶためには,どこそこのSIMで,こういうのをやってるよという宣伝が必要になってくるということになります。宣伝用のSIMに来させるために更に宣伝しなければならないという皮肉な状況があると思います。

また,客にそこへ行くための動機付けを与える必要があります。それでないとわざわざテレポートという面倒な作業をしないと思います。この動機付けとして使われているのは,例えば,ゲームや無料アイテムの配布といったものです。しかし,ゲームはよほど面白いゲームでもなければ,1回やったらそれまでということになります。無料アイテムも1回もらったらそれで終わりでしょう。こないだ日産のSIMでスケートボードを3回成功させたら,アイテムをもらえるというのがあって行ってきました。ゲームはそれなりに面白かったのですが,無料アイテムももらえたし,もう,二度は行かないと思います。

セカンドライフガイドというセカンドライフの検索サイトがありますが,そこでテレポート数を分析したら,企業SIMの人気はすこぶる悪く,企業がセカンドライフに参入してすぐは、物珍しさから訪問するが、長くても2日後には、訪問数はピークに達し、4日後には、ほとんどの人が興味を失い再度訪問しなくなる傾向にあるそうです。

参考記事

セカンドライフへの企業の参入がマスコミで大きく取り上げられましたので,セカンドライフをやり始めた人が,最初に企業SIMに行くことも多いでしょう。しかし,企業SIMがあまり面白くないことから,その後セカンドライフ自体をやらなくなってしまうという人も少なからずいるような気がしてなりません。

2 企業SIMに行って思うこと

セカンドライフを始めてから,有名な企業が進出するたび,そのSIMを訪れてみるのですが,なんだかなあというのが結構多いです。よく思う感想は,「これってWEBサイトを単に立体化しただけじゃない?」というものです。中には,わざわざWEBサイトに誘導するだけのものもあります。そんなときは,「そんなことなら最初からWEB見るよ」といいたくなります。だって,WEBの方が,情報は豊富だし,軽いですからね。そんなSIM作って,セカンドライフでやる意味ってあるんでしょうか?

それにそういうSIMに行って思うのは,「生きている人がいない」ということです。もちろん,客がちらほらいますが,肝心の企業側の人(アバター)がSIMにいるというのをあまり見たことがありません。常時いるというのは,人件費もかかるでしょうが,時間を決めているとか,IMで呼ばれたら対応できるようにするとか,いろいろとできるはずです。特にかまえたことをしなくても,誰かがいて,話しかけてくれるだけでも印象が違うと思うのですが。

あと,イベントとかもやってるところは少ないです。新商品の説明会とか,そんな直接的なものでなくても,企業協賛のコンサートやクイズ大会,スポーツ大会とかいろいろあると思うのですが,こうしたことをやっているのは少ないです。

たいていのところは,一回作ったら,かなり長い間,手間も暇もかけずに放置しているような気がします。これでは,飽きられて当たり前ですね。セカンドライフは,リアルタイムに多人数の人が出会えるコミュニケーション・ツールであるところに特色があると思いますが,こういったSIMに行って思うのは,企業側がポンとオブジェクトを置いてあるだけで,いわば死んだ街であり,およそコミュニケーションの要素がないということです。

3 最近の動き

最近,企業側でも,こうしたゴーストタウンを作るだけの仮想世界利用について再検討する動きがでてきました。仮想世界を利用した社内会議など,コミュニケーションツールとして,仮想世界というメディアの特性に応じた利用をしようという動きです。

ロイターの記事

上記の翻訳

ただ,社内会議もよいのですが,そうしたクローズドなコミュニケーションにだけ利用されるのでは,ちょっと残念ですね。
どうして,企業は顧客と直接コミュニケーションするという発想にならないのでしょうか?クレーム殺到の場になるのが怖いのでしょうか?

4 個人的にこういうのがあったらいいなと思うもの

例えば,新製品を発表するときって一般的にはプレスに向けて発表会を開くと思うのです。そのプレス発表を通じて,間接的に消費者はどんな新製品が出たかを知るのですね。でも,セカンドライフなら,消費者に向けて直に訴えることができるのではないでしょうか?セカンドライフ内で,新製品の発表会やイベントをするとともに,一定の時間を決めて担当者を置いておいて,何でも説明に応じるというのはどうでしょうか?実際に購入したい人がいたら,最寄りの店舗を紹介するとかしてくれるといいですね。個人的には,例えば,アップルの人に「新しいiPodってどうなのよ?」みたいな質問をしてみたいです(できたら日本語でw)。

PC用ソフトなんかはどうでしょうね。セカンドライフを利用したデモンストレーションや,トレーニング講座を開いたりすると面白いかもしれません。いちいち本読んで勉強したり,スクールに通ったりするのは大変ですものねえ。

旅行会社で,セカンドライフ内に支店を作って,店員をおいておき,例えば,「今度の週末に一泊で温泉にいきたいけど,お手頃なパックはないですか?」などといった相談に応じてくれ,最寄りの店舗でチケットを確保してくれるというようなのはないですかねえ。いちいち旅行会社に行くのが面倒なのです。

こんなふうに書くとすごくものぐさな人間と思われるかもしれませんが,仕事がとても忙しくて,リアルの店舗に行く暇がないのです。コンビニじゃないけど,夜に仮想世界で開いている店舗があるととてもうれしいです。どういうものか分かっているものなら,アマゾンなどのWEB通販で買いますが,商品の説明を聞いてから,買いたいようなものもあるので,説明をしてくれる店員がいるとうれしいですね。

たぶん,きっと人件費の問題とかあるんでしょうね。実際に客が来るかどうか不安なら,現実世界で他の仕事やりながら,IMで呼ばれれば,仮想世界の店舗にも顔を出せるというくらいでいいのですがねえ。

そういえば,NECがセカンドライフ内に仮想銀行店舗を作って,相談業務をする「可能性を検証する」というのが最近発表されました。
ローンの相談などがセカンドライフ内で実際にできたら便利ですね。

なかなかこういうのが広まらないのは,手間がかかるからだと思いますが,手間をかけないで期待した結果が得られなくても,セカンドライフのせいにしないでほしいですね。