橋の下の水
このブログでは,年末と年始に紛争予防,リスク回避のことを取り上げました。なにか漠然とした予感があったのかもしれません。今回の銀行規制の問題は,それが当たってしまったような気がします。銀行に預けていた人は不安でしょうし,また,まっとうな銀行業をやっていた人は本当にお気の毒です。
前から(今でも),わたしは,セカンドライフ内のお金のやり取りについて不安を感じています。今回の規制では,金利を付けない単なる預り金は禁止されていないようですが,金利が付かないなら,人に金を預ける意味はありません。自分で持っているか,アルトに送るか,使う予定がないなら,手数料がかかってもリアルマネーにしたほうがよいです。
SL株は,今回の規制の対象となるかどうかは,グレーなようですが,セカンドライフの株式会社は,ただの個人のところが多いでしょう。会計もしっかり監査されているか怪しいし,上場されている証券取引所の規則にもよりますが,情報開示も問題があります。出資金を集めたところで計画倒産っていうことだって起こらないとはいえません。くれぐれも自己責任で。
さて,今回の銀行規制について気になったことを少し書いてみたいと思います。一部は,前のブログの繰り返しです。
今回の規制の目的ですが,公式ブログにあるように,実現不可能な高利率をうたい文句にして,元より倒産目的で預金者を欺いてお金を集める行為,こうした「銀行」を称する詐欺行為を放置することは,バーチャル経済の不安定化につながるから,これを防止したいということです。この目的を実現しようとすること自体は,文句を言う人はいないと思います。
そのためにどうするかということですが,規制の内容は次のとおりです。
"As of January 22, 2008, it will be prohibited to offer interest or any direct return on an investment (whether in L$ or other currency) from any object, such as an ATM, located in Second Life, without proof of an applicable government registration statement or financial institution charter." (公式ブログ原文まま)
この文章,あまり良いものとはいえないと思います。
まず,これでは利息を提供することを禁止しているように読めてしまいますが,利息を与える行為自体は,何ら害はないのですから,利息を与えることを約束して投資を受ける行為を禁止するとすべきです(前回のブログでそう解釈すべきだといいましたが,LL社がどう考えているかわかりません。)。日本の「出資の受け入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律」(出資等取締法)でも,金利を与える行為ではなく,預金を受ける行為を禁止しています。
次に,これでは,個人間の取引を対象とするようにも読めてしまいますが,個人間の取引は,上記の規制目的からいって対象としていないと見るべきでしょう。だとしたら,出資等取締法のように「業として」,「不特定かつ多数の者からの金銭の受け入れ」(同2条)を禁止するとすべきでしょう。
最後に,この文章を形式的に当てはめると,配当権のある株式や出資持分などの募集行為も含んでしまうようにも読めます。これを規制する趣旨なら上記のままでもいいのですが,これを規制しないのなら,明確な定義規定を置くべきでしょう。出資等取締法では,禁止対象を投資一般ではなく,「預金,社債」等に限定しています。
それに余計な修飾語は省くべきです。アバター間の直接のやり取りも禁止しないと意味がないので,多分"from any object"は不要でしょう。
"without proof of an applicable government registration statement or financial institution charter"とありますが,何についての政府の認可又は免許なのでしょうか?ここも曖昧です。リンデンドルによる預金というなら,そういう仮想通貨を銀行業の対象としている国は,そんなにあるとは考えられませんから(あるんでしょうか?),ここは,リアルの預金を受ける行為についての認可又は免許を受けていることをいうのでしょうね。しかし,現実通貨の預金を受けることが政府に許されている=リンデンドルによる預金を受けることが政府に許されている,ということではないのですから,ここはおかしい感じがします。LL社が,エントロピア・ユニバースみたいに,財務内容等一定の要件のもとに,セカンドライフ内銀行の免許を与えてもよかったんじゃないかと思います。ただ,見方によれば,すべてのリアルの銀行に対し,セカンドライフ内でリンデンドルで預金を集めてもよいという許可を包括的にLL社が与えたという見方も可能かもしれません。
そのほか,いきなり全面禁止ってどうよ?という手続の問題も書きたかったのですが,文章が長くなってしまったので,次の機会に。
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